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    みはる

    ワンクッションはR18ではない程度の肌色等、R18はR18。あとはその他いろいろ。
    リバ関連のパスワードはキバマクキバを背番号に変換した9文字の数字

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    みはる

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    謎歌回

    夢見るたまご 8暑さが続く今日この頃、ついつい冷たい飲み物ばかり飲んでしまう。
    テーブルの上のアイスミルクティーが入ったマグカップに寄りかかって涼をとっている手のりサイズのお人形みたいに可愛い二匹の生き物はチマとチキだ。
    訳あって親のいないポケモンの卵に、オレと、パートナーのマクワそれぞれの遺伝子が融合して生まれたドラゴンポケモンと人間のハーフ。
    ポケモンの研究機関に許可を貰ってその2匹をオレ達の家で育てている。
    ちなみにオレとマクワは結婚して今はシュートシティに建てた庭付きの家に引っ越して、そこで2匹を育てているのだ。
    マクワに似ている方が、ドラパルトのハーフで名前はチマ。
    オレさまに似ている方がオンバーンのハーフでチキ。
    “ち”いさい“マ”クワのチマと、“ち”いさい“キ”バナのチキ。
    どちらもオレが名付けた。
    今日もチマとチキのゆるゆるな日々を記録していこう。

    8月27日
    チマがクッションをポフポフと叩きながら歌を歌っている。
    「よっといで〜よっといで〜つぎつぎならんだちくわたち〜ばたーがすきなおこげちゃん〜しろみとほしざかな〜」
    何の歌だろう。
    「ほいっちょほいっちょ」
    「ほいほいほっほ」
    チキもやってきて二匹でクッションをツンツンとつつきながら歌に合わせて踊る。
    「よっといで〜よっといで〜みんなはすぐにわすれるけれどぼくたちはおぼえてる〜」
    「きょうこそは〜」
    「きょうは〜おさかなたべられらぁ〜」
    魚を食べたいって歌なのか?
    「ふゆになったらまたいこう〜おいしいおさかながたべるから〜」
    「おさかなだよねぇ〜」
    冬のどこなんだろう。
    「みずのなかにおさかなをみたいねぇ〜おみずのなかにははいれないけど〜」
    「おさかなきらきらきれいだねぇ〜」
    確かに綺麗だよな。
    「あっというまにてんごくにいってしまうかもしれないけれどいっしょにいこう〜」
    「てんごくだもんねぇ〜」
    急に不穏だなぁ。
    「ほいっちょほいっちょ〜」
    「ほいほいほい」
    「とんでった〜おさかながなかまをよんでとんでった〜」
    「ほいほい......ほい」
    ぽす......っとクッションをつつく手が止まり、歌が終わったようだ。
    二匹におやつを食べるか聞いたら口々に「おさかな?」と聞いてきたので、近いうちになと言うとキャッキャと喜んでいた。

    8月28日
    おやつにマクワが用意してくれたポフィンを皆にふるまった。
    すると、チマとチキはその小さな口で一生懸命に齧り付いて、食べ終わる頃には口元にポフィンのかけらを大量に付けていたのでティッシュでポンポンと拭ってやった。ちょっとモモンの実の匂いがした。
    二匹はポフィンが上手く言えなくてポピン、ポピンと繰り返している。
    夜寝る前にもこっそりと練習をしていて、二匹のベッドがらヒソヒソ声でポピン?ポピン......ポピンポピン......ポ......と聞こえてくるのがジワジワと来て、オレたちは寝るまで笑いを堪えていた。

