「……」
目を開けた、つもりだった。
思うように力が入らず、また意識もはっきりせず、実際にはきっとほんの少し瞼が開いただけ。
それでも彼は裏社会の人間であり、人体を知り化学を知る研究者である。
もっぱら、肩書きは闇医者として通っているが。
彼はゆっくりと呼吸をしながら、周囲の人の気配、此処が何処なのか、おそらく気を失っていた、その直前に何があったのかを考える。
ふと、視界が狭いことに気がついた。瞼が開ききっていないためではなく、視界の右側が見えなかったのだ。右目周辺が何かに覆われている感触があり、それが治療のために巻かれた包帯であることを闇医者である彼は読み取った。
右目に傷を負ったのか。気を失ったのならば、これが原因だろう。
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