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    513friday

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    513friday

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    この作品( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=719808 )で、またあら書けたらなと思い、書き始めたけど、作者さまの支部垢が動いてない?っぽくてパロディーの報告も出来な?い?
    じゃあ……ココに……あげてみる?みたいな?

    #またあら
    #腐っちぎり?!

    酒売りとランプの精ランプの精である荒仁は、次なるご主人様を求めていた

    ご主人様の願いを魔法で3つ完遂すれば、己を封印するランプから解放され自らの願いも叶う

    荒仁の願いは「童貞を捨てたい」
    清い身体である事は願いを叶える妖精として重要であるが、思春期の少年のような願いはランプに封印されていれば一生叶わぬ願いであった


    △△
    「まほろちゃん!!」
    白い壁の大きな建物から出てきた1人の少女は昼前のぬるい風に当たり、不機嫌な顔で荒仁を見下ろす

    荒仁は彼女と目が合えば、即座に両腕を上げて「こっちに手を振ってェっ!」と大きく振って見せる

    声が届いているのかいないのか、風に靡く黒髪を耳に掛けながら、無表情にほんの少し手を振り返すまほろはこの国を治める王族の姫だ

    「キャー!!!」
    興奮しながら、彼女が部屋に戻るまで腕を振り続けた荒仁は、その日満足してランプに戻った

    ようやく出会えた、理想のご主人様

    「いつ見ても、なんてキレイで可愛いくて華のある女の子だろう!」
    所謂一目惚れだ
    この街に戻るのは2度目だが、普段は骨董品に紛れて旅をする荒仁
    初めて城下でまほろとランプ越しに出会ったあの時、優しく声を掛けられ、細い指に触れられた事が忘れられない

    今までのご主人様は荒仁がランプの精だと分かるや否や、あらゆる強欲と無理難題を押し付けた
    そして叶えられず捨てられてきた

    彼女はきっとそんな事はしない

    荒仁はどうしても、まほろをご主人様にしたくて奔走し、王宮にまで忍び込んだ

    △△
    黄昏から、月は静かに昇る
    王宮に明かりが点り終わる前に、荒仁はまほろの居る部屋へ行きたかった

    ただただ広い王宮には扉がいくつもある
    どれがまほろの部屋に通ずるのか、開けてみないと分からない

    ひとつ、またひとつと扉を開けては閉める

    「もう!まほろちゃんはどこ?!」
    またひとつ扉を開けた

    そこには清らかな水の流れる音と青々と茂った植物、そして甘い香が焚かれた天蓋のあるベッドがある

    「もしかして、まほろちゃん?!」

    天蓋から降りているカーテンが揺れると、隙間から細く長い手が伸びてきた
    その招く手に引き寄せられ、カーテンを覗けば、荒仁は勢いよく胸ぐらを掴まれ、ベッドに乗り上げた

    そこにはまほろの兄である摩利人が身に纏う物なく荒仁を待ち受けていた

    摩利人は何も言わず、荒仁の服を剥ごうとした

    「ちょ、ちょ、ちょっと、部屋をまっちがえ、ました!!離してください!!」
    「男でも変わんないって、……その白い肌、吸わせてくれるんだろ?」

    荒仁は怯えながら抵抗し続けた
    摩利人もだんだんと冷静になっていく

    「王太の用意した添い寝の女……って感じじゃ、なさそうだな」

    荒仁は首がもげそうになるほど縦に振る

    「なら、最近まほろをつけ狙う賊がいると聞いていたが、それがお前か?」

    荒仁は、まほろに賊だと思われていた事に衝撃を受けた
    「お兄さま、ち、違います!違うんです!ボクは決して悪いモノではありません!!」

    摩利人は荒仁の胸ぐらを掴む力を弛めようとはしない
    「だったら、お前は何者かを言え」

    強い言葉で蹴りつけるように、突き放された

    荒仁は仕方なく、その場でランプに帰ってみせた
    そして顕現する
    「……俺はランプの精、荒仁といいます」
    終わった
    理想のご主人様まで、後一歩だったのに