    8月29日
    今日は全員で水辺のバンガローに泊まりにきた。
    ここは1区画毎に結構な広さを有する為、他の宿泊客の姿が見えてもまともに判別出来るのは大型のポケモンくらいという程度に距離がある。
    ので、チマとチキも表に出しておける。
    小屋から伸びる桟橋に立つと湖が眼下に広がって、小魚系の水ポケモンが泳いでいるのがよく見える。
    水面を透かして太陽の明かりが揺れていて、それがまた綺麗だ。
    小屋に荷物を置いて外に出てみる。
    水が苦手なポケモン達は桟橋や、岸に設置したレジャーシートに座って寛ぎだした。
    マクワがシートの上にクーラーボックス等を並べている間、チマとチキを見ているオレは二匹に水切りを教えてみる事にした。
    「まず持ちやすい石を探して一個持ちます」
    「あい!」
    「うい!」
    チマとチキが元気よく返事をする。
    「その石を水面に投げる」
    ブン! ポチャン、と小さい音がして、石は水に沈んでいった。
    「狙ったところより先に投げるようにすると良いかもな」
    「うー......むじゅかしい……」
    「むーん……」
    「おや、水切りですか?」
    セッティングを済ませたマクワがやって来た。
    「マクワもやってみる?」
    「そうですね......あまり自信は有りませんが、やってみたいです」
    マクワは石を手に取って暫く選別した後、湖に投げ入れた。
    石は数回水面を跳ねて遠くまで飛んでいった。
    「おお……」
    「すごい!!」
    「かっこいー!」
    「それほどでも......えへへ」
    もう一度披露してもらい、マクワが見事に水切りを成功させてチマとチキが拍手をする様子を動画に収めた。
    その後しばらく湖を眺めながらのんびりとした後、小屋に戻って夕飯の支度をする。
    朝仕込んで冷凍しておいた魚の切り身をコンロで焼いてから一口大に切り、薬味とタレをかけて丼にする。
    おかずとデザートも用意して、食卓に並べるとチマとチキがおさかなだ!とはしゃぎながら一昨日の歌を歌い出した。
    マクワは歌を聞いて首を傾げていた。
    「何の歌なんですか?」
    「あー......まあ、おさかなの歌だよ」
    「へぇ……?」
    マクワは何一つ分からないという顔で不思議そうにしていたが、チマとチキから早く食べようとせっつかれて席に着くと二人と一緒になって手を合わせた。
    「いただきます!」
    『いただきまーす!』
    小屋の窓越しに見る空は満天の星で、食事の後は皆でずっと夜空を鑑賞していた。

    8月30日
    バンガローから自宅へ帰ってくると、皆昨日ははしゃぎ疲れたのか荷物の片付けもそこそこに家のあちこちでダラダラとしている。
    チマとチキは昨日撮った写真を見て「ちいさいおさかなもいる〜」等言ってキャッキャして遊んでいた。
    そういえば先日の歌はどこから生まれたんだろう。
    オレはソファーに寝転がりながら二匹に聞いてみる。
    「なあ、あの、よっといで〜っていう魚の歌、誰が最初に思いついたんだ?歌詞まで付いてて驚いたよ」
    「えっとねえ......えらいひと!」
    「えらいひと?」
    「そー」
    「キューン!おはなしした!」
    偉い人って何だ?チマかチキのどちらかが適当に考えたか、若しくは分からないと言われるのを想定していたのに、謎が深まってしまう。
    「えらい人はどこにいるんだ?」
    「おいしいおさかなのところ」
    「おいしいおいしい、ギャウ」
    美味しいおさかな?つまり、魚がいるという所、か。
    確かに、このガラルには湖等色々な水場があるが、そこから歌の歌詞が出てきたという事だろうか?しかし“おいしい”とはどういう事だろう。とまあ、答えの出ないことにウンウン頭を悩ませていたら「多分そんなに深い意味はありませんよ」とマクワに言われる。
    「チマもチキも、その歌を聞いたのはいつ頃なんですか?」
    「えっとねぇ、あの、おさかなのおうたねぇ」
    「まいにち、おはなしだよ?」
    「毎日ですか」
    「あい!」
    チマとチキはマクワを見上げてニッコリと笑う。
    マクワもつられてフフフと笑った。
    「なるほど、毎日ですか」
    結局謎は謎のまま残ったのだが、マクワがチマとチキを抱っこして笑っているのを見たらなんかもう、何でもいいかという気になった。

