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    #櫂ミサ

    oarMass

    平岩真砂

    DONE櫂ミサ小説。1年以上かけてようやく完成した。
    櫂君がミサキさんの落とした本を拾うお話
    メッセージ



    「戸倉」

     いつものように本を読みながら店番をしていたミサキは櫂に声をかけられて顔を上げた。
     
     パックを買うのだろうと櫂の言葉を待つが、櫂は何かを言いたそうにミサキをじっと見るだけだった。

    「……何、どうしたの?」

     自分を無言で見てくる櫂がどれだけ待っても何も言いそうにないのでミサキは櫂に要件を言うように促した。

     何か言いたい事がある雰囲気を出しているのに、櫂は言いづらそうに重たい口を開いた。

    「……落とし物をしなかったか?」
    「落とし物? 誰が?」
    「……お前以外に誰がいる」

     今はお前と話しているんだ、と櫂はため息をついた。
    ミサキはムッとしながらも自分の記憶をたどる。が、心当たりはない。

    「記憶にない。私が何を落としたの?」
      
     ミサキが詳細を尋ねると櫂は僅かに顔をしかめて、そして顔を背けてミサキを視界から外して答えた。

    「……本だ」
    「本……?」

     やはり心当たりがないミサキは首を傾げる。
    櫂はミサキに向き直って半睨みで続けた。

    「本当に心当たりはないのか?
     文庫本だ。赤いブックカバーの」
    「赤いブックカバーの、文庫本……」
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