nokibi_aki
DONE狂犬侮るべからず。狂犬侮るべからず。
侮っていた。その言葉が1番しっくりくる。
恋心を騒がしくも何度も繰り返され、はじめこそどうしてやるべきかと思い悩んだ事もあった。男色が少なからず居る事も知っているし、〝例の香水〟の一件で自らの身に降りかかりそうになったゾッとしてしまう出来事もあり、沖田の言葉をどう処理するべきか悩んだ。しかし、狂犬と呼ばれる男が、まるで忠犬のように自分に尻尾を振り懐く…というには少しばかり触れ方が際どい時が在るが、そんなに悪い気はしなかった。と、言うより、少しだけ、心地よかった。あの一件のように、ぞわぞわとした悪寒が走らないあたり、もしかして自分は、だなんて思うようにもなってしまっていた。
しかし前に
1037侮っていた。その言葉が1番しっくりくる。
恋心を騒がしくも何度も繰り返され、はじめこそどうしてやるべきかと思い悩んだ事もあった。男色が少なからず居る事も知っているし、〝例の香水〟の一件で自らの身に降りかかりそうになったゾッとしてしまう出来事もあり、沖田の言葉をどう処理するべきか悩んだ。しかし、狂犬と呼ばれる男が、まるで忠犬のように自分に尻尾を振り懐く…というには少しばかり触れ方が際どい時が在るが、そんなに悪い気はしなかった。と、言うより、少しだけ、心地よかった。あの一件のように、ぞわぞわとした悪寒が走らないあたり、もしかして自分は、だなんて思うようにもなってしまっていた。
しかし前に
shimajun
TRAININGできたらめっちゃ健全だった。現パロ、沖斎、外は大雨。
何も起きないはずがなく──
「恋人は嵐に乗って」 天気予報が大きく外れたくらいで怒りはしない。折りたたみ傘でも携帯しなかった自分が悪いのだと、斎藤はマンションの自宅ドアの前でため息を吐いた。タバコはすっかり湿り切っていたので、本当にため息だけだ。
ガチャリ。
わざわざ施錠を外しドアを開けてくれた沖田に、「すまない」と、無意識に謝罪の言葉が漏れた。出張土産も、ビニールの雨除けの甲斐なくぐっしょりと濡れていて、ほとほと残念な気分になって来る。
今回の出張は斎藤だけだったので、沖田は金曜と土曜と、二人住まいの家を一人で過ごしていたことになる。
二日ぶりに会った沖田は、心なしか嬉しげにも見える。
「お帰りなさい……わ! 随分濡れましたねぇ」
斎藤の荷物を受け取る傍ら、沖田はバスタオルを斎藤に持たせた。スーツはおろか、シャツや下着に至る全てが濡れて肌にぴたりと張り付く感触が甚だ不快で、斎藤はすぐさま洗面所へと飛び込んだ。
1166ガチャリ。
わざわざ施錠を外しドアを開けてくれた沖田に、「すまない」と、無意識に謝罪の言葉が漏れた。出張土産も、ビニールの雨除けの甲斐なくぐっしょりと濡れていて、ほとほと残念な気分になって来る。
今回の出張は斎藤だけだったので、沖田は金曜と土曜と、二人住まいの家を一人で過ごしていたことになる。
二日ぶりに会った沖田は、心なしか嬉しげにも見える。
「お帰りなさい……わ! 随分濡れましたねぇ」
斎藤の荷物を受け取る傍ら、沖田はバスタオルを斎藤に持たせた。スーツはおろか、シャツや下着に至る全てが濡れて肌にぴたりと張り付く感触が甚だ不快で、斎藤はすぐさま洗面所へと飛び込んだ。
shimajun
MOURNING京に在りて、君を思う蛍火 高瀬川で蛍を見た。
つまらない捕物の帰り道に、橋の上から偶然見つけたに過ぎないが、そういえば昔はもっとあちらこちらに蛍が飛んでいたように思う。
屯所が壬生から不動堂村に移る前、何度か近くの川へ蛍を見に行った。
ほんの四半時ほど、じっと小川の岸を覗きこんでいた彼が、ある時一匹の蛍を捕まえてきた。自分の目の前で開かれた掌から小さく光るものがふわりと飛び上がり、彼の単衣に止まってまたゆっくりと川辺に戻っていった。水草のあわいからチラチラと明滅していたかと思えば、いつの間にかそれも見えなくなった。
「綺麗ですね」
「そうだな」
交わした言葉は珍しくそれだけで、彼はその後も静かに川辺を見ていた。
何を思っていたのか今では知る由もないが、あの時蛍の光にぼんやり浮かび上がった彼のぎこちない微笑みを、自分は今でも忘れることが出来ずに居る。
372つまらない捕物の帰り道に、橋の上から偶然見つけたに過ぎないが、そういえば昔はもっとあちらこちらに蛍が飛んでいたように思う。
屯所が壬生から不動堂村に移る前、何度か近くの川へ蛍を見に行った。
ほんの四半時ほど、じっと小川の岸を覗きこんでいた彼が、ある時一匹の蛍を捕まえてきた。自分の目の前で開かれた掌から小さく光るものがふわりと飛び上がり、彼の単衣に止まってまたゆっくりと川辺に戻っていった。水草のあわいからチラチラと明滅していたかと思えば、いつの間にかそれも見えなくなった。
「綺麗ですね」
「そうだな」
交わした言葉は珍しくそれだけで、彼はその後も静かに川辺を見ていた。
何を思っていたのか今では知る由もないが、あの時蛍の光にぼんやり浮かび上がった彼のぎこちない微笑みを、自分は今でも忘れることが出来ずに居る。
shimajun
MAIKING支部の「花と生きる」のおまけ文だったようです。「三千世界の烏を殺し」 山際を掠めるように夜明けの星が輝いている。