    8月31日
    二匹が磁石のついた釣竿で魚の模型などを釣るおもちゃにハマっている。
    「キュン、ドーナツみたいなかたちのつれた」
    「ドーナツじゃないのもつれたクルルル」
    そばに置いてやったバスケットに釣果がどんどん増えていく。
    しばらく遊んでいて、すべて釣り上げたらしく今度は釣ったものを並べている。
    「このおさかなは?」
    「それはもぎょり」
    「このしかくいのは?」
    「それはぷっぺ」
    何やら釣った獲物に命名している。
    「このおさかなは?」
    「それは......しんじゅ」
    「しんじゅ?」
    「ちかいのいしをもっているから、しんじゅ」
    急に謎の設定が生まれている。
    「じゃあこのかいがらは?」
    「それはでんせつ」
    「でんせつ?」
    「しんかするのさっきのおさかなから」
    「うそだぁ」
    「うそじゃないよ」
    「しんじゅからでんせつに?」
    「うん」
    「じゃあもっとしんかするとなんになるの」
    「くらむちゃうだ、おいしい」
    「伝説のポケモン食べちゃうのかー」
    オレが思わずツッコミを入れると二匹がこちらを向いた。
    「きばなにはこれをあげます」
    チマが釣った獲物から細長い磁石をくれた。
    「これは何なんだ?」
    「えっとね、ちゅーるっていうおやつ」
    「おいしいやつ!」
    「そうかそうか」
    どうやらお腹がすいているようなので、ポケちゅ〜るを二匹にあげた。

    9月1日
    「キューン」
    チマが映画に登場する人魚を見て影響されたのか、人魚が泳ぐように足を動かしながら飛んでいる。
    飛ぶ時だけ幽体のようになる足は、自在に形を変えられるようだ。
    「人魚の真似っこですか?可愛いですね」
    マクワがそう言ってチマにおやつをあげる。
    するとミジュマルが仰向けに泳ぐ時のような飛び方をしたままお菓子を食べようとしてマクワに捕まっていた。
    「咽せちゃうから上向きながらはダメですよ」
    マクワに注意されてシュンとしたチマはチキの隣に座っておやつを食べだした。

    9月2日
    今日はマクワだけジムで仕事の為、チマとチキの面倒を見ている。
    二匹ともマクワがいないのが寂しいのか、朝からずっとオレの足の間や背中にピッタリくっついている。
    休憩中は良いが移動する時に危ないので着ているパーカーのフードに二匹を入れていると、しばらくしたらスピー......くかー……と寝息が聞こえてきてニヤニヤしてしまう。
    夕方、仕事を終えたマクワが帰って来たので二匹が起きないようにそろーっと玄関まで行ってマクワに見せると、マクワは声を抑えて笑いながら二匹を起こさないように頭を撫でているようだ。
    「今日は甘えん坊だったのですか?」
    「おう、朝からずっとオレにくっついてた」
    「それはそれは......あっ」
    マクワが何かに気付いた声を出すのと同時にパーカーの中がもぞりと動く感触がする。
    「起きた?」
    「ふふ......ええ、ただいま、チマ、チキ」
    二匹はマクワに手を伸ばして抱っこをせがんでいるようだ。

    9月3日
    チマとチキはすっかり人間と変わらない食事をしているが、ポケモン用のフードも変わらず食べる事が出来るようだ。
    オレさまは興味本位でドラゴン用のドライフードを齧っている二匹に「それどんな味?」と聞いてみた。
    「キュル?えっとねぇ......ほんのうのあじがする」
    「!?」
    本能の味ってなんなんだ?子供ゆえの適当な話だとは思うが、それにしても予想外すぎる。
    「ほんのうは、えっとねぇ……おいしいの」
    「本能の味」は普通の意味の「美味しい」とは別物な気がするのだが、深入りするとどんな話が飛び出してくるか怖くなってきたのでやめた。

    9月4日 チマとチキは歌を歌うのがとても大好きでよく歌っているが、オリジナルの歌詞はどれも不思議だ。
    今日はまた新しい歌を作り出している。
    「かけら、かけら、げんきのかけら」
    「つぼみ、つぼみ、げんきのつぼみ」
    「ぽかぽかのひにでて、そだてるよ」
    「そだてるよ〜」
    「じかんはかかるけど」
    「あせるなかれー!」
    「つぼみをあつめてぎゅっとして〜」
    「やいてまるめてもいいよー」
    「どこにあるの〜?」
    「ひなただよ〜」
    「どうくつのおくだよ〜」
    「こおりのぬけみち!」
    「てはつなげ〜♪」
    「みぎてをあげれば、みんなともつながれるよ」
    「ひだりてもあげれば、みんなであそべるよ〜」
    「とろとろになるよ♪」
    何やら不思議な歌だった。

