チョコレートキスバレンタイン犬辻
付き合って間もない頃のバレンタインは隠れてチョコレートを用意したり、当日に二人で限定のチョコレートパフェを食べたりしてイベント気分を盛り上げていたけれど、今年は忙しさも相まって取り寄せたチョコレートを二人で食べるだけのシンプルモードになった。
「辻ちゃん、どれにする? 」
小さなチョコレート達は、どれもとびきりのデコレーションを施され、中に魅力的なガナッシュクリームを秘めている。
「うーん、塩キャラメルにします」
「あ、待って」
チョコレートを摘もうとした辻を制して犬飼が、
「ただ食べるだけじゃつまらないから、お互いの好きなところを一つ言ってから食べようよ」
と提案した。辻は黙ってうなずいたが、上を向いて下を向いて、首をひねっている。
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