Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    事務

    𝕤 / 𝕔

    DONE「ジュンらしいね」
    唐突に齎された言葉に茨は顔を上げる。事務所のあるフロアの片隅にひっそりと、というには少々目に付く派手さで飾られた笹の葉に吊るされた一枚の短冊を指先で摘まんで、凪砂が微笑んでいた。短冊に書かれた言葉を視界の端に捉えて、茨も頷く。
    「まったくもって、ジュンらしいですな」

    『あなたのとなりに立つに相応しい人間になりたい』

    なんて。そんなことは願わなくてもとうに叶えているだろうに。
    ミルキーウェイから降り注ぐ ✦ ✦ ✦

     随分カラフルな笹飾りだったね。
     ぼくがそうぽつんと落とせばジュンくんは一瞬なんの話だよという顔をして、思考を巡らせたあと得心がいったように頷いた。ああ、事務所にあった笹の話ですか。そう言い添えて。

     仕事先で貰ってきたのだという笹を担いでCrazy:Bの面々が事務所に帰ってきたときは、あまりのにぎやかさに思わず頭を抱えてしまいましたよ。茨がそんな旨のことを話していた笹は、コズプロの事務所の一角に倒れないように結ばれて、堂々とその腰を据えていた。
     短冊といえば五色であるという思考は元よりなかったみたいで、色とりどりの短冊があちこちに飾られた笹の葉は色の洪水で埋もれていた。Crazy:Bの黄色。2winkのピンクと水色のネオンカラー。Valkyrieのワインレッド──とはいかず、どこかの誰かを彷彿とさせるやわらかな朱鷺色。その他にも、持てる色彩のすべてをここに詰め込みましたといわんばかりの笹飾りで彩られた笹の葉は、重たそうに葉先のこうべを垂れていた。
    2580