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    sayutaba18

    @sayutaba18
    ライハを愛してる女。

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    sayutaba18

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    月組と迷子の女の子。
    女の子視点です!

    #月組
    moonGroup

    ママがいなくなった。
     そのことに気づいた時には、頭がパニックになっちゃって、途端にここがどこかわからなくなっちゃった。大きな公園の横にある、お菓子が売っている場所を眺めていて、このお菓子食べたいなぁ。って手に取ってただけだったのに。
     悲しくなってきて、好きなお菓子も欲しくなくなって、棚へと戻した。お菓子なんかいらないからママに会いたい。そう思ってお菓子コーナーから離れても、知らない道で、余計にここがどこかわかりそうになくて、やっぱりお菓子の場所へと戻ってきた。どこに行っちゃったんだろう。ここで待ってたら、ママは帰ってくるのかな……? それとも、もうママには会えないのかな。
     気持ちがいっぱいになって、涙が溢れそうになる。泣いちゃだめ。泣いてもママは見つからない。お店の人に聞いたらママを探してくれるのかな。でも、誰がお店の人かわからない。

    「ねぇ、もしかしてお母さんを探してるの……?」
    「……っ」
     突然声を掛けられてビックリして振り替えると、真っ黒の髪の毛のお兄ちゃんが、わたしの背と同じくらいまでしゃがんで話しかけてきていた。
     眠そうなとろんとした赤い目が、いい人なのか、悪い人かわからなくて、何も答えられなかった。だってママには知らない人にはお話ししちゃ駄目って言ってたから。
    「おぉ? リッツ、もしかしてその子迷子なの?」
     もう一人、反対側からオレンジの髪の毛のお兄ちゃんが話しかけてきた。こっちのお兄ちゃんはちょっと目付きが悪い。
    「なんかこの辺ずっとウロウロしてたから、気になっちゃってさ~」
    「ふぅん? お母さんはどこ行っちゃったんだ?」
    「わからない……」
     わからないと口に出した途端に、涙が出てきた。今のは言っちゃいけなかったのかもうしれない。はっとして口を押さえてみたけれどもう遅くて、後から後から涙がいっぱい出て、止まらなくなった。
    「あ~あ、月ぴ~泣かせちゃった」
    「えぇ、おれのせい? 参ったな~。よぉ~し、お詫びとしてお兄ちゃんがママを探してきてあげる!」
    「絶対月ぴ~も迷子になるでしょ。月ぴ~はここに居なよ、俺が探してくるから。お母さんはどんな人なの?」
     黒いお兄ちゃんがママの特徴を聞いてきた。教えても大丈夫なのかな……? なんだか悪い人たちには見えなさそうだけど……。
    「それもそうだな。リッツに任せる! じゃあお兄ちゃんが傍にいてあげるから、安心していいぞ~! 一人は心細いしな。 あ、もしかしておれたち怪しい感じ?」
    「そうだね。怪しいかも。俺は朔間凛月ね。こっちは月永レオくん。俺たちアイドルなんだ」
    「あい……どる?」
     アイドルってテレビの中で歌ったり踊ったりしてる人のこと……? お兄ちゃんたち、すごい人なのかな……?
    「そうそう、knightsっていうグループでね。こういう歌唄ってるんだ~」
     リッツと呼ばれたお兄ちゃんが、小さな声で唄ってくれた。あ、その歌聞いたことある。ママがよく聞いてるやつだ。
    「そのおうた、知ってる!」
    「わはは! 小さなお姫様。おれ達がお母さんを見つけるまでエスコートしてあげるから……それなら、信じてくれる?」
    「うん!」
     月ぴ~って呼ばれてたお兄ちゃんが、手を出してくれた。思わずその手を握っちゃった。お姫様って呼ばれたことが嬉しくて、楽しい気持ちでいっぱいになった。
    「じゃあ俺が探してくるから、ここで待っててね~」
    「『王さま』の名にかけて、ここは任せろ~」
     お母さんが着ていた服を教えてあげたら、黒いお兄ちゃんがてくてくと歩いてその場を離れていった。オレンジのお兄ちゃんは、ずっと手を握ってくれていた。
    「お兄ちゃん、王さまなの?」
    「ん~。元『王さま』だけどな! お姫様の前でなら、いつでも『王さま』になれるぞ~?」
    「いつでも王さまなの? お城に住んでるの?」
    「お城には住んでないけど……お姫様のご希望とあらば、今度ご招待するから、会いに来てくれよな!」
     にこにこと笑うオレンジのお兄ちゃんの言ってることはよくわからなかったんだけど、また会えるみたいだったから、嬉しくなった。
    「そうだ! リッツが戻ってくる間、お兄ちゃんがおうたを唄ってあげるから! 知ってる歌があったら一緒に唄ってみて」
     急にオレンジのお兄ちゃんが歌い出した。このおうたは知ってる。わたしが幼稚園で練習したことのあるおうただ。嬉しくなって、一緒に歌い出すと、オレンジのお兄ちゃんが目を細めて、太陽みたいに笑ったから、わたしもなぜか心があったかくなって、嬉しい気持ちになって、楽しくなって、寂しい気持ちも忘れちゃって、まるで魔法みたいだった。

    「こんなところにいたの……!」
    「ママ!」
     おうたに夢中になっていると、ママがあっちの方から黒いお兄ちゃんと走ってきているのが見えた。
    「ほんとに、ご迷惑おかけしてすみませんでした。あなたもあやまりなさい!」
    「ごめんなさい……」
     ママが大きな声でわたしを叱ったから、楽しい気持ちが一瞬にしてなくなっちゃった。悪いことをしたんだもん。当たり前だよね。
    「お母さん、お姫様はおれの歌の練習に付き合ってもらってただけだから、怒らないであげてくださいね。おれだって未だに迷子になってセナとかスオ~によく怒られてるし、わはは!」
    「ほ~んと、笑い事じゃないからね、月ぴ~の場合は。まぁお母さん見つかって良かったね。次からは気をつけなよ~」
     お兄ちゃんたちが、一生懸命なぐさめてくれて嬉しくなったけれど、ママは怒ってるから、怖くて、オレンジのお兄ちゃんの後ろに咄嗟に隠れちゃった。
    「お母さん、おれ達の歌。聞いてくれててありがとうございます。いつか小さなお姫様も連れてライブに来てくださいね。その時は精一杯おもてなしするから!」
     ママに向かってオレンジのお兄ちゃんがニコニコした顔で言うから、ママの怒った顔も、仕方ないって顔に変わって、大きなため息をついた。
    「騎士の名にかけて、それは俺も約束するよ~」
     黒いお兄ちゃんがわたしに小指を出したから、わたしも小指を出してゆびきりげんまんをした。お母さんは「もう……ほんとに……ありがとうございました」と小さくいうだけで、あんまり怒ってないみたいだった。
     お兄ちゃんたちに「バイバイ、ありがとう!」って手を振ったら、二人とも「バイバイ」って手を振ってくれて、ママと無事におうちに帰れた。

     ママとおうちに帰ってから、実はさっきのお兄ちゃんたちはすごい人たちなんだけど、ママも驚いちゃってうまく話しできなかったって言ってた。knightsってアイドルのお歌をいっぱい聞かせてくれたし、テレビも見せてくれた。テレビの中の王さまはとっても格好よくて、黒いお兄ちゃんも全然眠そうじゃなくて、わたしは何回も何回も、そのお歌を唄って踊るアイドルのお兄ちゃんたちを見たし、お歌も覚えた。
     
     絶対、大きくなったらもう一回会いに行くんだもん。それまで待っててね。
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