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    ダークネス

    キャリコ

    PROGRESSブライテスト・ダークネス②-2「お疲れーーー!!」
    「打ち上げだーーー!」
     誕生日でもないのに、クラッカーがポンポンと慣らされる。棘の部屋に集まり、料理をところせましと並べて、あらかた腹が膨れたらウノを始めた。棘の事情で「ウノ」ではなく「しゃけ」と呼んだほうがいいかもしれない。残り一枚になるとおにぎりの具を叫ぶ。
    「あ!パンダ言い忘れ!」
    「ーーー!!」
     残り1枚の宣言忘れを真希に指摘され、パンダが頭をかかえる。うずくまって呻きながら山から1枚とり、手札に加えた。他の3人はあがって、真希とパンダの一騎打ちだ。
    「何色だ?さっきフォーカードで黄色にしてたよなぁ!?」
    「ああ、そうだよ最後は黄色だよ…だから黄色に替えろよパンダ」
    「くそ、どっちだ…」
     にらみ合う二人。しんとした中で五条だけポッキーをつまんでいる。
    「考えたって仕方ねぇな、赤だ」
    「ふっ」
     真希が不敵な笑みを浮かべ、最後の一枚を場に置こうとし…パンダは悔しそうに手を握りしめた。と思ったら、真希は手札を引っ込めて山から一枚とる。
    「…なんだよ!」
    「あははは!」
     してやったりとお腹を抱えて笑う真希が、今とった手札の裏を見ると――目を見開いて、 5359

    キャリコ

    PROGRESSブライテスト・ダークネス②-1ナイフを首に突き立てる。興奮に息が苦しくなって、一度大きく吸っては吐いた。どうせもうすぐ殺される。それなら自分でしたほうがいい。無数の札に囲まれたこの部屋は日も入らず、時間の感覚がない。連れてこられて丸1日も経っていない気がするし、もうずっとここにいる気もする。床を血まみれにして汚してしまうけれど、それくらいは許してほしい。あと数センチで楽になってしまえる。今だ、いけ。
    「…っ!」
     息を止めて、やっと覚悟が決められた、その瞬間だった。ナイフがめきめきと金属音を立てて、首とは反対方向に折れ曲がる。その振動が手に伝わってくる。
    「…里香ァ!」
     激高して、思わず椅子を引き倒す。自分でも信じられないほどの怒号が思わず口から出てしまった。ナイフが転がるカラカラという音が止まると、里香は小さく「ごめんなさい…」と言って消えてしまった。
    「何してるの?」
     背後からの声に振り返る。高身長の髪色の明るい男が立っていた。乙骨はじとりと睨み返す。
    「座って」
    「……」
    「座れ」
     一度目の命令に聞こえないふりをしていると、次に飛んできた声は、先ほどの明るいトーンが嘘みたいに、ぞっとする低い声だった。乙 5983

    キャリコ

    PROGRESSブライテスト・ダークネス①
    含む要素:過去捏造/いじめ/
    あの事故の日から、兄はすっかり変わってしまった。かけっこが速くて、友達がいっぱいいた兄。学校から帰るなりランドセルを玄関に置いたまま遊びに行って、どろんこになって帰ってくる。私は虫が苦手だったから、兄が取ってきたセミやら芋虫やらにいつも泣かされていたっけ。
     リカちゃんが交通事故に遭ってからだった。警察に連れられて家に帰ってきたときの焦燥した顔は忘れられない。その日から、人と目を合わせることが稀になった。家族とすらも。暴力的にもなった。クラスメイトに怪我をさせたとかで、母が学校へ呼ばれる。
     「あの子と仲良くするのやめなよ」「え」「お兄さんがさぁ…」そんな兄を持って、地元の中学校で友達ができるわけがなかった。
     今の時刻は朝の10時。いつもより早起きした。何か食べられるものを探しに階下へ降りると、お経が聞こえてきた。母が石に向かって拝んでいる。母が今入っている宗教の名前は忘れた。お経を唱える声が外まで聞こえないか不安だった。気づかれると「一緒に拝め」と言われるので、見つからないように息をひそめてすり抜けて、台所からポテチを一袋取って自室に戻った。
     すると、隣の兄の部屋から独り言が聞こ 9340