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DOODLEValentine Nightヴァレンタインの夜。
Pass=Askeladd’s real first name in lower case (6 letters)
パスはアシェの本名のファーストネームを、英文小文字で。6文字
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DONEビョルアシェ、フェロー諸島でのトールズとの決闘から一年後。狂戦士のキノコの副作用で、高熱と頭痛に悩まされるビョルン君を、アシェラッドがらしくもなく気遣う話。安寧 頭の中で金づちでも振るわれているかというほどの痛みに、ほとんど気を失うように眠りに落ちて、どれほど経っただろう。どうにも寒くてならず、ビョルンは否応なしに、眠りの淵から引き上げられた。
かぶっていた毛皮をさらに耳元まで引き上げ、肩の下に端を巻き込んだが、そうすると足の先が出てしまう。薄暗い室内を見回すと、向かいの寝台に毛皮が積んであるのが目に入った。重い足を引きずり、一枚取ってきて肩からかぶる。多少は寒さがやわらいだようだが、こればかりはこの高熱がおさまるのを、じっと待つしかない。
しばらくうとうととしていると、耳慣れた足音が近づいてくるのが聞こえた。やがて扉がきしむ音がして、月桂樹の香りをかすかに感じる。寝返りをうとうとしたとき、すっと額に、彼の手が触れた。いつもながら体温の低い、乾いた手だった。
3303かぶっていた毛皮をさらに耳元まで引き上げ、肩の下に端を巻き込んだが、そうすると足の先が出てしまう。薄暗い室内を見回すと、向かいの寝台に毛皮が積んであるのが目に入った。重い足を引きずり、一枚取ってきて肩からかぶる。多少は寒さがやわらいだようだが、こればかりはこの高熱がおさまるのを、じっと待つしかない。
しばらくうとうととしていると、耳慣れた足音が近づいてくるのが聞こえた。やがて扉がきしむ音がして、月桂樹の香りをかすかに感じる。寝返りをうとうとしたとき、すっと額に、彼の手が触れた。いつもながら体温の低い、乾いた手だった。
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DONEビョルアシェ。戦功の褒美にただ褒めてもらうことだけを望むビョルン君と、困惑するアシェラッドの話。以前、彼らの「最後の接吻」の話を書きましたが、今回ははじめてのキスの話です。キスの日記念ということで、勢いで書きました。
First Kiss 一番槍の褒美は何がいいか。そう問われて、ビョルンが包み隠さずほんとうの望みを言うと、彼は大きく目を見開き、しばらく無言のままでいた。
「……それだけ?」
「それだけ」
ふゥん、と鼻を鳴らし、途方に暮れた様子であさっての方角に視線を流して、ぼりぼりと頭を掻く。ただそれだけの、なにげない動作だというのに、甘くすずやかな香りがほのかに立った。彼がいつもつけている、月桂樹の香油の香り。それを聞き出すだけで、三ヶ月もかかった。
「ビョルンお前ね、ちと無欲すぎんか? 一番槍に加えて、大将の首級あげたのもお前だぜ。ふつうはもっと褒美をほしがるもんだ。銀とか剣とかよ」
「銀はじゅうぶん貰ってる。剣は消耗品だ。よく手入れしてあれば、どんな鍛冶屋が打ったものでも、そう変わりねェ」
2533「……それだけ?」
「それだけ」
ふゥん、と鼻を鳴らし、途方に暮れた様子であさっての方角に視線を流して、ぼりぼりと頭を掻く。ただそれだけの、なにげない動作だというのに、甘くすずやかな香りがほのかに立った。彼がいつもつけている、月桂樹の香油の香り。それを聞き出すだけで、三ヶ月もかかった。
「ビョルンお前ね、ちと無欲すぎんか? 一番槍に加えて、大将の首級あげたのもお前だぜ。ふつうはもっと褒美をほしがるもんだ。銀とか剣とかよ」
「銀はじゅうぶん貰ってる。剣は消耗品だ。よく手入れしてあれば、どんな鍛冶屋が打ったものでも、そう変わりねェ」