    9月5日
    チマとチキを庭で遊ばせていると二匹は落ち葉を沢山集めてなにやら楽しそうにしている。
    「なにしてるんだ?」
    「ふくやさんごっこ!」
    「なるほど、その葉っぱで服を作るんだな?」
    二匹が集めた落ち葉はカラフルな色をしていてとても可愛らしいものだった。
    「うん!できたよ〜!」とチマが一着見せてくれたので見てみると、落ち葉に空いている穴に草や柔らかい茎などを通して繋ぐことで簡単な服ができていた。
    「上手だな、可愛いよ」
    オレが褒めるとチマとチキは顔を見合わせて笑い、お揃いの落ち葉のコートでクルリと回ってみせた。

    9月6日
    今日はマクワと一緒にガラル鉱山へ写真の撮影に来ている。
    「ここの鉱石は、他では見られない特徴があるんですよ」
    坑道を先導しながらマクワが言う。
    なんでも、普通の岩とは違う成分を含んでいるそうだ。
    「例えば......」
    マクワが石壁の一部に連なる白っぽい石を布で覆う。
    布の隙間から覗くと、暗い中で石がぽわんと柔らかい光を出していた。
    「このように、蓄光作用のある鉱石が多く採れます」
    「へえ……」
    マクワが石壁から布を離すと光は失われ、普通の岩の壁に戻った。
    「天然の蓄光塗料のようですね」
    マクワはニコニコしながら洞窟の中の鉱石について解説してくれた。
    撮影が済んで解散する頃に、鉱山のスタッフがお土産にと先程の蓄光する石のかけらを数個くれた。
    観光土産用に丸く研磨されているもので中々可愛らしい。
    研究所にチマとチキを迎えに行き帰宅して、二匹にもあげると興味津々で光に透かしている。
    明るい場所で見ると少しだけ透明感があるのだ。
    「きれー」
    「きらきらしてる!」
    「そうだな、綺麗だな」
    二匹が電気を消した部屋に石を持っていき、部屋の方からおお〜という声が聞こえてくる。
    よほど気に入ったらしく明るい部屋と暗い部屋を行ったり来たりしていた。

    9月7日
    二匹がミニチュアのキッチンで料理ごっこをしている。
    チキがお料理教室の先生みたいになっていた前回と違って、今回作る役はチマだ。
    チマはお鍋に色々なものを入れてグツグツと言いながらかき混ぜるジェスチャーをしている。
    「ちま、これなに?」
    「じゃがいも〜」
    「じゃあこれは?」
    「じゃがいも〜」
    「これも?」
    「それはでんせつのじゃがいも」
    「ぜんぶじゃがいもじゃないよ」
    「ふっふっふ、きづいてしまったね?
    これはね、じゃがいものちからをかりたべつじんげんしんだよ」
    「ほほう、そんなものが」
    どうやら今回は錬金術的なシナリオでもあるのだろうか。
    しかし、べつじんげんしんって何だ......?
    「べつじんげんしんってなに?」
    「いろんなちからをすいとるやつ」
    「すいとるとどうなるの?」
    「ぜんぶじゃがいもになる」
    「えー!?」
    「ふっふっふ、こわいでしょう」
    「じゃあきのうたべたぽてとさらだもべつじんげんしんだ!」
    「ぽてとはべつじんげんしんだよ」
    「ひぇ〜」
    「ふっふっふ」
    「たべるとどうなってしまうのでしょう」
    「えっとね、あじがする」
    「あじがする」
    チマとチキは、う〜んと首を傾げて考える。
    「ふしぎね」
    二匹がオレの方を見ながら声をそろえる。
    「不思議だなぁ〜」
    深夜に帰って来たマクワに錬金術ごっこの一部始終を話したら、仕事疲れで浅くなったツボに刺さったらしく、力無く笑いながら脱力してソファーの上に寝転がってしまった。