花冷えの朝は冬のように寒い。ここには掛け布など無いから互いを抱くことでしか暖は取れないが、それより早々に屯所へ戻り、体を拭いて着替えをすまさねばならなかった。炊事の為に隊士が幾人か起きてくる頃合いである。
斎藤が髪を結い上げ直すのを待って社を出ると、いよいよ空が白んできた。
「……寒いな」
息を白くしながら斎藤が言った。
寒さを好まぬこの男は、朝方にはまるで猫のように長身を丸まらせる。そんな仕草が酷く愛おしくて、沖田はその逞しい背や首根を抱き寄せて眠った。共に朝寝が出来る時はいつもそうしていたのだった。
昨晩は汗ばむほどに火照った体も、今では朝の冷気に熱を奪われて頗る寒い。とろとろと歩いているより、小走りに駆けた方が良さそうである。
348花冷えの朝は冬のように寒い。ここには掛け布など無いから互いを抱くことでしか暖は取れないが、それより早々に屯所へ戻り、体を拭いて着替えをすまさねばならなかった。炊事の為に隊士が幾人か起きてくる頃合いである。
斎藤が髪を結い上げ直すのを待って社を出ると、いよいよ空が白んできた。
「……寒いな」
息を白くしながら斎藤が言った。
寒さを好まぬこの男は、朝方にはまるで猫のように長身を丸まらせる。そんな仕草が酷く愛おしくて、沖田はその逞しい背や首根を抱き寄せて眠った。共に朝寝が出来る時はいつもそうしていたのだった。
昨晩は汗ばむほどに火照った体も、今では朝の冷気に熱を奪われて頗る寒い。とろとろと歩いているより、小走りに駆けた方が良さそうである。
shimajun
MAIKING支部掲載短文集「口実」の夜の話……の書きかけですね
逢引き「——斎藤さん、沖田です」
昼間の宣言通り、沖田は宵闇に紛れて斎藤の居室にやってきた。
開放していた障子が沖田の手でぴたりと閉ざされる様を見ながら、暑くなるだろうな、という最もな懸念が斎藤の頭を過った。何分にも狭い居室なので、真夏であったならば外へ出て草葉の陰ででも興じていたところである。
文机の上に置かれた古めかしい煙管を見て、さては昼間購入したものかと破顔した沖田が斎藤の傍へと歩み寄ってきた。湯浴みをして埃や汗をすっかり流した後の身体は見るからにしっとりとして、髪はまだ濡れたままだ。
「まさか、これに大金を出したんじゃないでしょうね?」
「……ここに龍の彫金があるだろう? 装飾が気に入ってね、値切ってもそれなりの値段はしたさ」
370昼間の宣言通り、沖田は宵闇に紛れて斎藤の居室にやってきた。
開放していた障子が沖田の手でぴたりと閉ざされる様を見ながら、暑くなるだろうな、という最もな懸念が斎藤の頭を過った。何分にも狭い居室なので、真夏であったならば外へ出て草葉の陰ででも興じていたところである。
文机の上に置かれた古めかしい煙管を見て、さては昼間購入したものかと破顔した沖田が斎藤の傍へと歩み寄ってきた。湯浴みをして埃や汗をすっかり流した後の身体は見るからにしっとりとして、髪はまだ濡れたままだ。
「まさか、これに大金を出したんじゃないでしょうね?」
「……ここに龍の彫金があるだろう? 装飾が気に入ってね、値切ってもそれなりの値段はしたさ」
shimajun
MAIKING沖斎。現代?????沖田くんと誰かに嫉妬していた?設定がわかりません。
「自惚れてもいいですか?」「聞いて?」
沖田はいつの間にか斎藤のすぐ側に来ていた。斎藤が物言わずただ息を吸うに留まったのは、沖田が今まさに口を開いて何かを言いかけたからだった。
「あなたの事が好きです」
人好きのする笑顔で、子供のような瑞々しい唇が斎藤に告げたのは、今時にしては真っ直ぐな好意の言葉だった。
そのまま沖田の腕がゆっくりと斎藤の肩口をすべり、己よりも一回り大きな背中を抱きしめれば、困ったのは告白を受けた斎藤の方だった。同性に愛を告げられ、更に懐に入り込まれているのにも関わらず、全く嫌悪感が湧いてこないのだ。
首筋にかかる柔らかい毛先や頬の温もりひとつ、何も嫌なことがない。まるで幼児を胸に抱いているような、そんな清廉とした思いがそこにあった。
1284沖田はいつの間にか斎藤のすぐ側に来ていた。斎藤が物言わずただ息を吸うに留まったのは、沖田が今まさに口を開いて何かを言いかけたからだった。
「あなたの事が好きです」
人好きのする笑顔で、子供のような瑞々しい唇が斎藤に告げたのは、今時にしては真っ直ぐな好意の言葉だった。
そのまま沖田の腕がゆっくりと斎藤の肩口をすべり、己よりも一回り大きな背中を抱きしめれば、困ったのは告白を受けた斎藤の方だった。同性に愛を告げられ、更に懐に入り込まれているのにも関わらず、全く嫌悪感が湧いてこないのだ。
首筋にかかる柔らかい毛先や頬の温もりひとつ、何も嫌なことがない。まるで幼児を胸に抱いているような、そんな清廉とした思いがそこにあった。
pagupagu14
DONE未確認な気持ちの正体/沖(→)斎時(Fate/FGO)前話してた沖→斎時の話です。沖田さんは無自覚のまま恋をして無自覚のまま失恋をします。まあそれは恋と言うには執着的で愛というには汚れすぎて、愛憎とも呼べない、恋でも愛でもない、ただの大きな感情なんでしょうけど。 3