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DONE現パロビョルアシェ第六話。このシリーズ(馴れ初め編)は、これが最終話です。ルカの公開講座の最終日、打ち上げから帰宅したルカに、ビョルンはある質問をぶつける。『アシェラッドのバラッド』の本質に迫る彼らの問答は、思わぬ方向に向かい……。
後半、ふたりが論争している場面で、ほんとうは傍点を使いたかった部分がいくつかあります。ポイピクではhtmlのタグも使えないので、斜体や太字にすることもできませんでした。このシリーズは年末あたりをめどに、一冊の本にしようと思っているので、そのときは傍点をつけます。
Unknown Legend(6) 復活祭の後にはじまったロンドン博物館でのルカの公開講座は、八月最後の週の金曜日、無事に最終回を迎えた。
終了後は、企画担当のルカの教え子ニコールと、最近彼女が同棲をはじめたという保存科学の専門家であるダミアンを交えて、いつもルカとビョルンが講義の後に寄るパブで打ち上げをした。ニコールの学生時代の話や、博物館のバックヤードでのこぼれ話に花が咲き、二人と別れたのは九時過ぎ。いつもながら混雑しているセントラル・ラインに乗って帰宅すると、ルカはさすがに疲れたようで、リビングに入るなりタイを解いてジャケットを脱ぎ、定位置のひとり掛けソファに身を投げ出した。
「……こりゃア、嬉しいねェ」
ミルクと蜂蜜をたっぷり足したアールグレイのマグを差し出すと、彼は眼を細める。いつも贔屓にしているコヴェント・ガーデンの茶葉専門店で買った、レモンとオレンジの皮がたっぷり入った特別なアールグレイである。疲れが溜まったときに、これを飲むのが好きなのだ。十ヶ月も一緒にいれば、彼がどんなときに何を望むのかくらい、すっかり頭に入っている。
10088終了後は、企画担当のルカの教え子ニコールと、最近彼女が同棲をはじめたという保存科学の専門家であるダミアンを交えて、いつもルカとビョルンが講義の後に寄るパブで打ち上げをした。ニコールの学生時代の話や、博物館のバックヤードでのこぼれ話に花が咲き、二人と別れたのは九時過ぎ。いつもながら混雑しているセントラル・ラインに乗って帰宅すると、ルカはさすがに疲れたようで、リビングに入るなりタイを解いてジャケットを脱ぎ、定位置のひとり掛けソファに身を投げ出した。
「……こりゃア、嬉しいねェ」
ミルクと蜂蜜をたっぷり足したアールグレイのマグを差し出すと、彼は眼を細める。いつも贔屓にしているコヴェント・ガーデンの茶葉専門店で買った、レモンとオレンジの皮がたっぷり入った特別なアールグレイである。疲れが溜まったときに、これを飲むのが好きなのだ。十ヶ月も一緒にいれば、彼がどんなときに何を望むのかくらい、すっかり頭に入っている。
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DOODLEビョルアシェまとめ ふたりの世界2021年11月~2023年1月に、twitterで公開したらくがきのまとめ。ビョルアシェ、あるいはビョルアシェ前提のそれぞれ単体の絵です。原作軸と現パロが混在。ビョルン君の髭の形態で、見分けていただければさいわい。(三つ編みしているのが原作軸) 17
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DONE現パロビョルアシェ、第五話。クリスマス前にルカへの想いを自覚したビョルンは、向学心に燃えて英国史と文学を自習しはじめ、博物館で開かれたルカの公開講座にまで足を運ぶ。しかし想いが募るあまり、プラトニックな憧れにとどめておこうという当初の考えは、徐々に変化してゆく。
今回でこのシリーズは終わるつもりでしたが、もう一話延びます。作中、ロンドン博物館が登場しますが、この博物館は昨年閉館しました。これまで特に明記してきませんでしたが、この現パロシリーズは原作軸からちょうど1000年後、2014年10月からはじまっています。なので第五話の時点では2015年5月です。
Unknown Legend(5) 熱心に質問をしていた年若い受講者が丁重に礼をのべ、興奮気味に去ってゆくのを見届けて、ゆっくりと席を立ち、歩み寄る。とっくに気づいていたはずのルカは、それでも大袈裟に眉を上げ、両腕を広げてみせた。
