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    yaginoura0811

    @yaginoura0811

    キショウタニヤマボイスの世界で13年くらい生かされてます。

    雑多なものの基本は総じて右側。推しの移り変わり激しい人間。推しの右側エロ大好き!!!!!!性癖色々。

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    yaginoura0811

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    ラカムが犬になる話。
    ほんのりラカアオ。

    皆さん、事件です。

    俺、ラカム。

    訳あって、今、犬になってます。

    …いや嘘じゃねぇ!

    見ろ!この手!肉球あんだろ!?

    わっ、あんまり触んなよなんかムズムズするだろ!

    とにかくだ!どうしたら元に戻れるのか、ノアあたりに聞いてみなきゃな!
    早速ノアのところに行くぞ!


    CASE1.グラン

    「うわ!この犬どっから入ってきたんだろう」

    突然艇の中に現れた俺(犬)を見てグランが頭を撫でてきた。
    そういえばグランの髪の色もなんとなく犬毛色っぽい。

    団長なら今撫でている犬が俺だと気付くだろうか。わん!と短く鳴いてみる。

    「かわいいなぁ。誰かの飼い犬かな?…それにしては首輪してないし…」

    うーんと唸りながら考えている様子からして気づく気配はないな。
    やっぱりノアなら気付くかもしれない!急げ!

    「あっ、いっちゃった。どこ行くんだろう…」

    結果=見送るだけのグラン


    CASE2.ルリアとビィ

    四足歩行ってのは…なかなか難しいな…。そりゃそうか。人間だったんだから4本足で歩く事なんてねぇからな。
    それよりもだ!!
    何故俺は餌付けをされているのだろう。

    「ほらわんころ!リンゴ食いな♪」
    「ビィさん、切ってあげないと食べられないですよ」
    「あ、そっかわりぃわりぃ」

    皮付きの丸ごとリンゴを差し出された俺は食べ方に困ってその場に鎮座するしかなかった。
    やけにピカピカしたリンゴに俺の顔が映る。完全に犬の顔だ。

    「でもこの犬誰かに似てる気がするんですよね…」

    おっ、ルリアナイス!このまま気付くか!?
    俺だ!ラカムだ!
    ワンワン!

    「えーそうかぁ?オイラはわかんねぇけど、ルリアは分かるのか?」
    「えぇと…それは…多分私たちのよく知ってる人じゃないかと思うんですけど…」
    「うーん…ユーステス?いや、ヴァジラ?」
    「うーん…」
    「うーん…」

    ダメだ!この二人も気付く気配ねぇ!
    次だ!


    結果=皮付き丸ごとリンゴを食べるのは犬には難しい

    CASE3.ロゼッタとイオ

    「あら。この子凄くイケメンな犬じゃない?」
    「そう?目なんかはつぶらで可愛いよ」

    二人にじっと近くで見つめられた俺は目のやり場に困った。
    すっかり犬を見る目だ。これは期待できない。

    「それよりラカムどこ行ったんだろう?さっきから探し回っても見つからないし…」
    「街に出てるのかもしれないわね。そのうち帰ってくるわよ」

    いやいるんだよ!目の前に!ワンっ!

    「え?探してくれるの?」
    「ふふ。イオちゃんは犬の言葉が分かるのね」
    「分かるっていうかなんとなくそう言ってる気がする!」

    違う!そんな事一言も言ってねぇ!ワンっ!!

    「そうと決まれば行くしかないわね!ラカムの私物を取りに行こう!匂いを嗅がせてあげないと」

    だめだー!!ノアーー!助けてくれ〜!!

    結果=俺自身を探す羽目になる(無意味)


    CASE4.ノア

    普段着ている俺のシャツを目の前にチラつかせるイオを項垂れて見る俺。
    誰が好き好んで自分の着てる服の匂いを嗅ぐというのだろう。汗くせぇ。犬の嗅覚すげぇ。

    「あれ?おかしいな…ラカムの匂い分からないのかな?」
    「そうね。色々な匂いが邪魔してるのかもしれないわね」

    いいや…そうじゃないんだ。俺はここに居るんだよ…。
    はぁ…どうしたら…。

    困り果てた俺と二人の前にふわりと俺の求めていた人物が降りてくる。
    ノアだ!待ってたんだよ!気付いてくれ!

    「おや、その犬はどうしたんだい?」
    「多分野良犬だと思うんだけど、今ラカムの匂いを嗅いでもらって探してもらおうとしてたの」
    「そうだったのか。でも、それ多分無意味だよ?」

    お!?

    「え?なんで?」
    「だってその犬は…」

    ノアァ!やっぱりお前…

    「警察犬じゃないからだよ」

    そうだ!俺は警察犬じゃな……え?

    「特別訓練されてない犬は匂いを嗅ぎ分ける能力は低いらしい。見るにこの子は普通に飼われてる犬だと思うよ」
    「へー、なんで分かるの?」
    「雰囲気さ。この子はどこか穏やかだからね」

    ノア…まさかお前まで…餓鬼ん時からの付き合いのお前でさえも…俺だと気づかないのか…。

    だとしたら俺はどうしたらいいんだ…。クゥン。


    「そっかぁ。残念」


    あぁ…俺も残念だよ…。
    このまま犬として生きていくしかないのか…。
    途方に暮れる俺(犬)


    そんな時だった。

    『おや…その犬は…アカイドスに似ているな』


    CASE5.アオイドス

    …まさか…この声は…。

    「アオイドスさん。新曲作りは終わったんですか?」
    「ああ」
    「いつもながら早いですね」
    「まぁ、俺だからな」

    アオイドス…まさか、お前が救世主か!?
    この機会を逃すわけにはいかねえ!ワンワンワンワンッ!!

