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    teasぱんだ

    @nice1923joker

    紅茶とパンダが好き。
    好きなものを好きな時に好きなだけ。
    原ネ申アルカヴェ沼に落ちました。
    APH非公式二次創作アカウント。
    この世に存在する全てのものと関係ありません。
    䊔 固定ハピエン厨
    小説・イラスト初心者です。

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    teasぱんだ

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    5/19🌱🏛️ワンドロお題お借りしました。
    🌱の両親についての妄想が多く入ってます。全年齢です。

    #アルカヴェ
    haikaveh

    ワンドロ【仕事中】【日記】「最近、アルハイゼン書記官の機嫌がいいわね」
     知恵の殿堂で古代建築の図面を漁っているときに聞こえてきた言葉。
    (アルハイゼンが?)
     視線だけでそちらを見て、カーヴェは聴覚に意識を集中する。
    「本を持って執務室でランチをしているのはいつものことだけど、午後の仕事もいつも以上にテキパキと仕事をこなしてるわよね」
    「何かいいことでもあったんじゃない?」
     くすくす笑いながら遠ざかっていく教令院の教官を横目で見送って、本を閉じた。
    (ランチの時間って、ここ最近は毎日弁当を持っていってるけどな)
     数日前、アルハイゼンはランチをカーヴェに作って欲しいと伝えてきた。
     もちろんこんな可愛げがある言い方ではなく、なんだかんだ言い合いみたいなことをした結果そこに着地した。
     理由はわかっている。カーヴェが参考にしているレシピが、どうやら彼の琴線に触れたらしい。味の好みもさることながら、片手で食べられて栄養豊富。肉が中心の弁当にアルハイゼンは夢中になっているのだろう。
    (今日も食材を買っていくか)
     分厚い本を山の一番上に置いて資料を片付けると、カーヴェは知恵の殿堂を後にした。

     グランドバザールに意外な人物の後ろ姿を見つけて駆け寄った。
    「アルハイゼン?」
     まだ仕事中であろう時間帯に、なぜ院外のバザールにいるのか。意外に思って近づくと、果物をカゴいっぱいに買っているところだった。
    「授業は終わったのか」
    「客員教授の授業なら終わったさ。それから知恵の殿堂で調べ物をして、今夜の食材を買いに来たところだ。君の方こそ、まだ仕事中じゃないのか?」
    「先日のスケジュール変更の埋め合わせで、明日は休みになった。ついでに午後も休暇を取ったんだ」
    「えっ。明日休みなのか?」
     カーヴェはそう言いながら手元のカゴの中を見る。
    「もう明日の弁当の材料を買ってしまったじゃないか……まあいいか」
     肩を落とした後に思い出したことがあって、カーヴェは「メラック」と相棒の名前を呼んだ。
    「ピッポ!」
     機械音と共に現れたメラックから一冊のノートを取り出すと、アルハイゼンに見せるようにページを開く。
    「君に聞こうと思ってたんだ。この食材について知らないか? 僕では見当がつかなくて」
     ノートのとあるページ。そこにはレシピが書かれていて、材料の欄の一番下の文字を指さす。
    【アルスキの果物たくさん】
     そう書かれていた。
    「アルスキって何かわかるか? 商人にも聞いたんだがわからないって言われてさ」
     そのノートに目を通してからアルハイゼンは黙り込んで、カーヴェが問いかけようとしたら急に顔を上げた。
    「君、このノートをどこで?」
    「え? あぁ……母さんが残していった箱の中に入ってたんだ。レシピ集のようだけど、ところどころに学術記述のようなものが書かれていて」
     ノートをパラパラとめくったアルハイゼンの口元には薄く笑みが浮かんでいた。
     それに気づいたカーヴェは驚いて、彼の顔をじっと見つめる。このノートは母の箱から見つけた。しかし、文字はカーヴェの母親のものではない。
    (母さんはあんまり料理が得意じゃなかったからな)
     父の方が料理をしている印象が強いほどだ。ただ、彼女も苦手ながらやらなければいけないと思っていたのだろう。このノートは誰かからもらったレシピ本だと思う。
     それを掃除の時にたまたま見つけ、ここ一ヶ月ほど積極的に作っていた。
     手が混みすぎていない簡単なレシピでありながらも味が利かせてあり、母から直接料理を学んだことのないカーヴェも誰かから教わっているように思えて面白かった。
    (だから母さんは僕に残していった箱にこれを入れたのだろうか)
     香辛料や材料などはスメールでしか流通していないものも多い。フォンテーヌに持っていってもあまり活用できないだろう。
    「カーヴェ」
     呼ばれた名前に思考が途切れる。アルハイゼンの方を見ると、さっきの笑みは消え去っていつもと変わらない顔でこちらを見つめていた。
    「どうしたんだ? アルスキの果物っていうのが何かわかったのか?」
     カーヴェの言葉にもう一度アルハイゼンは嬉しそうな顔を見せて、口を開いた。
    「ああ。その果物なら先ほど購入した。材料も家にあるだろう。今日は帰るぞ」
    「え?」
     とっさにアルハイゼンが持っていたカゴを盗み見るが、中に入っているのはデーツやザイトゥン桃などのスメールでよく流通している果物だ。
     どれのことなのかわかっていないカーヴェを連れて、アルハイゼンは足早に僕たちの家に向かった。