「これはこれは。しかし、なんだってこんな回りくどいことをするかねえ?」
「別に、回りくどかねェよ。正規の手続きだ」
「ひとつ屋根の下に暮らしてるんだから、訊きたいことがあるならいつだって訊きゃアいいのに」
「そういうのは、ひとつだけ質問があるときに使う手だろ。俺の場合、全部聴きたいんだ。だってものを知らなさすぎだから」
「ふーん?」
鼻を鳴らし、くちびるの片端を吊り上げるいつもの笑みを向けてくる。そして、
「まァ何にせよ、勤勉なのはいいことだ。オレは嫌いじゃねェよ、そういうの」
4870「これはこれは。しかし、なんだってこんな回りくどいことをするかねえ?」
「別に、回りくどかねェよ。正規の手続きだ」
「ひとつ屋根の下に暮らしてるんだから、訊きたいことがあるならいつだって訊きゃアいいのに」
「そういうのは、ひとつだけ質問があるときに使う手だろ。俺の場合、全部聴きたいんだ。だってものを知らなさすぎだから」
「ふーん?」
鼻を鳴らし、くちびるの片端を吊り上げるいつもの笑みを向けてくる。そして、
「まァ何にせよ、勤勉なのはいいことだ。オレは嫌いじゃねェよ、そういうの」
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DONE現パロビョルアシェ、第四話。クリスマス休暇を目前にした木曜日の夜、ビョルンはつらい過去の夢にうなされる。泣き叫んでいた彼は、仕事から帰宅したばかりのルカに起こされるが……。ふたりの距離が、一気に縮まります。このシリーズは、次回で一旦ひと区切りの予定。
Unknown Legend(4) その兆しは夜の眠りのさなか、ひたひたと忍び寄る。
浅い眠りの瀬をたゆたいながら、その気配を察知し、ビョルンは焦る。早く夢など必要としないほどに熟睡しなければ、と。しかし次の瞬間、真っ黒な泥に巻かれて、深みへとひきずり込まれる。そうなってしまったが最後、自分の意思ではどうにもならない。悪夢のるつぼで泣き叫び、目覚めるまでもがき続けるしかないのだ。
――なんで……この夢なんだ。
おかしなことに、自分で判っている。これは夢なのだと。しかしそこから抜け出せない以上、判っていてもなんの得にもならない。しかもよりによって、ビョルンがもっとも見たくない夢だった。あの日と同じように泣きながら、日の落ちたテムズ川の南岸をめちゃくちゃに走り回り、道ゆく大人たちの姿を必死に目で追う。けれどもビョルンが求めてやまぬ背中は、どこにも見当たらない。
8516浅い眠りの瀬をたゆたいながら、その気配を察知し、ビョルンは焦る。早く夢など必要としないほどに熟睡しなければ、と。しかし次の瞬間、真っ黒な泥に巻かれて、深みへとひきずり込まれる。そうなってしまったが最後、自分の意思ではどうにもならない。悪夢のるつぼで泣き叫び、目覚めるまでもがき続けるしかないのだ。
――なんで……この夢なんだ。
おかしなことに、自分で判っている。これは夢なのだと。しかしそこから抜け出せない以上、判っていてもなんの得にもならない。しかもよりによって、ビョルンがもっとも見たくない夢だった。あの日と同じように泣きながら、日の落ちたテムズ川の南岸をめちゃくちゃに走り回り、道ゆく大人たちの姿を必死に目で追う。けれどもビョルンが求めてやまぬ背中は、どこにも見当たらない。
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DONE現パロビョルアシェ、第三話。ルカの家にハウスキーパーとして雇われて一ヶ月、ビョルンは住み込みを決意し、ブリクストンの団地を引き払う。原作でのふたりの関係が、部分的に反転しているのを愉しんでいただければ、さいわいです。次回はもっと、距離が縮まる予定。
Unknown Legend(3) ルカの家のハウスキーパーとして雇われて一ヶ月が経った、金曜日の早朝。晩秋のロンドンにしてはめずらしくよく晴れて、うすむらさきの曙光に染まった空は、高く澄んでいた。