    「ランプの精?確か、願いを叶えるおとぎ話だったような?」
    摩利人は嗤った

    荒仁は悔し紛れに、シーツを握り潰した

    ならば、と摩利人は願った
    「俺は、死にたくない。この国の為でもあるし、己の為でもある」

    摩利人は、先ほどの圧のある態度を止めて、むしろ弱々しく不安めいた顔をしていた

    ただ荒仁は即刻この空間から立ち去りたかったので、摩利人の願いを聞き入れる

    荒仁は「つまり、死への恐怖を忘れさせればいいのか」と解釈した
    「この荒仁に一言、望むだけで今夜にも、そのいたわしい願いを叶えましょう」

    荒仁は隣国から特別な医術を持った医者を呼んだ
    それから、不安を消す為にたくさんのお酒も用意した
    なんならオマケにと、スピリチュアルな占い師も付けた

    「ほへー、……ホントにアラティンがやったの?」
    いつの間にか、変なアダ名がついているが荒仁は「そうです」とハッキリ答えた

    「わお!ハッタリかと思ったのに、本物じゃん」
    魔法あるじゃん、ワックワク!と、摩利人が驚いている隙に荒仁はベッドを抜け出した


    「まほろちゃんの部屋はどこだー!!」

    △△
    あの晩、結局まほろの部屋は見つからなかった
    おかげで、王宮では荒仁もといランプの大捜索がされている
    「はぁ~……理想のご主人様がぁ……」
    まほろに近づく事がままならなくなった荒仁はおめおめランプの姿で逃げ帰り、今は街をプラプラしているところだ

    「なぁに?仕事が欲しいの、キミ」
    白や紫の高級そうな服装の男に、突然声を掛けられた

    「楽器なんか演奏出来る?出来なくても問題ないけど」
    肩に手を置かれ、その場から逃げにくいようにされる

    「は、はあ……そうっスね、一応?」
    「なら、良かった」

    にこり、と微笑み掛けられたがその笑みに温度はない

    如何にも高飛車そうな男、阿久太郎は恵まれた商才があるものの、人の気持ちを汲み取る事が出来ない性分だった
    何度も仲間に逃げられ、多くの商売敵をはじめ自らの店の者にまで嫌われていた

    仕事の話とは、阿久太郎の持つ宮殿で催される宴に、足りない楽器の奏者を急遽探していた、という

    しぶしぶ阿久太郎に着いていき、宮殿へ

    「じゃあ、後はまかせたよ」
    阿久太郎がその場を立ち去ると、雇われ達はこぞって雇い主の愚痴を争うように言っている


    夜の群青色が深くなってきた
    月は随分と欠けて細い印象を受ける

    荒仁は他の奏者達から渡されるがままハープを持たされた
    ポロン、ポロンと弦をモノマネ同然に弾く

    宴での阿久太郎はイチジクを食べながら、はべらせた踊り子の女達に香りの発つオレンジや丸々としたブドウを切り分けさせている

    けれども阿久太郎と寝る5人の彼女達は金を欲しがるばかり

    彼女達からすれば仕事上当然だが、阿久太郎は虚しさから踊り手の1人にキツく鞭を打った

    すると踊り子達、楽器の奏者、使用人までもが阿久太郎から逃げていった

    後に残っていたのは、日雇いのハープ男だけ
    踊り子が鞭に打たれた瞬間、荒仁は緊張の腹痛で動けなくなっていた
    「(アイツ、ヤベェヤツじゃん!)」
    キリキリと腹が収縮する感覚が止まない
    「(1度ランプに帰ってやり過ごそうか……)」