    9月8日
    二匹がおやつのマシュマロをセルクルにぎゅっと詰めている。
    どうやらひとつの大きなマシュマロにしたいようだ。
    「キュン、ぎゅうぎゅうになった」
    「ぎゅう〜」
    一生懸命に詰めている姿は可愛い。
    が、ただ詰めただけのマシュマロを出そうとしたら結果は......
    「うわー!」
    「でたー!」
    マシュマロが飛び散る瞬間にマクワが二匹ごと食卓カバーでカポッと覆った。
    カバー内でポヨ〜ンっと跳ね返るマシュマロにチマとチキは大興奮だ。
    「......こういう事になってしまうからマシュマロで遊んではいけません」
    マシュマロの暴走が止まるなりカバーを開けてマクワがチマとチキに説教しているが、二匹は飛び散ったマシュマロを追いかけるという体験の興奮から帰って来れなくなっていて、マクワのお説教など聞いちゃいない。
    大量のマシュマロを抱えて目をキラキラさせている。
    「まちまろとばす!」
    「もっかい!」
    「ダメです」
    「ええ〜!!」
    その後マクワがなぜしてはいけないかを丁寧に伝えていた。
    「食べ物で遊ぶのは良くない事です、今後はいたずらしてはいけませんよ」
    「はーい!」
    マクワの言う事に素直に返事をする二匹だが、その目は先程のセルクルにチラチラ向いていた。
    マクワはそれを見てニッコリ笑うとセルクルを没収し、二匹は愕然とした顔で、集めていたマシュマロをそろりと皿におろすと、テーブルの上でジタバタして駄々をこねた。

    9月9日
    今日はマクワが休みの日で昼も家にいるので、チマとチキも元気いっぱいだ。
    マクワが家に居ると、二匹はマクワとテレビを見ながらキャッキャとはしゃいでいる事が多い。
    今テレビではジュラルドンの特集をしている。
    「じゅらるどんってつよい?」
    「すごくつよい!」
    「どんなふうにつよい?」
    「えっとねくちからびーむがでる!」
    「......まあ、出ますよね」
    「出るなぁ」
    チマとチキを撫でながら二匹の会話に相槌を打つマクワに同意する。
    「てとあしとしっぽからもでる!」
    「ぜんぶいっぺんに!」
    「出ませんよ」
    すかさず否定するマクワの淡々とした言葉にオレは茶を噴きそうになる。
    「え〜でもきょだいかはする?」
    「巨大化は出来ますね」
    「まあキョダイマックスがそれだからな」
    「じゃあじゃあ......」
    「あんまりある事ない事言うとジュラルドンが困ってしまいますよ」
    件のジュラルドンは我関せず日向ぼっこしている。
    「......じゃあ、ちまとちきもきょだいかする?」
    「えっ......」
    マクワが困惑した顔でオレを見た。
    「ん〜......夢はでかい方が良いからな!」
    「キューン!おっきくなりたい!」
    「なる!ギャウ!」
    二匹は棚に置いていたダイマックスバンドをさすさすとさすり出した。
    「おっきくなる〜」
    「なる〜」
    微笑ましく眺めていたら、あろう事かバンドが光り出したのでマクワと二人で慌てて止めに入った。

    9月10日
    二匹がおやつのチーズを食べながら、チーズの歌を作詞していた。
    チマがチーズをかじりながら
    「かくかくしてあたらしくなる」
    と歌詞を作ると、チキもチーズを食べながら
    「かたくまるまって」
    と続ける。
    「けづやよくなる」
    「びかびかひかる」
    「ちーずすきー」
    「すきー」
    サビのところを二人で歌いながらニコニコしている。
    でもチーズを食べると光るとは……まあ、光るな、肌ツヤとか?
    「そうそう、チーズって光るよな」
    「光りませんよ」
    マクワに冷静にツッこまれる。
    チマとチキはチーズをかじりながらオレを見上げた。
    「ちいさいうちからたべるとあたまよくなるよ」
    「かしこくなる」
    「そーなのか〜」
    「だから100にんまえたべる」
    「たべる」
    「おおきくなったらすごいひかる」
    「すごい」
    「光りませんよ」
    マクワが再度ツッこむ。
    「100にんまえ〜たべたら〜」
    「すごくひか〜る〜♪」
    マクワもオレの隣に来て一緒に二匹を見ていたが、とうとう堪えきれなくなったようだ。
    「…………ふふっ……光るかどうかはともかく栄養は豊富ですからね」
    「えいよ?」
    「えいよーはきょだいまっくすする?」
    「キョダイマックスはしません」
    マクワは笑いを堪えながら二匹の頭を撫でる。
    「もう食べ終わったなら歯磨きしてきなさい、お昼寝の時間ですよ」
    「はーい!」
    「はーい!」
    お昼寝中も二匹は寝言でチーズの歌を歌っていた。