スーツケース一つだけを転がして、ビョルンは玄関の鍵を閉めた。鍵を管理人のポストに入れ、見慣れた風景を今一度、振り仰ぐ。雑然として、治安もあまりよろしくない地区だが、それでもこの風景を住民として見上げるのも最後かと思えば、感傷が湧いてくる。
――俺の人生は、……これからどうなるのだろうか。
こうして通勤ラッシュに揉まれることも、これからはほとんどなくなる。ごったがえす地下鉄の車内で壁に寄りかかりながらも、奇妙な気分だった。あれほど自分の意思を持って仕事を選ばねばと思っていたというのに、折良く仕事の口をあてがわれ、気がつけば結局流されるままに、ビョルンの環境は大きく変わろうとしていた。しかし不思議なほどに、心は落ち着いている。むしろ古巣に戻るような懐かしさすらおぼえるのは、なぜだろう。
4490スーツケース一つだけを転がして、ビョルンは玄関の鍵を閉めた。鍵を管理人のポストに入れ、見慣れた風景を今一度、振り仰ぐ。雑然として、治安もあまりよろしくない地区だが、それでもこの風景を住民として見上げるのも最後かと思えば、感傷が湧いてくる。
――俺の人生は、……これからどうなるのだろうか。
こうして通勤ラッシュに揉まれることも、これからはほとんどなくなる。ごったがえす地下鉄の車内で壁に寄りかかりながらも、奇妙な気分だった。あれほど自分の意思を持って仕事を選ばねばと思っていたというのに、折良く仕事の口をあてがわれ、気がつけば結局流されるままに、ビョルンの環境は大きく変わろうとしていた。しかし不思議なほどに、心は落ち着いている。むしろ古巣に戻るような懐かしさすらおぼえるのは、なぜだろう。
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DONE現パロビョルアシェ、第二話。失業中の元ティールーム従業員のビョルンは、ポートベロー・マーケットで古物露天商をするティールームの常連客ルカ(アシェラッド)と再会する。ルカに言いくるめられ、店番をしながら会話を重ねてゆくうちに、ビョルンはルカからある提案を受ける。Unknown Legend(2)「それにしてもビョルン、こいつは大した奇遇だ。グレゴリーの店が潰れちまったって聞いて、心配してたんだよ。しかしまさかこの長大なポートベロー・マーケットで、君がオレの店で足を止めるとはね」
それに先週や先々週では会えなかったと、彼は言う。なぜ、と問う代わりに眉根を寄せたビョルンを認めて、彼はなめらかに続けた。
「先週は、学会でクラクフに行ってた。その前も発表の準備だの何だので、しばらく出店休んでたからな。今日は二ヶ月ぶりの出店だ」
「……」
「まァ何だ、これも巡り合わせってやつさ」
あっけにとられているうちに流されて、ビョルンはすでに露店の内側に招き入れられている。すすめられるままにパイプ椅子に腰掛け、手渡された名刺に視線を落とした。
7127それに先週や先々週では会えなかったと、彼は言う。なぜ、と問う代わりに眉根を寄せたビョルンを認めて、彼はなめらかに続けた。
「先週は、学会でクラクフに行ってた。その前も発表の準備だの何だので、しばらく出店休んでたからな。今日は二ヶ月ぶりの出店だ」
「……」
「まァ何だ、これも巡り合わせってやつさ」
あっけにとられているうちに流されて、ビョルンはすでに露店の内側に招き入れられている。すすめられるままにパイプ椅子に腰掛け、手渡された名刺に視線を落とした。
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DONE現パロビョルアシェ。現代のロンドンに暮らす大学教授ルカ・アルトゥール・ホプキンス(かつてのアシェラッド)と、ティールームの元店員ビョルンの物語。今回はふたりの出逢いまで。Unknown Legend (1) その髪は朝日のごとく輝き
そのまなこは高き空のごとく澄み渡りけり
白き衣に身を包み
剣を振るうはただひたすら、母と故郷の名誉のため
失業してしまった。まったく、青天の霹靂だった。
人生にはおうおうにして、予測不可能なことが起きる。そんなことくらい、母親に棄てられた十一のとき、とうに判っているはずだった。けれどもまさか、ここが自分の居場所だと思っていた仕事場が、ある日突然なくなるとは。あまりに急すぎて、不運を嘆くいとまもなかった。