    阿久太郎は何もなかったように日雇いの荒仁を呼び寄せた
    「誰も居なくなっちゃたから、お酌してよ」
    来るわけない、阿久太郎は信じて疑わなかった

    「どうしたの?お腹痛い?」
    荒仁に柔らかい口調で、緩やかに歩み寄る阿久太郎の表情は欠けた月と変わらない鋭く冷たいモノだ

    「(……もう、無理!)」
    荒仁は腹痛のあまり阿久太郎の目の前でランプに帰ってしまった

    驚いた阿久太郎は、足元に転がるランプを拾い上げる
    そして、すぐさま理解した

    「僕はこの世で金に愛された男」

    ならば、と阿久太郎は願った

    「僕は孤独が恐ろしい。だからこそ金を求める。孤独の苦しみを味わいたくない。孤独を語る者は殺す。叶えられなければ、僕の前から消えてくれ」

    荒仁は顔が青ざめたまま顕現した

    「……俺はランプの精、荒仁、といいます」
    詰んだ
    理想のご主人様まで、また一歩遠退いた

    荒仁は「つまり、孤独への恐怖を忘れさせればいいのか」と解釈した
    「この荒仁に一言、望むだけで今夜にも、その切な願いを叶えましょう」

    青い顔と涙声でランプの精、荒仁はポソと付け足した
    「それでも、アンタは嫌われ者のままだけどな」

    「なんだと?!」

    パチュン、と鞭の一閃が荒仁に向かって放たれた
    荒仁の首から胸に掛けて服が裂け、皮膚に血がにじみ始める
    ランプの精は己の願いを叶えるまで死なない
    だが、ランプに帰らなければ人間の生身同然に傷がつく

    ふらついたが荒仁は倒れなかった

    それが気に食わない阿久太郎は一閃、また一閃と鞭を荒仁にキツく打ちつける

    荒仁の白い肌は、鞭に打たれて血がこぼれ始めた
    「金で奪えなけりゃ、奪い取る。今流れる俺の血こそが、アンタの求めてる真実だ」

    荒仁は痛みで気絶し、ランプに帰った

    また足元に転がるランプを拾い上げ、阿久太郎は憎々しげに外へ放り投げた

    簡単に事は終わったが、阿久太郎のタガはそこで外れた

    それからというもの、孤独が癒えた錯覚に阿久太郎は、周囲の街で大量に奴隷を買っては、誰かへ復讐するかのように毎日鞭を打ち続けた

    まるで皇帝になったかのように

    段々に街で奴隷が足りなくなると、人を雇って奴隷の子供を攫わせてまで鞭を打った

    特に、黒髪で白い肌をした子供は酷い仕打ちにあった

    後日、阿久太郎は奴隷ではない子供にまで手を掛けた罪で、ついに処刑台に立たされた
    その顔は悪魔に騙されたような絶望の表情であった


    △△
    昼に目覚めた荒仁は放り出された先で、またプラプラとしていた

    鞭で酷く打たれたせいで、未だに傷が痛む
    痛みから俯いて歩いていると、人にぶつかってしまった

    「!!」
    ぶつかった相手は、なかなかの大柄でビクともしていなかった
    むしろ、荒仁の方がよろめいて尻餅をついた

    「えーっと、……スミマセンでした?」
    見上げると、ビクともしなかった大柄な男は荒仁をじっと見ていた

    「あらちゃん?」
    大柄な男は、パッと顔を荒仁に近づける

    「やっぱり、あらちゃんじゃん!」
    もしかしなくても、あらちゃんでしょ!と、荒仁の両手を取って立ち上がらせるこの男は、荒仁が願いを叶えられるずにいた1人、真宝だった

    「真宝、お前……」
    どうやら、身なりからして身分は低いまま
    幼少期に出会った頃のまま、世話になっている酒場で酒売りになって暮らしているのだろう

    「変わらないね、あらちゃんは」
    「……身長くらいは伸びてるだろ」

    △△
    真宝と荒仁が出会ったのは、とある礼拝堂だった
    兄の満邦と一緒に真宝は礼拝の時間でもないのに、神に拝んでいた
    そこに、誰かの忘れ物であるかのように置き去りにされたランプがある

    「わあ!ランプ!」
    真宝は満邦の目を盗んでランプを持ち帰った

    真宝は大事にランプを抱えて、その日は眠りについた
    すると翌朝、真宝の寝床に知らない黒髪の白い肌をした子供が立っている

    「俺はランプの精、荒仁!」
    お前の願いはなに?と、顔を赤らめ興奮気味な態度で聞く

    「ランプの、精?……お願い?」
    真宝は、まだ眠い頭で考えた

    「うーん、……オレにはよく分かんないよ、何もないもん。歌も楽器も、踊りもダメ、お酌も下手クソだけど、いちおう、毎日楽しいから」
    「……そうなのか」

    荒仁からすれば肩透かしだった
    それでも、真宝はニコニコとしている

    「それより今日、一緒に遊ぼ?あらじんくん」
    「なんか、その呼び方イヤだな」
    荒仁はランプの精、あだ名などもらった事がなかったが、その時は「あらじんくん」に身体が馴染む気がしなかった

