きょう
DONE大丁。酔っぱらいの丁呂介が好き。次はないと思え「……今夜は帰りたくないです」
思わず急ブレーキを踏んだ。蹴躓くようにして前のめりになった体にシートベルトが食い込む。後部座席からワッと驚く声となにかがぶつかる音が聞こえた。
なに?なんて?ギギギと首だけを動かして後ろを見た。
タクシーの後部座席に座る緑土丁呂介は打ち付けたらしい鼻をおさえていた。
「ですから、今夜はまだ帰りたくないんです」
「な、なに、なんで」
「ようやく小五月蝿い連中から開放されて晴れ晴れしい気分なんで。たまにはお酒に付き合ってくれませんか」
丁呂介の妹のダヨ子ちゃんが結婚することになった。これはめでたいことなのだが、田舎の古臭い村にはめでたいだけでは済まない「お付き合い」がたくさんある。
3273思わず急ブレーキを踏んだ。蹴躓くようにして前のめりになった体にシートベルトが食い込む。後部座席からワッと驚く声となにかがぶつかる音が聞こえた。
なに?なんて?ギギギと首だけを動かして後ろを見た。
タクシーの後部座席に座る緑土丁呂介は打ち付けたらしい鼻をおさえていた。
「ですから、今夜はまだ帰りたくないんです」
「な、なに、なんで」
「ようやく小五月蝿い連中から開放されて晴れ晴れしい気分なんで。たまにはお酒に付き合ってくれませんか」
丁呂介の妹のダヨ子ちゃんが結婚することになった。これはめでたいことなのだが、田舎の古臭い村にはめでたいだけでは済まない「お付き合い」がたくさんある。
きょう
DONEぐずぐずの大丁ひめごと太陽がギラギラと輝いていた。
フロントガラスを通しても尚、眩しすぎる日光は肌をジリジリと焼き、汗を吹き出させる。
襟ぐりのあたりは汗で濡れてグッショリとしていた。
冷房の壊れた車内は蒸し風呂というより走る拷問器具だ。暑くて熱くてたまらない。
信号が赤にかわる。田舎の休日、真昼。交通量なんてこの古びたタクシーくらいな十字路でも、律儀に仕事をしている信号機に義理立てしてブレーキを踏んだ。
窓から得られていた僅かばかりの風もなくなり、体感温度は一層増した。暑い。
額の汗がつうっと落ちていく。
だというのに、後部座席の男は涼しい顔で外を見ていた。暑さなんぞここにはありませんよ、という顔つきで畑と田んぼばかりの道の景色を見ていた。
1527フロントガラスを通しても尚、眩しすぎる日光は肌をジリジリと焼き、汗を吹き出させる。
襟ぐりのあたりは汗で濡れてグッショリとしていた。
冷房の壊れた車内は蒸し風呂というより走る拷問器具だ。暑くて熱くてたまらない。
信号が赤にかわる。田舎の休日、真昼。交通量なんてこの古びたタクシーくらいな十字路でも、律儀に仕事をしている信号機に義理立てしてブレーキを踏んだ。
窓から得られていた僅かばかりの風もなくなり、体感温度は一層増した。暑い。
額の汗がつうっと落ちていく。
だというのに、後部座席の男は涼しい顔で外を見ていた。暑さなんぞここにはありませんよ、という顔つきで畑と田んぼばかりの道の景色を見ていた。