――いい加減、そろそろ次の仕事を探すべきだろう。
失業してから、そろそろ三週間になる。いつ振り込まれるかわからない失業手当はあてにならないし、ただでさえ残り少ない貯金を、これ以上食い潰す訳にはゆかない。なのに気がつけば地下鉄を乗り継いで、今日もノッティング・ヒルの駅まで来てしまった。ビョルンのかつての職場は、この駅から歩いて十分ほどの路地裏にあった。
4865そのまなこは高き空のごとく澄み渡りけり
白き衣に身を包み
剣を振るうはただひたすら、母と故郷の名誉のため
失業してしまった。まったく、青天の霹靂だった。
人生にはおうおうにして、予測不可能なことが起きる。そんなことくらい、母親に棄てられた十一のとき、とうに判っているはずだった。けれどもまさか、ここが自分の居場所だと思っていた仕事場が、ある日突然なくなるとは。あまりに急すぎて、不運を嘆くいとまもなかった。
――いい加減、そろそろ次の仕事を探すべきだろう。
失業してから、そろそろ三週間になる。いつ振り込まれるかわからない失業手当はあてにならないし、ただでさえ残り少ない貯金を、これ以上食い潰す訳にはゆかない。なのに気がつけば地下鉄を乗り継いで、今日もノッティング・ヒルの駅まで来てしまった。ビョルンのかつての職場は、この駅から歩いて十分ほどの路地裏にあった。
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DOODLE現パロビョルアシェ小説のUnknown Legend、ロンドンに住むルカ教授と彼のハウスキーパー兼秘書のビョルン君のネタ帳らくがきです。2022年夏~10月中旬まで、twitterで公開してきたもののまとめ。ルカ教授の本名は、ルキウス(ルカ)・アルトゥール・ホプキンス。ウェールズに伝わる中世の口承文芸「アシェラッドのバラッド」を専門とする、研究者です。近所のティールームの従業員だったビョルン君をスカウトし、住み込みで雇います。「アシェラッドのバラッド」がきっかけになり、ふたりはやがて恋仲に。そのうちトルフィンも出てくる予定。 12
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DOODLE「あんたが好きなんだ」そんなあまりに直裁すぎる恋の告白に、他にどう返せばよいというのだろう。
「知ってる。ありがとよ」
すこしばかり口惜しそうに、薄い眉の下からこちらを窺う男の頬に、子どもだましの接吻をくれてやる。互いの肉欲を満たすためだけの関係だと割り切ってはじめたことだったのに、今ではまるで、ままごとのようだ。
それでも明日もまた、この男に支えられて、生きてゆく。囚われているのは、どちらなのだろう。
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DONEビョルアシェ。原作の五年前くらい。おそらくイングランドのどこかで、砦を攻め落とした直後、たそがれるアシェラッドとそれを見守るビョルンの話。twitterで、ちょっと呟いたネタです。
残照 昼前から激しさを増した戦闘の勝敗が定まり、砦のすべての門が開かれたのは、川向こうの森に傾いた陽の端がかかるころであった。
残党狩りの指揮をトルグリムとアトリに命じ、アシェラッドは物見櫓にかかる梯子を昇る。背後には、ビョルンが影のように付き従っていた。いつもなら、残党狩りも金目のものの探索もビョルンに任せるのだが、なんとなく今日はそうしなかった。その理由はおぼろげに判っているが、あえてそこには焦点を絞らず、梯子を昇りきる。弓に当たって死んだ守備兵の死体を下に落とし、梯子を昇ってきたビョルンの手を取って、引き上げた。
物見櫓の上は、さすがに眺望がきいた。砦の搦手門のあたりで残党が最後の抵抗をみせているらしく、アトリが指示を飛ばす声が聞こえる。