    「ふむ。君も俺を褒め称えてくれるのだなイヌイドス」

    んん、ネーミングセンスは相変わらずだがこの際気にしねぇ!!気付いてくれ!

    「あ、ねぇ、アオイドスはラカムの居場所知らないの?」
    「アカイドスか。今日は行動を共にしていないな」
    「そう…本当にどこに行ったのかな」

    ここにいるよ…。もう慣れたこの状況は。アオイドス…お前だけが頼りだ。ワン。

    「そのうち帰ってくるとは話してたのだけれど…。それにしてもこの犬アオイドスに凄く懐いてるわね。さっきから脚にしがみついてるわよ」
    「ふっ、種族を超えて愛されてしまう俺という存在はやはり罪」

    いや、そんな事より早く気付いてくれ頼むアオイドス。
    俺はとにかく祈りに祈った。

    「そうだ。もし良ければ俺の部屋に来るといい。いいものを見せてやろうイヌイドス」

    見せたいものって…おいおい。そんなの見せられてる場合じゃないんだが!?!
    …でも…まぁ、気づいてもらう為だ。ここは言う通りアオイドスについて行こう。

    半ば祈るように俺はアオイドスの後ろ姿を追った。
    アオイドスは時折俺の方を見ては前を歩く。珍しいこともあるもんだ。
    普段なら俺の事なんて気にせずスタスタと歩いていってしまうアオイドスが、今は違う。
    なんだか妙にくすぐったい。


    見慣れたアオイドスの部屋に入るやいなやペタリと鎮座した俺の前に新曲の譜面が置かれる。先程出来たばかりの新曲。

    「これは譜面だ。音を奏でるのに必要なものの一つだ」

    知ってる。読み方をみっちり仕込まれたからな。

    「そして、これを演奏するのが俺の楽器であるギター。こっちは同じバンドメンバーであるアカイドスが演奏するベースだ」

    当然、知ってるさ。
    今は犬になっちまってるけど指先が硬くなるまで演奏しまくったからな。

    俺はベースの弦を弾こうとしてはたと我に返る。
    この手で触ってしまったら爪で弦を切ってしまうかもしれない。

    「ふふっ、興味があるか?…しかし君は本当にアカイドスそっくりだな。顔つきが特に似ている」


    …だから本人だって。
    だけど、誰一人気づかなかったのにお前はすぐに気づいてくれたなアオイドス。
    …まぁ、気付いてくれたからと言って元に戻れるって決まったわけじゃねぇが。
    本当に俺は犬になったままかもしれない。
    そんな事を思ってしまったらなんだか切なくなった。


    「…ふぁあ。新曲が出来た安心感で眠くなってしまったな。少し休むとしよう」

    アオイドスは眠たいのか瞼をぱちぱちと瞬かせて欠伸をする。
    俺も色々ありすぎて疲れたせいか、同じ様に口を開けて欠伸をする。

    「イヌイドスも眠いのか?よし、ここで一緒に寝るか?」

    そう言って手招きされて俺は渋々アオイドスの潜っている布団の近くに伏せた。
    いつも寝転び慣れているはずの場所で犬の姿でこうしているのはなんだか不思議な気分だな。

    「…アカイドスが帰ってきたら真っ先に新曲の感想を貰わなければな」

    そうだな。
    練習相当扱かれそうだけど。

    それも、今後演奏出来るか分からなくなってしまったが。

    「……なんだか…イヌイドスといると不思議と安心するものだな。…そういうところもアカイドスに似ている」


    俺も目の前で見たことのない穏やかなアオイドスの表情になんだか嫉妬してしまいそうだった。
    いつも余裕な顔して翻弄してるくせに…なんだよその顔。反則だろ。

    「……おやすみ、イヌイドス」


    ああ。おやすみ、アオイドス。あと、俺はラカムだから。






    ─────────────



    「……ん」

    なんだ…?すげぇ眩しい…。
    天使でも迎えにきたか?


    どこからともなく差してくる光に導かれた俺は徐々に現実世界へと呼び戻される。
    暖かい日差しが顔元を照らしてる感覚に俺は瞼をゆっくりと開ける。

    (ああ…俺…アオイドスの部屋で寝てたのか)

    ぼんやりとした意識の中で思い出すシーンは俺の脳内をぐるぐると駆け巡る。

    そうだ、俺は、犬になってて…。
    犬……いぬ……

    「犬!!」
    「んぁ?!?」

    重要な事を思い出した俺は飛び起きて自分の腕の存在を確認した。
    ある。腕がある!!
    耳もちゃんと人間の耳だ!

    「戻った…戻ったんだ!俺は人間に戻ったんだ!」

    あまりの嬉しさに俺は布団を跳ね除けてベッドから飛び起きた。
    なんて清々しいんだろう。

    「アオイドス!俺人間に戻れた!」
    「ん?それは、なによりだったな?」
    「一時はどうなるかと思ったが良かった」
    「…あぁ。よく分からないが…それよりもアカイドス」
    「なんだ!?」
    「……全裸では寒いだろう」
    「…………へ?」



    アオイドスの言葉に俺は自分の身体を鏡に映して見てみた。
    俺は、何も纏ってはいなかった。


    「…ぅわぁああアァァァア──────!!!!」


    聞いてないぜ神様。
    服もちゃんと元に戻して下さい…。

    俺の叫び声は犬の様に遠く遠く響き続けるのであった。
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