    じゃあ、あーくん?あらじんちゃん?あらちゃん?と、真宝はニコニコと荒仁を何度も呼んだ

    荒仁は「あらちゃん」で手を打ち、その日から街で遊んだり、酒場で一緒に踊りながら大人の男たちに酒を注いだ



    酒場に酒を注ぐ子供が増えたところで、何の違和感もなく夜が更けていく

    あらちゃんは本当に歌が上手!あらちゃんは踊りが上手!と、真宝が日替わりで毎日褒めるので荒仁は素直に、この生活を楽しんでいた

    仕事を終えたある日、真宝は自分の寝床で荒仁と眠りにつこうとしていた

    「そういえば、お願い事って何でもいいの?あらちゃん」
    「ん?おう」

    ランプの精にまかせろ!と、荒仁は幼い胸を張った

    少し考えて、それなら、と幼い真宝は願った

    「今、大事なのは兄ちゃんと、あらちゃんだから」
    真宝は荒仁の両手をとり、包むように握った

    「本当にそれ以外、持ってるモノがないんだよ?お返しなんて出来ないからね?」
    真剣な眼差しから、うるうると涙が沸いてきている

    「……それでもわがままにお願いが叶うなら、ずっと一緒に、……一生、傍に居てほしい」

    それは、荒仁からすれば魔法を使わない願いだった

    「きっと、楽しい人生にするから!」

    だが、真宝の純粋な願いを荒仁は叶えたかった

    「本当か?!俺の人生に責任持てんのか?!」
    荒仁は興奮して顔に熱が集まるのが分かると、恥ずかしくなりランプに帰ってしまった

    「あ、……おやすみなさい、あらちゃん」
    真宝は荒仁のランプを優しく抱きしめながら目をつむった

    「(どうしよう……)」
    荒仁はランプの中で頭を抱えていた
    真宝の願いが、ランプの精ではなく"荒仁"として叶えられる
    それは嬉しい
    だが、魔法を使わずに願いを叶えてもランプから解放されるのか、それが分からなかった

    △△

    翌朝、荒仁が目を覚ますと見知らぬ男の手の中だった

    真宝の願いを叶える話を聞いていたのか、荒仁がランプに戻るのを見ていたのか分からないが、どうやら、真宝の寝ている間にランプは酒場の客に盗まれたらしい


    △△
    「ねぇ、あらちゃん」
    俺がお願いした事、覚えてる?と、真宝は聞いた

    再会してからというもの、真宝と共に荒仁は酒売りとして暮らし始めた

    「……んなの、覚えてねェよ」
    荒仁は、ぶっきらぼうに誤魔化した
    だが、顔に熱が集まっているので、嘘は真宝にバレているかもしれない

    もちろん荒仁はハッキリ覚えているし、幼少時に願いを聞き入れているので、それは現在も有効だ

    「じゃあ、またお願いするね?」
    真宝も少し顔を赤らめているような気がする

    「俺ね、あらちゃんが居なくなってから、本当に凄く落ち込んだよ」
    真宝は続ける

    「この歳になるまで、よく分かってなかったけど……、元々この酒場にいるのだって、両親が居ないからだし、……育ててもらったけど、良い扱いなワケないじゃん?」
    「(子供も、商品だからな。この商売は)」

    「ずっと、歌も楽器も、踊りもダメ、お酌も下手クソ!って、怒られてばっかりだし」
    「(俺と踊った後は、よく呼び出されていたっけ)」

    「今も兄ちゃんは良く笑って、気が利いて、店じゃ人気者。昔から俺に構う時間なんて殆どないから、寂しいばっかりでさ」
    「(俺がランプの精じゃなかったら……)」

