恋愛相談「恋愛相談?」
「そう」
「そんな下らないことを相談する為に私を呼び出したのか。しかも進路指導室に」
「おっさんには下らなくても女子高校生にとっては超重大事項なんですう。甘酸っぱい青春的な?」
「大体なんで私なんだ。明らかに人選ミスだろう。その甘酸っぱい青春とやらに的確なアドバイスを送れる面に見えるか?」
「見えない」
「はい相談終了!お疲れ様でした!」
「そこは先生の豊富な人生経験に対する信頼だよ」
エメトセルクが一瞬嬉しそうな顔をする。が、直ぐに真面目な仏頂面に戻った。
「……仕方ない。少しだけだぞ。お前のほろ苦い青春を語り合うことにしよう」
「勝手にフラれた感じにしないで貰えます?」
「で?どういう類いの悩みだ?相手は?」
「……私の方が、その人より歳下だから。子供っぽく見えてるんじゃないかって。」
「ふぅん。3年の奴か。受験もあるだろうし、そういう恋愛事には消極的かも知れない」
「……」
「しかし歳下なんて大したこと問題じゃないだろう。寧ろ喜ぶ男も多いんじゃないのか?」
「そうかなあ」
「大抵は」
「なら、先生は?」
自分の声が少し震えた様な気がして焦る。思った以上に緊張していることを、ここで初めて自覚した。
エメトセルクは少し悩んでいる。
「そこまで気にしたことは無いな。別にいくら離れてようと好きであるなら問題あるまい」
「そっか……」
良かった、と心で付け足した。少なくとも、ちゃんと視界には居られるんだ。ホッとして気が緩む。
「……その男はどういう奴なんだ?」
「結構食いつくね、先生」
「うるさい」
「背が高くて、顔も良くて」
「ふむ」
「素直じゃなくて、誰より優しい人」
「なるほど。概ね分かった。」
何が分かったのかよく分からないが、エメトセルクは何かを決意したように頷く。
「まあでも少しは自信もついたから、今度告白しますね。先生」
「おう、さっさと行ってフラれてこい。そしてまた好きな人が出来たら、そいつを報告しろ。アドバイスはしてやる」
「意外と生徒思いだよね。先生って」
「意外とは余計だ」
相談終わりだな。そう言ってエメトセルクは足早に去っていった。
深呼吸をする。今度とか言ってしまった。絶好のタイミングだったかも知れないのに。もう少しだけ勇気が足りないな。
次こそは、好きだって伝えるから。