    「このレシピで使われている果物はこれだ」
     言いながら差し出されたデーツを受け取る。
    「これ? 乾燥させたデーツじゃないか。確かに料理の彩りに使うことはあるが……これをピタに挟むのか?」
    「好きなものを詰め込んだ料理だからな」
    「え?」
     キッチンのテーブルに広げられたレシピの料理名を指さす。そこには『古代文字及び紋章入門編』と書かれていた。
    「本来料理名を書くべき項目に知論派が読みそうな本のタイトルが書かれていたと思っていたが……まさか君はこれを『好きなものを詰め込んだ』と読んだのか? そりゃあ、知論派の必読書だって学生の頃の君が言っていたタイトルのような気がするけど……」
    「このレシピ本は誰かから譲り受けたものだろう」
     質問に答えずにそう返してくるアルハイゼンの姿にカーヴェは口角を上げる。
    「よくわかったな。母さんが誰かから貰ったレシピ集だと思う。書き方はレシピ本だが、送り主は日記の代わりにしていたみたいだね。今日のご飯記録のようなレシピと、読んだ本のタイトル、それに一言日記が書かれていた」
    「読んだ本か……間違ってはいない。日記には何が書かれていた?」
     自分でノートをめくって読んでいるくせにカーヴェに聞いてくる。その真意が掴めないままカーヴェは答えた。
    「息子の成長記録とか……夫の話とか……。聡明で可愛い息子だが、夫が難しい本を読ませようとしているのが気になるとか?」
     学術家庭においてはよくあることだ。そういうカーヴェも幼い頃に設計図を見ようみまねで書いていたし、絵本のように図面を見ていた。
    「その息子は俺のことだ」
    「……は?」
     アルハイゼンが発した言葉の意味がわからずに聞き返す。
    「今なんて言ったんだ?」
    「そのレシピに書かれている息子は俺のことだ。アルスキの実は俺が幼い頃に好きだった乾燥デーツのことだし、『古代文字及び紋章入門編』は幼い頃に一番よく読んでいた本の名称。つまり俺の好きなものだ」
    「待て。じゃあこの本って……」
    「おそらく、俺の母が書いたものだろう」
    「なんだって!?」
     思わずテーブルに広げられたレシピを見る。ここ一ヶ月ほど、このレシピを参考にしながらアルハイゼンの弁当やご飯を作っていた。アルハイゼンの母からの直伝のレシピで食事を作っていたなんて。
    「ここ最近君が作った弁当は読書をするのに邪魔じゃなく、かつ種類も豊富、そして味付けも好みだった。祖母も料理上手な人だったが、母もそうだったのだろう」
     その口ぶりからしても、両親の記憶があまりないことが推察される。カーヴェは思わず口を閉じた。
    「おおかた、父の仕事中になんとか食事を取らせようと母が試行錯誤した結果だと思う。彼女は面白いことが好きだったらしい。レシピの名前を夫や息子が愛読する本の名前にしたのだろう」
     アルハイゼンは言いながら日記の文字を指先で撫でる。さらに言葉を続けた。
    「それに、因論派だった彼女は歴史や社会は人間の感情の積み重ねだと考えていた。日記をつけるという行為自体に興味をもつのもわかる」
    「そ、うだったのか」
     アルハイゼンの口から両親のことを聞くのは随分久しぶりだ。
     いつかの学生時代、二人で内緒話のように両親について話したのが最後。その時話してくれた内容は、彼の祖母の話の方が多かった。
    「……明日あいてるならちょっと出かけないか。僕も久しぶりに、君と議論がしたい気分だから。弁当でも作ってさ」
     懐かしそうに日記のページをめくるアルハイゼンにそう告げると、グランドバザールで見た時と同じように薄く微笑んだのが見えた。
    「ああ。俺の好きなものばかりにしてくれ」
    「わかってるよ! 入門編じゃなくて基礎編も応用編も必要だろう。今の君の好みに合わせて作ってやるから考えておくといい」
    「それは今後もこのレシピを増やしていくということか?」
    「何かおかしいことでも言ったか?」
    「いや……構わない。実践編から改訂版まで頼む」
    「なんだよそれ!」
     いつものように言い合いをしながら、アルハイゼンと一緒に料理に取りかかった。
     アルハイゼンの父親も彼と同じように片手に手作り弁当を持って本を読んでいたのだろうと思う。
     機嫌のいいアルハイゼンの横顔を見ながら、カーヴェはフォンテーヌの母に感謝した。
    (あれ、でも……どうして母さんがアルハイゼンの母親と親交があったんだろう)
     まさか両親が共に食事をしたことがあるなんて思いもよらず、カーヴェは首を傾げる。いつか知ることになる未来を彼らはまだ知らない。


    End
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