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    heki9chanko

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    heki9chanko

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    創作カクテルのために、勢いで書いたSFアヴァリュノエンディング
    お気に入りの死にネタ

    SF死亡√ リュノ視点やっぱり一人にするんじゃなかった。
    敵のせん滅に手こずっていた俺は、急いでアヴァの元に向った。

    今しがた通信機から、アヴァと諜報部員のやりとりが流れてきた。
    『早く逃げろ。俺は自力で脱出する』
    息も絶え絶えにそう告げ、アヴァの通信は遮断された。

    『リュノさん…!!どう、すれば…!!』と
    焦燥しきった諜報部員の声が聞こえる。
    俺は迷わず、「シンヤはこの場を離れて、夜雲達と合流するんだ。俺は、アヴァを迎えにいく」と答えた。
    『でも……』と尚も食い下がろうとする彼を落ち着かせようと、俺は至って冷静な声色で宥める。
    「アヴァ一人くらいなら、俺でも運べるよ。すぐに戻るから、救護の準備をして、待ってて」

    俺が無茶を言ってるのは、バレてるんだろう。
    それでも、彼は耐えて「…分かりました。すぐに、戻ってきてください」と
    言い残した。
    俺は通信機の電源を切って、急いでアヴァの元へ向かった。

    「…ッ」
    走ると敵に刺された脇腹に激痛が走る。
    負傷しすぎた体は軋み、いつものように超加速の能力も使えない。
    それでも俺は足を引きずり、出来る限りの早さで走り続けた。

    激しい戦闘のせいで、ところどころ壁が崩落している。
    その瓦礫に躓きながらも、俺はアヴァの感覚が流れてくるところを目指した。

    (アヴァ…!!アヴァ!!大丈夫か?!今行くから……!!返事をしろ!!!)

    テレパスを送るが、ハッキリとした返答は帰ってこない。
    僅かに流れてくるアヴァの感情は酷く弱々しく、今にも消えてしまいそうだった。
    嫌な予感を振り払うように、俺は前に進み続けた。

    ここに来る前に、アヴァは「すぐに戻ってくる」と約束したんだ。
    「終わったら、どこか行くか?」と、いつもの調子で尋ねてきた。
    俺が「星空を見に行きたい」と答えたら、ふっと笑って「連れて行ってやる」と
    大きな手で、俺の頭を撫でてくれた。

    アヴァが約束を破るはずない。
    いつだって、俺の元に戻ってきてくれたんだもの。
    子供の頃、離れ離れになってしまった後も、アヴァは俺を迎えにきてくれた。
    一人にしないと、何度も俺の手を掴んでくれた。
    アヴァが、俺を置いていくわけがない。

    目の前に瓦礫の壁が立ちふさがる。
    俺は息を切らして、残り香のようなアヴァの気配に意識を集中した。
    この向こうに、いる。
    そう確信した俺は、残された力で瓦礫を退け、小高くなった山を這いつくばって上った。

    登り切って、目に飛び込んできた光景に、俺は絶句した。
    部屋の中央、アヴァは血だらけになって倒れ伏していた。

    「アヴァ…ッッッ!!!!!」

    俺は弾かれたようにアヴァの元にかけよった。
    傷の痛みなどとうに忘れ、その身体を抱きかかえる。

    「アヴァッ!!!しっかりしろ!!!目を・・・ッ、覚ませ!!!」

    うっすらと開かれたアヴァの瞳には、もうすでに光がなかった。
    呼びかけは虚しく建物に木霊し、アヴァの呼吸の音さえ返って来ない。
    俺の目から溢れた涙が、アヴァの頬にポツポツと落ちる。

    『死』という文字が頭に浮かび、ゾクリと背筋に悪寒が走った。
    落ち着けと、自分に言い聞かせる。
    まだそうと決まったわけじゃない。
    そうだ、人口蘇生をしなくちゃ。

    アヴァを寝かせて、俺は急いで心臓マッサージを始めた。
    「逝くな…っ!!!アヴァ…っ!!今、助ける、から…!!」
    何度も、何度も…アヴァの胸を押し続ける。
    耳を胸にあて、鼓動の気配が感じなければ、もう一度繰り返す。

