果たしてこの七は灰ルートにいけるのか生まれ変わってみんな幸せに暮らしました、めでたしめでたし。とはいかないもので。いろいろあって転生した今、五条と夏油は別の学校に通っている。
「ありえねーよな」
五条は愚痴ってきたが、その事実を聞いた時は「だろうな」としか思わなかった。ここ−五条が自分が通うために作った元呪術師たちの集まる通称呪術高校−に通うには、夏油には自業自得の敵が多すぎる。
だが数日もしないうちに七海も似たようなことを呟くことになった。夏油さんの件は彼ににとって序章に過ぎなかったのだ。何が起きたのかというと、何も起きなかったのだ。灰原が呪術高校に来なかった。正確には、灰原が夏油の通う高校に入学した。何故かと本人を問い詰めても「こっちの方が味方が多いから」なんてよくわからないことを言う。灰原たちの高校に転校することも考えたが実行には移せず、寂しさを覚えながらも七海は学生生活を送っていた。

現パロ①充電が切れる前に　深夜の信号機が意味もなく点滅している。濡れた窓越しに眺める線路には、深海の底を滑る刑務所の明るさで四面体が通り過ぎていった。墓石のようなコーヒーに映る顔らしき影。それは俺であるという事実を液体と共に飲み下す。
　身じろぎの音と、遮断機の音が遠くから響くだけの狭い部屋。その沈黙に耐えられないとでも訴えるように、不意に端末が振動した。ずいぶん久しぶりの作動に、端末自体も驚いているという震え方だ。こんな時間に俺に電話をかけるなんてのは気が狂ってるアイツだけだろう。
「シェゾ？」
　端末越しに聞こえるその声には、まさか出るなんてというニュアンスが滲んでいた。俺だって自分にそう思う。
「何だ」
「あのさ、俺、いま電車降りて、充電が８％しかないんだけど、」

きっと一生忘れない「灰原、誰か…いや、五条さんへ連絡を！」
　山の傾斜の中、道の無い木々の間を逃げながら、一瞬思案した七海が灰原に向かって指示を出す。
「わかった！」
　夏油さんは今日は任務が入っていると言っていたが、五条さんは久しぶりに休みだと言っていた気がする。確かに七海の言うとおり、助けを求めるならすぐに動ける可能性のある五条さんへ連絡してみる方がいいだろう。
　灰原はそう七海の言葉から察して携帯を操作する。
　アンテナはかろうじて圏外にはなっていないが一本しか立っていない。さもありなん。近くの集落だった場所は人は居らず、その隣の集落とて人は減る一方だという話だった。

　山自体は季節によっては山の幸を穫りに人が入る事はあるという。そうやって入山した人間が無惨な姿で見つかる事件が起こり、窓が残穢を観測して呪霊の仕業と発覚した。