「そろそろ俺だけに集中してくれない?」
突然に降ってきた拗ねた声とスマホの画面を覆い隠した手に俺は顔を上げ、唇を尖らせた浮奇と目が合って笑みをこぼした。拗ねているという割には舌足らずで柔らかい声音と、とろんと力の入っていない瞳。
「酔ってるな、浮奇?」
「酔ってるよ。だってふーふーちゃんがずぅっと一人で楽しそうにスマホばっか見てるから。……俺がここにいるのに」
「悪かった。ほら、おいで」
スマホを置いて腕を広げれば、浮奇はワイングラスを片手に持ったまま俺の足の上に乗っかった。腰を抱き寄せて距離を詰め、酔いが回って赤くなった頬にキスを落とす。
「浮奇といるのが当たり前すぎてついリラックスしてしまった。寂しい思いをさせてごめんな?」
1077