式子内親王
lunatic_tigris
DONE──初恋の終わりと。それから。(※最初にちょっとグロいかもしれない描写があります)
玉の緒よ 絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする
─式子内親王
林檎の花、君無き空よ 地面を埋め尽くす[[rb:林檎 > りんご]]の花。
桜に似た形をした白いそれを一輪だけ手に取る。
未だにはらはらと華を溢れさせている、人だった肉塊が選べ、と言っているようだった。――そう。人が、目の前で死んでいる。ただの人じゃなくて、好きだった人が。赤い血の代わりに白い林檎の花の海に溺れて。
――もしも、その視線の先にいるのが自分だったら。自分の言葉で、自分が綺麗だと感じた言葉の羅列で、未だこれといった相手が居ないと話していた彼の契約者として[[rb:詠 > うた]]えたらいいな、と思うことはあるけれど、行動を起こすことなんてなくて。
見ているだけで、夢想するだけで幸福で。綿飴のように、愛でて、触れて、そっと誰にも分からないように口の中で溶かすような――甘い、初恋だった。
2305桜に似た形をした白いそれを一輪だけ手に取る。
未だにはらはらと華を溢れさせている、人だった肉塊が選べ、と言っているようだった。――そう。人が、目の前で死んでいる。ただの人じゃなくて、好きだった人が。赤い血の代わりに白い林檎の花の海に溺れて。
――もしも、その視線の先にいるのが自分だったら。自分の言葉で、自分が綺麗だと感じた言葉の羅列で、未だこれといった相手が居ないと話していた彼の契約者として[[rb:詠 > うた]]えたらいいな、と思うことはあるけれど、行動を起こすことなんてなくて。
見ているだけで、夢想するだけで幸福で。綿飴のように、愛でて、触れて、そっと誰にも分からないように口の中で溶かすような――甘い、初恋だった。