    (お願い…お願いだから、逝くな…!
    逝かないで…っ、戻ってきてよ、アヴァ…!!)
    10回、20回、30回……手の感覚がなくなっても、俺は蘇生を続けた。
    ……しかし、どれだけやっても、アヴァの鼓動が戻ることはなかった。

    「嘘だ…………」
    アヴァに手をついたまま、俺は絶望感に打ちのめされた。

    アヴァの顔を見遣り、その血で汚れた白い肌に、震える手を伸ばす。
    まだ仄かに熱を持つ体。
    けれど、俺の内側に流れてくるものは何もなく、その瞳が俺を見る事もなかった。
    押しとどめていた感情が、俺の中にどっと押し寄せてきた。
    「アヴァぁ…………っ!!!!」
    俺は子供みたいに泣きじゃくって、打ち捨てられたアヴァの手を握ると、
    その胸に縋りついた。
    どれだけ力を込めても、もう握り返されることのない手。
    耳を押し当てても聞こえない心臓の鼓動。
    押し寄せる悲しみは激しく、俺は慟哭を響かせた。

    俺を見てよ。
    『リュノ』って、名前を呼んでよ。
    俺が手を差し出せば、いつだって俺の手を掴んでくれたじゃないか。
    『すぐ戻ってくる』って言ったのに。
    星空を見ようって、約束したのに。

    振動と共に、轟音がどこかで鳴り響いて、現実に引き戻される。
    時限爆弾が作動したのだろうか。
    全てが現実みを失った世界では、それも遠い出来事のように思えた。

    元からアヴァを置いて逃げるつもりはなかった。
    アヴァが死んだとき、俺自身も死んだも同然なんだ。
    アヴァは俺の世界そのものだから。
    アヴァのいない世界に、俺が生きてる居場所はない。

    俺はアヴァの瞳を閉じさせ、その冷たくなった唇に静かに口づけた。
    「……安心してね、アヴァ……一人にしたり、しないから。
    俺はずっと、お前のそばにいるよ……」

    爆発の音がどんどん大きくなっていく中、俺はアヴァを抱きよせ、頬を摺り寄せた。
    子供をあやすみたいに、髪をすき、その背中を撫でる。
    最期まで、アヴァを感じるように。


    ひと際大きな揺れを感じた瞬間、俺の意識は真っ白になって、
    静寂があたりを包み込んだ。

    「…………リュノ」

    凪いだ海のような落ち着いた声が聞こえ、俺はハッと瞼を開けた。
    顔をあげれば、俺の腕の中で、瞳を開いたアヴァがそこにいた。
    さっきまでの痛々しい痕跡は、その顔からは消え、その肌には血色が戻っている。
    「アヴァ…!!生きてたのか……!?」
    死んだかと思ってた。
    「だって、さっきまであんなに冷たく…」と言いかけると、体を起こしたアヴァが俺を抱きしめ返してくれた。
    「俺が死ぬわけないだろ。帰ってくるって約束したんだから」
    頬を撫でられ、アヴァの瞳を覗き込めば、あの自信たっぷりの笑みが視界に映る。
    溢れる感情は止めどなく、うまく言葉にすることができずに、俺は何度も頷いた。
    「ア、…ヴァっは…!約束、守ってくれるっ、て……信じて、た……!!」
    やっとの思いで絞りだした声は、情けないくらいにぐずぐずで。
    咽ぶ俺に、アヴァは呆れたような笑みを浮かべる。
    アヴァは俺の手を掴むと、立ち上がった。
    「星空、見に行きたいんだろ。行こう」
    宵闇に灯る光のような柔らかな眼差しが、俺を見つめている。
    これは幻なんだろうか?
    いや、そんな事どうでもいい。
    この手の温もりは、確かにここにあるんだから。

    俺はその手に力をこめ立ち上がると、涙で濡れた顔でアヴァに笑いかけた。
    「うん…!連れて行ってよ、アヴァ」
    満足げに頷いたアヴァが、俺の手を引いて歩き出す。
    繋いだ手は、もう離れる事はない。
    二人で、どこまでも行こう。
    俺達しか知らない、星空の見える場所へ。
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