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    星名カイ

    @kai40417

    2022年春からKUA通信イラストレーションコース3年次入学しました。こちらには本人の記録のため提出した全ての課題を置いてます。

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    星名カイ

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    知的財産研究、2023年8月提出、A90点。

    個人的に著作権についてはそれなりに勉強していましたが、とくにAI学習にかかわるあたりの情報は抜け落ちていたので、大変勉強になりました。
    YOIのトレパク騒動については、炎上当時非常に疑問を感じてブログに持論をぶちまけたりしていたので、そのときの資料が大変役に立ちました。なんでも買いておくものだなぁ。

    #KUA提出物
    kuaProposal

    知的財産研究 レポートアニメ「ユーリ・オン・アイス」におけるトレパク騒動事例

    (1)
    2016年に放映された株式会社MAPPAの制作アニメ「ユーリ on ICE」およびその特典グッズについて、主に4件の著作権違反を疑う声があった。それぞれ異なる種類の著作権に絡んでいたため関心を持った。

    (2)
    ア)主人公のアパート室内背景が、インテリア・デザイナーのDenis Krasikov氏のデザインと酷似している問題で、Denis氏は制作側にクレジットを要求したが(*1)、MAPPAはDVD1巻発売時に該当場面を差し替えた。その後DVD第3巻、第4巻でDenis氏を美術デザイン協力としてクレジットした(*2)。
    イ)主人公がポールダンスを披露するシーンで、AFPBB Newsの写真をトレースしたとして炎上(*3)。MAPPAはDVD第5巻でAFPBB Newsを制作協力としてクレジットした(*4)。
    ウ)実在のアイスダンススケートペアの演技の一部と同じ動作が使われていたとされ、その演技を放送した放送局に許可を得るべきだと炎上した。MAPPA側の対応はなかった。
    エ)描き下ろしB3タペストリーにて、レンタルタキシード・with a WISHの意匠デザインを盗用しているとして炎上。MAPPAは公式ウェブサイトにてwith a WISHを衣装協力としてクレジットした(*5)。

    (3)
    ア)当該箇所は照明やソファのデザインだけでなくその配置も酷似しており、それらの家具を選びそのように配置した部分が著作物に該当し得る。
    イ)線は一致しておらず、服装や人物の体格・性別や背景も異なるため、写真の複製、翻訳であるとは言い難い(写真の著作権を認める場合には、一部だけでなく、背景も含めた全体のデザインを考慮すべきである)。技のポーズについては、振付師の個性が強く認められる場合には著作権が発生するケースもある。
    ウ)一連の振付が著作物として認められた判決がある(*6)。しかし数秒の短い時間であれば、よほど特殊なポーズでない限り著作権侵害とはみなされないと考えられる。該当場面は細切れに同一ペアの演技を繋ぎ合わせたようにも見え、全体の流れとして振付師の著作権を侵害していると見做される可能性はある。
    エ)デザインが細部まで完全に模倣されているので、衣装デザインに独自性が認められる可能性がある。

    (4)
    当時ネットで優勢だった意見は以下のようなものだった。
    ・Denis氏、ポールダンスのダンサー及び写真家、アイスダンススケートのペア、演技を放送した放送局、レンタルタキシードショップに許可を得るべきである(*7)。
    ・この件について、MAPPAは公式に権利者とアニメのファンに謝罪すべきである。

    (5)
    著作権侵害となるのはア)エ)だと考える。ア)Denis氏はデザイナーであり、自らの創作に対する対価を得る権利がある。イ)ウ)いずれも写真・動画の複製とは言い難いこと、技の独自性については一度公開すれば万人に真似されるのは承知のケースが多く、技の発案者も権利を守る行動を起こしていないため、黙認していると考えられる。なおこの件に放送局は関係ない。エ)実在のデザインに酷似しており、更にアニメの中で数カット使われる扱いでなくグッズに使われている。グッズにおける衣装の役割はアニメ本編に短時間映り込む衣装の重要度よりも高い傾向があり、著作者が正当な対価を得るべきと判断される可能性がある。
    なおファンがMAPPAに謝罪や商品の回収を要求するのは、また別の著作権侵害であると本学生は考える。著作権は財産権であり利害関係のない第三者は何の権利も持たない。特に権利者不在の状態で炎上させた結果、商品回収等利害関係者に損害が出た場合、炎上を起こした第三者には賠償責任があるのではないか。本学生は常々、この点について何故弁護士や専門家が何も言及しないのか不思議に思っている。



    「猫イラスト家紋Tシャツ販売事件」

    (1)
    この係争の争点は大きく分けて以下の3点である。
    ア)原告の猫と海の波を合わせて家紋のようにした意匠に創作性を認めるか否か
    イ)被告のイラストは原告イラストを複製または翻案したものか
    ウ)損害額に返品分を含むか否か、及び使用料率の算定方法

    (2)
    ア)については、著作権法にはどのようなものを独創的、創作性であると見做すか、についての記載はない。このため、原告の意匠に創作性を認めるか否かは、司法の判断による。
    イ)についても、著作権法には複製について「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と書かれているのみであり(*1)、どこまでの類似があれば複製と認めるかについては司法の判断による。
    ウ)についても、使用料金の算定方法および使用料率についての規定はないため、係争時には司法が著作権法114条3項に従い損害の計算をするため必要な書類を請求し、それをもとに算出する。

