櫂 詫人
DONE8/28開催三年生WEBオンリーイベント「三つ数えて駆け出して‼︎」掲載作品潮江文次郎×伊賀崎孫兵
カラーイラスト、4コマ漫画、モノクロイラスト、2P漫画となっております。
第2弾映画できぶっていたカプをやっと描けました。 5
あおば
DONEにんらいの再掲五年生のある日の話
寒い夜 月が高くなり始めた頃、紙に筆を滑らせていた勘右衛門が、しまった、と声を上げた。
「三郎から資料もらうことになってたんだった」
「資料が無いと出来上がらないの?」
布団が擦れる音がして、同室の兵助が振り返ったのを背で感じながら勘右衛門は静かに筆を置いた。
「うーん、ちょっとね、新しく調べるのに時間がかかりそうなやつだから……」
明日までに仕上げたいんだよなと言いながら手元の硯と筆を整えると、小さく息を吐いた。こんな夜遅くに三郎が起きているかは分からないがひとまず部屋の前まで行ってみようと立ち上がる。そして同室に一声かけてから、かた、と部屋の戸を開けた。
「さむっ」
勘右衛門がぶるりと身震いした。ほんの少し開けただけで一気に部屋に入りこんだ冷たい風に、室内にいた兵助も咄嗟に全身を布団に突っ込んだ。まだ起きていた兵助は手元に本を抱えていた。いつもは机に向かって本を読む兵助だったが、今日はあまりの寒さに布団の横に灯りを持ってきており、布団に潜り込んだまま紙を繰っていた。
1544「三郎から資料もらうことになってたんだった」
「資料が無いと出来上がらないの?」
布団が擦れる音がして、同室の兵助が振り返ったのを背で感じながら勘右衛門は静かに筆を置いた。
「うーん、ちょっとね、新しく調べるのに時間がかかりそうなやつだから……」
明日までに仕上げたいんだよなと言いながら手元の硯と筆を整えると、小さく息を吐いた。こんな夜遅くに三郎が起きているかは分からないがひとまず部屋の前まで行ってみようと立ち上がる。そして同室に一声かけてから、かた、と部屋の戸を開けた。
「さむっ」
勘右衛門がぶるりと身震いした。ほんの少し開けただけで一気に部屋に入りこんだ冷たい風に、室内にいた兵助も咄嗟に全身を布団に突っ込んだ。まだ起きていた兵助は手元に本を抱えていた。いつもは机に向かって本を読む兵助だったが、今日はあまりの寒さに布団の横に灯りを持ってきており、布団に潜り込んだまま紙を繰っていた。
あおば
DONEpixivに載せていた双忍小説を加筆修正。冗長な独白が好きな方向け
そうして私を越えて往け なんとなく眠れない夜だった。
同室はとっくに寝入っているというのに、もう半刻もごろごろと寝返りをうっては代わり映えのしない天井の板目を眺め続けている。はぁ、と形だけのため息をつく。一度寝れないと自覚したらもう駄目だった。寝れない。
(こうなったら、いっそ外へ出て気分を変えてこようか)
外の空気を吸うだけでも違うかもしれない。音を立てないようそぉっと戸に手をかけて出た廊下は少し肌寒く、寝着のままで出てきてしまったことを少し後悔した。制服に着替えるかとも考えたが、そんな考えは一瞬で頭から消した。ここで着替えたら絶対寝れなくなる。
ましてや、うっかりその状態でまだ鍛練に出ていた先輩方に出くわすなんてことがあったら最悪だ。それこそ朝まで寝れない。疲れ果てたまま明日の授業に出なければならなくなる。
2177同室はとっくに寝入っているというのに、もう半刻もごろごろと寝返りをうっては代わり映えのしない天井の板目を眺め続けている。はぁ、と形だけのため息をつく。一度寝れないと自覚したらもう駄目だった。寝れない。
(こうなったら、いっそ外へ出て気分を変えてこようか)
外の空気を吸うだけでも違うかもしれない。音を立てないようそぉっと戸に手をかけて出た廊下は少し肌寒く、寝着のままで出てきてしまったことを少し後悔した。制服に着替えるかとも考えたが、そんな考えは一瞬で頭から消した。ここで着替えたら絶対寝れなくなる。
ましてや、うっかりその状態でまだ鍛練に出ていた先輩方に出くわすなんてことがあったら最悪だ。それこそ朝まで寝れない。疲れ果てたまま明日の授業に出なければならなくなる。