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    asmyan

    DOODLE『特等席』2ページ目
    C翼、ジュニアユース中のお話です。
    メインは若林・翼・岬。
    森崎、石崎、三杉も出てます。カプ要素無しです。
    特等席(2/2)


    「石崎くん」
    「? 三杉か」
     宿舎の玄関先で石崎と三杉は顔を合わせた。
    「翼くんと岬くんと、若林くんの姿が見えないんだが、居場所を知らないかい?」
    「あいつらならまだピッチにいたぜ」
     溜め息混じりの、どこか苛立ったような、諦めたような、なんだかとても複雑な、普段の彼からは想像できないような雰囲気で告げられた三杉は、正直に首を傾げて見せた。
    「どうかしたのか?」
    「別に。ちょっと前に森崎から、若林のヤツが居残り練習してるって聞いてさ。……あいつ、久し振りだってのにムカつくだろ? 文句のひとつでも言ってやろうって思って。で、行ってみたら翼と岬に先越されてた」
    「……」
     そこで彼は、何かを思うように口を噤んだ。そして
    「まあ、翼がなんか言ってくれてたら、おれはそれでいいし。ってことで戻ってきたとこだったんだ」
     と、静かに言った。
    「……若林くんの言うことには、一理あると僕は思うよ」
     三杉の言葉に石崎は気色ばんだ。
    「そりゃそうかも知れねえけどよ! 言い方ってもんがあるだろ、言い方ってもんが! ったく、ヨーロッパがなんぼのもんだよ。おれたちだって日本で必死で戦っ 3982

    asmyan

    DOODLE『特等席』1ページ目
    C翼、ジュニアユース中のお話です。
    メインは若林・翼・岬。
    森崎、石崎、三杉も出てます。カプ要素無しです。
    特等席(1/2)

     練習時間が終わり、選手たちは三々五々フィールドを後にしている。その中でひとり、ぽつんとゴールマウスに立つ影がある。
     彼はキーパーグローブをしっかりと両手に嵌め、リストバンドを適度な圧力で締め直し、ぱん、と気合いを入れるように両手を打ち合わせた。
     おもむろに腰を下ろす。それからゆっくり体を伸ばし始める。練習後のクールダウンというよりも、これからが本番だというように。
     念入りに準備をし、ようやく立ち上がると、片方のゴールポストに近付いて手のひらを当て、それから反対側のポストへ向かい、そこにも手のひらを当てた。仕上げにぴょんと跳び上がりゴールバーを掴んでぶら下がる。右、中央、左。跳び下りて深呼吸。これは彼がゴール前に立つ時のルーティンだ。
     左右の肩を回してほぐし、サッカーボールの入ったカゴを引き寄せる。と、誰かの気配を感じた。
    「若林さん、自主練付き合います!」
    「森崎」
     名前を呼ばれた彼があまりに嬉しそうに笑うので、ついつられて破顔しそうになった若林はトレードマークのキャップを被り直す。
    「俺に構わずさっさとあがれ」
    「いえ、付き合わせて下さい。若林さんの動 6408