ajinomedama
MEMO続き。おやすみアメジスト(後編)———さて、夜である。
「ふむ。」
紫の宝石を繁々と眺め、魔術紋様…ルーンの知識などさっぱりだが…を確認する。
神と成り、三千年もの間世界を預かったものの気持ちなどは到底わからない。李書文は口にこそ出さないがわからないものを恐れる。
いかなるものでも形あれば触れれば弾け、突けば壊れる。形無きもの…例えば矜持や慢心。そうしたものでもやはり打ち合えば見えてくる。陽陰、動と静。武を極めればおのずとそうした理が見えるかと思ったが…それでも、形こそあるが決して壊れず、触れようとも掴めず底が知れないものは存在するということか。例えば、悪い夢、怪奇。例えば、あの女のような。
「!ええい、知るか。」
透き通るような紫の輝きが、ふと彼女の瞳を思わせることに気付き、馬鹿なと慌ててそれを枕元に置き灯りを消した。
2537「ふむ。」
紫の宝石を繁々と眺め、魔術紋様…ルーンの知識などさっぱりだが…を確認する。
神と成り、三千年もの間世界を預かったものの気持ちなどは到底わからない。李書文は口にこそ出さないがわからないものを恐れる。
いかなるものでも形あれば触れれば弾け、突けば壊れる。形無きもの…例えば矜持や慢心。そうしたものでもやはり打ち合えば見えてくる。陽陰、動と静。武を極めればおのずとそうした理が見えるかと思ったが…それでも、形こそあるが決して壊れず、触れようとも掴めず底が知れないものは存在するということか。例えば、悪い夢、怪奇。例えば、あの女のような。
「!ええい、知るか。」
透き通るような紫の輝きが、ふと彼女の瞳を思わせることに気付き、馬鹿なと慌ててそれを枕元に置き灯りを消した。
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MEMO李スカディ悪夢にうなされる書文せんせの話
おやすみアメジスト(前編)最近、どうにも夢見が悪い。
「……」
これでもう一週間だ。途中で目が覚めれば救いもあるかもしれないが、こちとら肉体の全盛期で呼ばれた李書文である。
指一本動かない金縛りの中で言いようのない何かと目が会い続けたり、普段なら一撃で沈められるようなものに理由がわからないまま強い恐怖を感じ逃げ続けたり。しかしどれほどの悪夢であっても朝の定刻までは目が覚めない。更に起きてみればどうにも眠りが浅い気がして、書文は再びの悪夢からようやく抜け出た疲労の中で、朝の光を浴びた。
「それは困ったな。」
スカディの声は、朝食のブルーベリーヨーグルトとシリアルに吸い込まれていった。
「他人事のように言うな。」
ガヤガヤと騒がしい朝の食堂に彼女を見つけたのは僥倖だった。上手く言ってケルトの気の良い連中らから引き離し、隅のテーブルに座らせる。
708「……」
これでもう一週間だ。途中で目が覚めれば救いもあるかもしれないが、こちとら肉体の全盛期で呼ばれた李書文である。
指一本動かない金縛りの中で言いようのない何かと目が会い続けたり、普段なら一撃で沈められるようなものに理由がわからないまま強い恐怖を感じ逃げ続けたり。しかしどれほどの悪夢であっても朝の定刻までは目が覚めない。更に起きてみればどうにも眠りが浅い気がして、書文は再びの悪夢からようやく抜け出た疲労の中で、朝の光を浴びた。
「それは困ったな。」
スカディの声は、朝食のブルーベリーヨーグルトとシリアルに吸い込まれていった。
「他人事のように言うな。」
ガヤガヤと騒がしい朝の食堂に彼女を見つけたのは僥倖だった。上手く言ってケルトの気の良い連中らから引き離し、隅のテーブルに座らせる。
ajinomedama
MEMO李スカディ、キスの日記念です。どうしたらいいか…私にもわかりません、散々考えましたが答えは見つからないままです、この二人の何がどうなれば正解なのか…愛があり、博愛の女神は特別を見出します。見出させられるのです。
その日は親愛なる者に口付けを柔らかくほのかに甘い香水の匂い。ふとそれを感じて顔を向けようとした書文をするりと白い手が捕まえ、流れるように頬に口付けをされた。体温が低いのかどこかヒヤリとしているが鋭い冷たさではない、不思議な感触。
「どうした、藪から棒に。」
改めて顔を横に向けると、以前なら自然と距離を取るような近さにスカディの顔があったが、今ではもう慣れた。近いままの距離で事情を聞く。