    「生きるのが楽しくなくなっちゃってたそんな中で、あらちゃんにまた逢えた」
    「……」


    「お帰り?で良いのかな……また、傍に居てくれる?」

    荒仁はだんだんと込み上げる感情を、なるべく冷静に押さえ込む

    「俺はランプの精、荒仁」
    声が震えて上手く言えているか分からない

    「この荒仁に、一言望むだけ」

    「お前の過去、絶望の恐怖を忘れさせられるとしたらば、ああ、なんという安寧だろう」
    荒仁は身体も手脚も震えてきた

    「憐れむべき寂しさは最期の一夜にして、いま願いを叶えましょう」
    全身は茹でダコのような気分だ

    「フフ、なんだかこっちまで緊張する言い方だね」
    「なんとか言いきったのに笑うなよ!」

    ランプの精、荒仁は"荒仁"として再び真宝の願いを叶える事にした

    △△

    真宝が連れてきた新しく店に参入する荒仁は、身体も色白で滑らか、どこからか花の香りをふわりとさせて歌や踊り、楽器や詩で疲れきった男達に酒を注いでいた

    不思議なことに髭がまったく生えなかった


    日が経てば、店にも慣れ荒仁にも客が付く

    ある夜、荒仁は1人の客のわがままに従い、"踊り子"の姿で愛らしく踊った
    その夜は、いつもより客が盛り上がり、酒がどんどん空っぽになった


    "踊り子"のまま仕事が終わり、荒仁はあくびをした

    「ちょっと、いいだろうか」
    眠たさから真宝の寝床まで一直線、というところに声を掛けられた

    「君と、奥の部屋で話がしたいのだけれど」
    荒仁に"踊り子"を演じさせた客だった
    指に嵌まる鮮やかな石を見せながら、客は荒仁に手を伸ばしてくる

    「お客さん、その"子"は違うから帰ってくれる」
    客の手が荒仁に触れるか触れないかのところで、真宝が割ってはいる
    「用は済んだでしょう?」
    普段の真宝からは想像しない、低く冷たい声と態度だった

    客は不機嫌に舌打ちをしたが素直に帰っていった


    真宝は安堵からため息をついた
    「お客さんがあらちゃんに付いていくから、ヒヤッとしたよ」

    荒仁は、ふざけながら腕輪や耳飾りをチャラチャラ鳴らし、腰をくねらせてみた
    「そんなに俺の"踊り子"がよかったんかな?」

    真宝は、荒仁から目が見えるか見えないかまで、ぎゅうぎゅうと眉間にシワを寄せた
    口も、ぎゅむと引き結ばれる

    「……本当に、"奥の部屋"なんて使わないでね」
    店で働く他の子供は取り分以上の金が必要な事情がそれぞれある

    その為、真宝は「あらちゃんには使ってほしくないから」と釘を刺した

    「お金が欲しいなら、俺が少しくらい……」
    「いや、ランプの精に金は掛からんぞ」
    むしろ、俺が魔法で出してやろう!と、荒仁は鼻で笑った

    「俺の望みは、真宝のお陰でとっくに満たされてる」
    自慢するように胸を張る荒仁

    「俺の望みは、"ランプの精"としてなら願いを叶え続ける人生で、今は"荒仁"として真宝と酒を振舞って踊れたらソレでいいわけ」
    真宝を安心させようと、荒仁は微笑する
    だが、恥ずかしさから荒仁の顔には、熱が集まり始めた

    「誰かに必要とされながら、一生こうやって生きられたらいい、それが望み」
    荒仁の「童貞を捨てたい」は、本来「愛する人を愛したい」という意味合いだった
    数々の叶えた願いの中で、似ていると思った言葉を選んで使っているだけだ

    「だから、ご主人様はわがままじゃないとな!」


    「……俺はあらちゃんに必要とされたい」


    「あらちゃんは俺が必要?」
    「……もちろん」


    二人はどちらともなく「ありがとう、」と言った



    辛いばかりが酒姫の仕事ではない
    ただ、二人なら楽しく過ごせる

    今夜も手をとりあって踊り、酒でお互いに励まして、月を見ながら寝物語を聞かせあった


    △△
    真宝と荒仁は酒場で楽しく踊りながら酒売りをして、3年が経った

    店の者から、時折"踊り子"を用意するよう言われたが、それは真宝と荒仁の気分次第だった



    今日は店を昼から開ける
    街が華やかに飾り付けられ、店周りも人が多く賑やかだ
    その日は国の姫、まほろの嫁入りの日だった

    ランプの精として摩利人から逃げて、3年
    国は隣国との争いを、まほろの嫁入りで停戦する


    「あ、そうか!真宝を王子様にしたら、まほろちゃんと簡単に会えたかも!!」
    街を凱旋する、まほろの嫁入りパレードを見ながら荒仁は叫んだ

    「えー?それは、俺とお姫様は結婚して良いよ!って言ってんのと、おんなじだよ?あらちゃん」
    「前言撤回!!いまのなし!!」

    むぎゅぅ……、と荒仁はショボくれる
    それをおかしく笑う真宝は、いつまでも荒仁と共にあった

    △△
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