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    yaginoura0811

    @yaginoura0811

    キショウタニヤマボイスの世界で13年くらい生かされてます。

    雑多なものの基本は総じて右側。推しの移り変わり激しい人間。推しの右側エロ大好き!!!!!!性癖色々。

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    yaginoura0811

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    夏になれば思い出す。
    儚さを目指したラカアオ。

    すっかり気温も高くなり、夏特有の蒸し暑さにラカムは眉を顰めながら作業をしていた。
    ダラダラと汗が垂れ落ちる感触の気持ち悪さと、鬱陶しいほどの熱の纏わりつく感覚に思わず舌打ちする。

    「今日は特にあちぃな……ちょっと休憩…」

    作業もひと段落したところであったのでラカムはタオルで汗を拭きながら木陰を探して歩く。
    耳に入ってくる虫の鳴き声にふと耳を澄ましてみると、少年時代の頃を思い出してラカムはふっと笑みが溢れる。

    「蝉かぁ…」

    少年時代、夏になれば虫籠を下げて採取しに行っていた思い出が蘇ってくる。
    今でも蝉の声は聞く度に青春を必ず思い起こさせてくれる存在だった。

    あの時のように蝉の姿を探して木を一本一本見て回る。

    「…んー、いねぇなぁ………ん?」

    なかなか見つけられない中ふと木の近くに立って上を見上げているアオイドスを見つけた。
    とても真剣な顔にラカムは首を傾げる。

    「アオイドス、どうしたそんな真剣な顔して」
    「ああ、あれを見ていたんだ」
    「あれ?」

    アオイドスが指を差した先を見てみると、先程までラカムが探していた蝉の姿を発見した。

    「あ、こんなところにいたのか。あれは蝉っていう昆虫さ」
    「…せみ?」
    「ほら夏によくミンミン鳴いてるやつだ。こいつが腹を振動させて鳴いてんだ」
    「…ほう…珍しい演奏の仕方だな」
    「演奏ってか…まぁ、あれは生きるために鳴いてんだよ」
    「…生きるため…」

    ラカムの説明にピンときていない様子だったアオイドスは益々興味津々で背伸びをして木の上を見る。

    「蝉は命が短いから夏にああやって鳴いて次の子孫を残すためにメスを鳴き寄せてるんだ」
    「それは、大変だな。命が短い上に子孫まで残さなければいけないとは…」
    「短いと言っても外に出てくる前は土の中でひっそり暮らしてるだけだから実際はもっと長く生きてるぞ」
    「………そうか。しかし、その短い期間に相手が見つからなかったら?」
    「…そうだな…どうするんだろうな…。俺は蝉じゃないから分からないけど、どうしようもないだろうな…」

    改めて考えてみると蝉の存在の尊さも夢中になった要因でもあるだろう。
    だからこそ夏だけの楽しみだった。

    「…そうか。蝉というのは下手をすれば産まれても自分が何者かも分からないまま死んでいくんだな」


    ぽつりと、でもラカムの耳に入ってくる声量でアオイドスが呟く。
    蝉の鳴き声に掻き消されるような声と、蝉のように目に追えないまま何処かに飛んでいきそうなアオイドスの姿にラカムは思わずアオイドスの腕に手を伸ばしていた。
    ラカムの行動にアオイドスが目を瞬かせる。

    「…アカイドス?」
    「…あ…いや…すまん……アオイドスがどっかに行っちまう気がして…」

    思わず取った行動とはいえ勝手に想像して不安になってしまった恥ずかしさでラカムは頬を指先で掻く。

    「……心配しなくても大丈夫だ。俺はどこにも行かない」
    「……そっか…」
    「…蝉はどうであれ…俺にはアカイドスが居るからな」

    ラカムの不安を察したようにアオイドスが手を取って掌を握り締めた。
    アオイドスの言葉に少し照れ臭く笑うと、ラカムもまたその手を握り返して笑った。
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