    (3)
    ア)無人契約機¥enむすび事件(東京地方裁判所平成 平成16年6月25日判決)
    イ)パンダイラスト事件(東京地裁平成31年3⽉13⽇判決 平成30(ワ)27253著作権侵害差⽌等請求事件)

    (4)
    上野達弘、前田哲男は、勁草書房「著作権の類似性判断 ビジュアルアート編」(2021年4月刊行)(*2)の対談において、以下のように意見している。
     ア)1番、3番は類似性あり。
     イ)5番、7番は後ろ足を円形から飛び出しているというところが似ている、裁判所もこれは創作的表現における共通性だと認めている。
     ウ)原告作品への依拠性の度合いが高い場合、類似性が肯定される方向に傾くのではないか。
     エ)15番まで類似とされたことについては、類似性が広めに判断されているような気がする。

    (5)
    1〜16番までに類似性が認められると判断された点を妥当であると考える。
    判決では、1〜8、13〜16番について複製と結論し、9〜12番については翻訳とした。後者はシルエットが原告イラストと異なるため翻訳とされたと思われる。

    とくに家紋やマークのようなイラストの場合、シルエットの違いは一般に見た目の印象の変化を伴うため、大きな違いであるように思われる。しかし判決では丸くなって眠る猫に波やうずまきなどの模様を組み合わせる、という点において、原告の創作性が認められた。実際には丸くなって眠る猫も渦巻きもありふれた素材であり、たとえば「波 マーク」「丸くなる猫 イラスト」などのキーワードで検索をかけると、原告イラストと形が似たイラストは検索にかかる。被告も同様の主張をしており、偶然に似てしまったことが明白な場合にはこのような判決にはならなかったのではないかと推測する。

    しかし被告は原告が使用していた「眠り猫」という呼称を被告のオンラインショップで使用しており、猫の表情や手足の角度など偶然の一致とするには無理がある共通点が多数見られるにもかかわらず、原告の警告を否認し係争に発展した(*3)。このことから司法は被告が原告のイラストを知っており、原告のイラストに故意に依拠して利益を得たと判断したと考えられる。

    刑事裁判においても被告側に原告を害する意思があったか否かが問題になるように、本学生はこの事案が被告に原告のイラストに依拠する意思があったか否かが判決に影響した例ではないかと考える。著作権は著作者の権利を守るための法律であるから、故意の侵害行為に対して原告寄りの判決が下されたことを本学生は支持する。これは偶然に似てしまう事例が今後AIの発展により増加するであろうことを勘案しても重要な観点である。著作権は財産権であるからこそ、偶然似てしまった場合にはすぐに調査を行い誠実に対応して、係争に発展させない工夫も必要ではないだろうか。

    設問1 参考文献
    *1 https://togetter.com/li/1070315 (2023年5月1日閲覧)
    *2 ユーリ on Ice Blu-ray 第3巻、第4巻(販売元 ‏ : ‎ エイベックス・ピクチャーズ)
    *3 https://matome.eternalcollegest.com/post-2148173106725339901 (2023年5月1日閲覧)
    *4 ユーリ on Ice Blu-ray 第5巻(販売元 ‏ : ‎ エイベックス・ピクチャーズ)
    *5 ユーリ on Ice アニメ公式ウェブサイト https://yurionice.com/news/detail.phpid=1045396 (2023年5月1日閲覧)
    *6 大阪地方裁判所第26民事部 平成27年(ワ)第2570号 著作権侵害差止等請求事件
    *7 https://togetter.com/li/1070315 (2023年5月1日閲覧)
     https://matomame.jp/user/mixmio/9eb1adcd77b06a8c7d3f (2023年5月1日閲覧)

    設問2 参考文献
    (*1) 著作権法 第2条15 (2023年5月1日閲覧)
    (*2) 上野達弘・前田哲男「ケース研究 著作権の類似性判断 ビジュアルアート編」勁草書房(2021年)P86-P88
    (*3)平成28年(ワ)第8552号 著作権侵害差止等請求事件 判決文 第3 争点についての当事者の主張 争点2-(2) および (3)

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    星名カイ

    TRAINING知的財産研究、2023年8月提出、A90点。

    個人的に著作権についてはそれなりに勉強していましたが、とくにAI学習にかかわるあたりの情報は抜け落ちていたので、大変勉強になりました。
    YOIのトレパク騒動については、炎上当時非常に疑問を感じてブログに持論をぶちまけたりしていたので、そのときの資料が大変役に立ちました。なんでも買いておくものだなぁ。
    知的財産研究 レポートアニメ「ユーリ・オン・アイス」におけるトレパク騒動事例

    (1)
    2016年に放映された株式会社MAPPAの制作アニメ「ユーリ on ICE」およびその特典グッズについて、主に4件の著作権違反を疑う声があった。それぞれ異なる種類の著作権に絡んでいたため関心を持った。

    (2)
    ア)主人公のアパート室内背景が、インテリア・デザイナーのDenis Krasikov氏のデザインと酷似している問題で、Denis氏は制作側にクレジットを要求したが(*1)、MAPPAはDVD1巻発売時に該当場面を差し替えた。その後DVD第3巻、第4巻でDenis氏を美術デザイン協力としてクレジットした(*2)。
    イ)主人公がポールダンスを披露するシーンで、AFPBB Newsの写真をトレースしたとして炎上(*3)。MAPPAはDVD第5巻でAFPBB Newsを制作協力としてクレジットした(*4)。
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