Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    数式

    きたまお

    TRAINING「数式まみれの空箱」
    起動実験直前のスバさんとチクさんの話。ツイったにももうあげちゃった。
    ガラスドアは大人の胸のあたりの高さに幅二十センチくらいの白いラインがはいっている。部屋の外から見ると確かに白い。内側から見ると、黄ばんで見える。ラインの上下は透明なガラスなのだが、それもスモークフィルムが貼ってあるように見える。
     ——強力な空調があっても、駄目だよなあ。
     東スバルは口をぽかりと開けて、煙が出ていくままにした。いま、喫煙室には誰もいない。なにも面白みのない狭い室内を見るのも飽きて、小さなテーブルによりかかってガラスドアから外を見ていた。と、この組織には珍しい白髪頭を後ろでひとくくりにした老いた男が通り過ぎるのが見えた。珍しい、こちらに来ているのか。普段は自ら創設した大宮の研究所に閉じこもりっきりだ。その後ろに、黒い髪の毛をオールバックにした男が続いた。おや、これもまた珍しい。所長のおつきで来たのか。来月、大宮で大きな実験が行われるから、そのための打ち合わせにきたのかもしれない。
     男がドアの前を通り過ぎる際、一瞬、こちらに視線をよこしたようだった。一度、ドアを通り過ぎたあと、ふたたび戻ってくる。自動ドアを開けて入ってくるなり、形の良い眉をひそめた。
    「煙い」
    「喫煙室 2956