2028残党狩りの指揮をトルグリムとアトリに命じ、アシェラッドは物見櫓にかかる梯子を昇る。背後には、ビョルンが影のように付き従っていた。いつもなら、残党狩りも金目のものの探索もビョルンに任せるのだが、なんとなく今日はそうしなかった。その理由はおぼろげに判っているが、あえてそこには焦点を絞らず、梯子を昇りきる。弓に当たって死んだ守備兵の死体を下に落とし、梯子を昇ってきたビョルンの手を取って、引き上げた。
物見櫓の上は、さすがに眺望がきいた。砦の搦手門のあたりで残党が最後の抵抗をみせているらしく、アトリが指示を飛ばす声が聞こえる。
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DONEビョルアシェ。春の出航に向けて、イェリングの市場へ買い出しに訪れたふたりの話。あいかわらず、同衾前提の話になっていますが、後半に一瞬出てくるのみなので、警告入れません。今回は、気の合うふたりの会話を書くのが課題でした。なお、固形石鹸の登場は12世紀だそうです。今回出てくるのは、あくまで過渡期のものということでひとつ。最後の部分が、現パロになっています。幸せなビョルアシェを愉しみたい方向け。
君よ知るや南の国 冬の間、村を覆っていた雪の下から土と水仙の芽がのぞき、街道を往来する乗り物が橇から馬車に変わるころ、いつものように窓辺で頬杖をついたまま、彼が言う。「そろそろか」、と。
彼とふたりで三ヶ月、巣ごもりするようにゴルム邸の離れで暮らす日々は終わり、出航の準備にかかる時が来た。名残惜しくないといえば嘘になるが、この準備のための小旅行を、毎年ビョルンは心待ちにしている。なにしろ行き先はイェリング、日の出の勢いのデンマーク王国の都だ。しかも春の到来を前にした今、イェリングの市場は俄然活気づく。遠方からやってくる異国の商人たちが増えはじめ、掘り出し物が見つかりやすいのもこの時期なのである。
その日も朝から塩漬け肉やら干し鱈を買い込み、旅籠の奉公人に荷物の番を頼むと、ビョルンは市場にさまよい出た。アシェラッドはすでにふらりと姿を消している。昼食を食って村に戻ると決めているので、正午の鐘が鳴るまでは何をしても自由だ。
7132彼とふたりで三ヶ月、巣ごもりするようにゴルム邸の離れで暮らす日々は終わり、出航の準備にかかる時が来た。名残惜しくないといえば嘘になるが、この準備のための小旅行を、毎年ビョルンは心待ちにしている。なにしろ行き先はイェリング、日の出の勢いのデンマーク王国の都だ。しかも春の到来を前にした今、イェリングの市場は俄然活気づく。遠方からやってくる異国の商人たちが増えはじめ、掘り出し物が見つかりやすいのもこの時期なのである。
その日も朝から塩漬け肉やら干し鱈を買い込み、旅籠の奉公人に荷物の番を頼むと、ビョルンは市場にさまよい出た。アシェラッドはすでにふらりと姿を消している。昼食を食って村に戻ると決めているので、正午の鐘が鳴るまでは何をしても自由だ。
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DONEビョルアシェ。心象風景ヴァルハラから、アシェがビョルン君を救い出す話。Lay Down Your Arms 地鳴りが響く。あちこちから沸き上がるのは、鬨の声か、それとも嘆きの声か。
淀んだ水を蹴立てて、また突進してくる者がいる。ぐずぐずに肉が崩れて、骨もところどころ見えているというのに、力だけは熊みたいに強い。
――うんざりだ。
渾身の力をこめて殴ると、顎が吹っ飛んで、そいつは仰のけに倒れた。しかしものの十も数えぬうちに、また元通りになって襲いかかってくるのだから、始末に負えない。
そもそも、ここはどこなのか。赤黒い虚空を仰ぐと、その果てに岩肌のようなものがぼんやりと見える。だとすれば、おそらく地下なのだろう。
――死後の世界が地下にあるだなんて、あまりにありきたりじゃねェか。
ひきつった笑みが浮かんだ瞬間、首筋に衝撃が走って、視界が回転した。背後から斧でもくらったか。首を落とされ、胴もずたずたに斬られたらしい。
6558淀んだ水を蹴立てて、また突進してくる者がいる。ぐずぐずに肉が崩れて、骨もところどころ見えているというのに、力だけは熊みたいに強い。
――うんざりだ。