    9月11日
    今日はサンドイッチを昼飯に作ることにした。
    二匹もお手伝いすると言ってくれたので、レタスをちぎってもらっているのだが……。
    「チキ、それはレタスじゃなくてキャベツですよ」
    「これきゃべつ?」
    どうやらスープ用のキャベツをレタスと間違えたようだ。
    「どうしてきゃべつとれたすはにてるの?」
    「えっ、それは......」
    「どうしてー?」
    チマのどうして攻撃にマクワがタジタジになっている。
    「ちきわかった!」
    「なあに?」
    「きゃべつはれたすがきんとれしてかたくなったんだぜ!」
    「えー!」
    「きんにくむきむきのれたすのことをきゃべつというのです」
    「むきむきれたす......」
    チキの説明にチマが驚いた顔をしている。
    マクワは黙って二匹を眺めている......
    「面白い発想だな......」
    「乗るな乗るな、オマエが感心しちゃうとツッコミがいなくなる」
    「うーん、なるほど……」
    チマは顎に手を当てて何かを考え始めた。
    「れたすはどのくらいできゃべつになるのでしょう」
    「なんねんもかかる」
    「ながいあいだがんばってつよくなってやっと……」
    チマがレタスとキャベツのかけらを一枚ずつ手に取る。
    そしてそっとふたつともチキに差し出した。
    チキはシャクシャクと音を立ててキャベツとレタスを食べた。
    サンドウィッチとスープは美味しく出来上がった。

    9月12日
    デパートのおもちゃコーナーで、人形用のオプションらしき魔法のステッキだけが入っているセットを見つけた。
    面白そうだからチマとチキの土産に買って二匹に渡してみる。
    「振りながら呪文を唱えて遊ぶんだよ」
    と説明しながら渡してみたら、じゅもん......と呟いて何を言うか思案する二匹。
    しばらくしてチマが閃いた顔でステッキを構えた。
    「ぽわわぁ〜ん」
    なかなか可愛い掛け声じゃないか。
    チキも続いてステッキを構える。
    「ぽわーお〜」
    「ぽわーお!?」
    「ぽわーお!」
    「......それはトリトドンの鳴き声じゃないですか?」
    「トリトドンだなぁ」
    二匹はそれが気に入ったらしく、今度は揃ってステッキを振りながらトリトドンの鳴き真似をしだした。
    楽しそうなのでよしとした。

    9月13日
    今日は肌寒いからか二匹ともドームベッドの中でゴロゴロしている。
    チキはぐうぐう寝息を立てて夢の中、チマはお気に入りのヌオーのぬいぐるみを抱っこしながら小さくきゅー、きゅる〜んと歌うように鳴いている、かわいい。
    二匹の可愛い様子を眺めていたら、マクワも仕事を終えて戻って来た。
    「おかえり」
    「ただいまです」
    チマも気付いて、ちょっと眠そうな顔でニコッと笑ってマクワに手を振る。
    「ふふ、チマもただいま」
    マクワは二匹に小声でただいまと言いながら優しく微笑む。
    「風呂沸かしてあるから入ってきなよ」
    「ではお言葉に甘えて」
    いそいそと風呂に向かうマクワに、一緒に入る?と誘ったらちょっと迷ってる様子だったが、チマとそして起きてきたチキも乗り気だったので全員で入った。

