少女、3年生「あら?カステルさん」
その声に、アタシは顔を上げた。教室の中、傾いた陽射しに、艷やかな黒髪を切りそろえた少女が照らされている。
「リヨンじゃないか」
アタシはその名前を呼んだ。リヨンはニッコリと微笑む。
「もう6時を回っていますよ。委員会のお仕事ですか?」
「ああ、運動会実行委員のね。そう言うリヨンも、生徒会の仕事だろう?副会長様」
「ご明察です」
リヨンは可笑しそうに口元に手を当てて、小首を傾げた。一つ一つの所作の品が良い。本当に、『お嬢様』という言葉がよく似合う。アイールやテネレも『お嬢様』らしいのだけれど(なんでもお家の方が高級官僚だとか)、リヨンとは少し種類が違う気がする。これが、第5都市と中央都市のお国柄の違いだろうか。
2448