「今日はキスの日だと聞いた。朝から皆に散々口付けをされたのだ。書文、お前にもしてやろうと思ってな。」
「…」
だからわざわざ自分の部屋まで遊びに来たらしい。スカディは山の女神と聞く。先日打ち合ったときから感じていたことだが彼女の在り方は自然そのものにも近く、気配が無いというより気配が周囲に溶け込みすぎる。
1683「どうした、藪から棒に。」
改めて顔を横に向けると、以前なら自然と距離を取るような近さにスカディの顔があったが、今ではもう慣れた。近いままの距離で事情を聞く。
「今日はキスの日だと聞いた。朝から皆に散々口付けをされたのだ。書文、お前にもしてやろうと思ってな。」
「…」
だからわざわざ自分の部屋まで遊びに来たらしい。スカディは山の女神と聞く。先日打ち合ったときから感じていたことだが彼女の在り方は自然そのものにも近く、気配が無いというより気配が周囲に溶け込みすぎる。
ajinomedama
MEMO槍李書文×スカディちゃんほのぼの。手当てごっこ。人間の真似をする神霊は不器用で可愛い。
ぽんぽん「李書文、お前が傷付くのを待っていたぞ。」
いつもと変わらない慈しむような優しい声でスカディはそう告げた。
書文はその日、稽古と称してサーヴァントに手当たり次第声をかけては模擬戦闘をしていた。彼はカルデアに現界してまだ日が浅く、エーテル体としての身体の動かし方と、己の武人としての強度がここでどう通用するかを見極めたかった。
——やはり世界は広い。生前は最強だと自負していたこの槍も拳も、数多の国、時代を駆けた英雄たちと交えるとなんとも頼りない。故にまだまだ鍛え甲斐があり、伸び代がある。
中々の収穫があったと、その代償に付けられた額の傷を水道で洗っていると、彼女に背後から声をかけられたのだった。
「狩人のようなことをぬかすな、儂をとって食うか。」
2135いつもと変わらない慈しむような優しい声でスカディはそう告げた。
書文はその日、稽古と称してサーヴァントに手当たり次第声をかけては模擬戦闘をしていた。彼はカルデアに現界してまだ日が浅く、エーテル体としての身体の動かし方と、己の武人としての強度がここでどう通用するかを見極めたかった。
——やはり世界は広い。生前は最強だと自負していたこの槍も拳も、数多の国、時代を駆けた英雄たちと交えるとなんとも頼りない。故にまだまだ鍛え甲斐があり、伸び代がある。
中々の収穫があったと、その代償に付けられた額の傷を水道で洗っていると、彼女に背後から声をかけられたのだった。
「狩人のようなことをぬかすな、儂をとって食うか。」
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MEMO槍李書文×術スカサハって無いんですね、あったら教えてください飛んでいくんで雪解け水槍のスカサハがいないカルデアにやってきた神槍李書文。
マスターから話を聞くに、かつて存分に殺し合ったらしい北欧最強の槍使い、スカサハとやらは食堂で呑気に甘味などを食べていた。
「お主がスカサハか。」
「そうだが。」
彼女は当然であるが李書文のことは微塵も知らない。
後からマスターとマシュが駆けてきて慌てて状況を説明する。スカサハはスカサハでも彼女は氷雪の女王であり山の女神。触れれば溶けるような、どこか幼さすら残る風貌の女。スカサハに神霊が混ざった女。
是非手合わせ願いたいと言う筈だったが…強者の顔をしていないように見えた。
「ふむ。お前が望む強さが、私のそれと噛み合うかはわからないが…」
食堂の温度が数度下がり、火が消える。
758マスターから話を聞くに、かつて存分に殺し合ったらしい北欧最強の槍使い、スカサハとやらは食堂で呑気に甘味などを食べていた。
「お主がスカサハか。」
「そうだが。」
彼女は当然であるが李書文のことは微塵も知らない。
後からマスターとマシュが駆けてきて慌てて状況を説明する。スカサハはスカサハでも彼女は氷雪の女王であり山の女神。触れれば溶けるような、どこか幼さすら残る風貌の女。スカサハに神霊が混ざった女。
是非手合わせ願いたいと言う筈だったが…強者の顔をしていないように見えた。
「ふむ。お前が望む強さが、私のそれと噛み合うかはわからないが…」
食堂の温度が数度下がり、火が消える。