    9月14日
    二匹とも朝から何やら作業をしている。
    何をしているのかと覗き込んだら、テーブルに折り紙を広げて折っている最中だった。
    「……何を折っているんだ?」
    「ふうせん!」
    「ちまといっしょにつくるるる」
    どうやらひとつの風船を共同製作しているようだ。
    二匹で楽しそうに風船を作っているから、微笑ましく見守っていると......
    「このふうせんにはひみつがかくされてるの」
    急に茶番が始まった。
    「ひみつって......まさか!」
    「そう、ふうせんのなかにおこめがはいってる!」
    「おこめ!?」
    「にんげんさんのごはんをたべても、ふうせんからどんどんごはんがでてきてすごいべんり!」
    「すてきっ」
    チキとチマがキャッキャと盛り上がる。
    ......これは、深夜の通販番組のノリか?
    「むだのないかいはつだね!」
    「かくじつにひみつてき!」
    「では、おこめをふうせんからだしてみましょう」
    「わぁ、どきどき......」
    チマが紙風船をフリフリする。
    「どーん!じゃらじゃら!どーん!じゃらじゃら!」
    「わー!」
    チキがペットボトルの蓋を手に、風船から出ているお米を回収するらしきジェスチャーをする。
    ......米の効果音が激しいな。
    「おこめが!すごい!」
    「えいようまんてん!」
    毎度不思議なテンションだが、そんなところも可愛らしい。

    9月15日
    今日の昼食はマクワお手製のハンバーグだった。
    チマとチキが好物にはしゃいでいる。
    「おいち!」
    「おいちい!!」
    「それは良かったです」
    「はんばーぐはどうしてふわふわなの?」
    「パン粉が秘密に関係しているのですよ」
    「すごい!ぱんこ!」
    「ぱんこ!こんぱん!......あれ?」
    「ぱんことこんぱんはなんでにてるの?」
    「似ているのは名前だけですね」
    「ブホッ」
    即座にバッサリと返すマクワのせいでオレは飲んでいた茶が鼻に入って噎せた。
    「こんぱんははんばーくつくるのじょうず?」
    「うーん、上手に作るコンパンもいるかもしれませんね」
    「そこは優しく返すんだなぁ」
    「何ですかキバナさん」
    マクワの妹弟と会う時もだが、子供と話す時のマクワの言動は割と掴みどころが無い。
    だが、そんな所もまあ、オレさまは気に入っているのだ。

    9月16日
    チマとチキが泡風呂をやりたいと言う、どうもドラマで湯船をアワアワにするシーンを見たようだ。
    そんなわけで湯を張った洗面器に泡風呂用のソープを染み込ませたスポンジを沈めて泡立てる。
    「あわあわ〜」
    「あわわわ」
    スポンジを中に置いたまま、二匹をその上に座らせるとちょうどいい感じだ。
    しばらく泡をかき混ぜたりはしゃいでいたが大人しくなり、小声でぱちぱち......と呟いている。
    泡の弾ける音が楽しいらしい。
    「みみをすますとあわのこえがきこえる......」
    チキがそう呟いて瞑想するように目を閉じた。
    「なんていってるのー?」
    「だいせーる......さんわりびき......」
    なぜかスーパーの広告みたいな声を受信している。
    「もしもし、どこのおみせですか......?」
    「がらるぜんぶ」
    「大セールだなそりゃ」
    「ぽけちゅーるは?」
    「はんがく......」
    「わぁ!じゃあ、くっきーは?」
    チキがゆっくりと目を開いて、また閉じる。
    「にまんえん......」
    「えー!?」
    「あわはくっきーだいすきだからたかいんだぜ」
    「たいへん!」
    チマは泡を両手で掬って抱えながらスポンジの上に立ちステップを踏んだ後、泡を掲げた。
    そしてチキもスポンジの上に立ち上がった。
    二匹は洗面器から出て、オレを見上げて満面の笑みだ。
    「おふろだいせいこう!」
    「さんわりびきくっきー!」
    そう言ってハイタッチを求められたので応じる。
    何もかもがよく分からんが可愛いからいいか。


    まあ近況はそんなところだな。

    今二匹は庭に置いてある石の上に並んで座り、他のポケモン達と共に、バクガメスが水入りタライの上で指を鳴らすように滑らせて小さな火花を披露するのを見物している。
    炎技が使えるポケモンが水辺でよくやるあの遊び、東の大陸だとあれを模したファイヤーワークがあるんだよな。
    たしか「センコウハナビ」とか呼ばれるやつだ。
    小さな火花が僅かな時間、夜を照らしてすぐに溶け落ちてゆく。
    どこか寂しくもあるそんな光景を皆がじっと見守っていた。
    オレとマクワも少し離れたところからそれを見届ける。
    たまにはこんな風にしっとりと過ごす時もあるのさ、それじゃあまたな。
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