屏風の中の虎部屋に腰掛けて遠目に部屋を彩る屏風を眺めてみたものの別段変わったところはないように見える。
記憶力はいい方ではあると思うのだが寸分違わずその日のままを覚えていられるわけではない。
日頃から仕事で部屋には立ち入っているものの、思えばこいつを迎え入れたあの日以来、じっくりと見るほどの時間はとっていなかった。
絵の一部が剥がれてきている可能性もあるだろうし、気に入って置いたものだ。ちょうどいい機会だと座った姿勢のまま畳の上を膝で擦って屏風の隅に描かれた虎へと近寄った。
……この虎はこんなに大きかったか。
「屏風の虎が動く」という言葉が玄武の脳裏に浮かんだ。
大きくなっているんじゃなく、遠近法か。だんだんとそこから外に出ようと近づいていっているんじゃないか。
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