渾身の力をこめて殴ると、顎が吹っ飛んで、そいつは仰のけに倒れた。しかしものの十も数えぬうちに、また元通りになって襲いかかってくるのだから、始末に負えない。
そもそも、ここはどこなのか。赤黒い虚空を仰ぐと、その果てに岩肌のようなものがぼんやりと見える。だとすれば、おそらく地下なのだろう。
――死後の世界が地下にあるだなんて、あまりにありきたりじゃねェか。
ひきつった笑みが浮かんだ瞬間、首筋に衝撃が走って、視界が回転した。背後から斧でもくらったか。首を落とされ、胴もずたずたに斬られたらしい。
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DOODLE2022年6月から8月まで、twitterにアップしてきたらくがきです。ビョルアシェのものをまとめました。9枚目と10枚目は、現パロ仕様です。現代のロンドンに暮らす、大学教授アシェ(名前はルカ・アルトゥール・ホプキンス。ウェールズ人)と、彼の秘書兼ハウスキーパーとして雇われたスウェーデン系のカフェ店員ビョルン君(名前はビョルン・アンドレセン。あの名画で有名な美少年と同姓同名)。何のかんのでおしどり夫夫です。 10
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DONEビョルアシェ。原作第一話から遡って12,3年前の話。同衾描写がありますので、ご注意を。行為の後、自分にとってビョルン君とは何者なのか、しばし考えにふけるアシェラッドの話。 1901
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DONEビョルアシェ。ふたりが出逢って3年、ビョルン君が副官となってはじめての冬越しの話。ふたりの出逢いのときのエピソードや、ビョルン君の過去など、創作要素多めです。同衾前提でふたりが話している場面がありますので、ご注意を。特にアシェラッドは結構あけすけです。 7595
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DONEビョルアシェ。ビョルン君埋葬時に、遺体に語りかけるアシェ。相手が死体なので、生前言えなかったことも結構言っています。甘口なので、お好みに合わなければ回れ右を。アシェの少年時代については、語っていた以上にひどいことがあったという気がしています。
pixivで公開していますが、こちらにも試験的にアップしてみます。
Last Kiss 雪に覆われた小高い丘の中腹まで下りてきたところに、見張りの番小屋がある。そこから薄く煙が立ちのぼっているのを確認して、アシェラッドは足を止め、担いでいた男を一旦下ろした。
見張り当番の兵士に事情を話し、スコップを借りた。アシェラッドよりも年長らしい、人の好さそうなその兵士は、昨夜の飲み残しで悪いが、と言いながら、素焼きの酒瓶を差し出してくる。中身は蜂蜜酒だった。
「こいつはありがてェな。お前好きだろ、ビョルン」
すっかり体温を失ってしまったくちびるにひとしずく、指先で含ませてやる。わずかに生気がよみがえったが、そのせいでなにかもの言いたげにみえる。
「なんだ、もっと飲みてェか」
ひと口、アシェラッドも蜂蜜酒を口に含んだ。甘ったるい酒は好みではない。しかし今は、渇ききった舌に、その甘さが嬉しかった。残りを算段に入れながら、もうひと口。いつも美味そうに飲んでいた男の笑顔が、眼の奥にちらつく。
2677見張り当番の兵士に事情を話し、スコップを借りた。アシェラッドよりも年長らしい、人の好さそうなその兵士は、昨夜の飲み残しで悪いが、と言いながら、素焼きの酒瓶を差し出してくる。中身は蜂蜜酒だった。
「こいつはありがてェな。お前好きだろ、ビョルン」
すっかり体温を失ってしまったくちびるにひとしずく、指先で含ませてやる。わずかに生気がよみがえったが、そのせいでなにかもの言いたげにみえる。
「なんだ、もっと飲みてェか」
ひと口、アシェラッドも蜂蜜酒を口に含んだ。甘ったるい酒は好みではない。しかし今は、渇ききった舌に、その甘さが嬉しかった。残りを算段に入れながら、もうひと口。いつも美味そうに飲んでいた男の笑顔が、眼の奥にちらつく。