Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 451

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。ルチとロボット三原則の話。ロボットの破棄に怯えるルチの概念があります。

    ##TF主ルチ

    ロボット三原則 ソファに腰を下ろすと、テレビのリモコンを手に取った。賑やかな音声を流すテレビ番組を、チャンネルボタンの連打でザッピングする。この曜日のこの時間は、特に決まった番組を見ていないのだ。何か面白いものがないかと、特に目的もなく画面を見る。
     しばらくチャンネルを変えると、気になる映像が流れてきた。人間とロボットの関係をまとめた、海外製作のドキュメンタリー番組である。テレビ画面の中には、二足歩行するロボットの姿が映っていた。
     真っ直ぐに画面を見つめたまま、僕はリモコンを横に置く。最近の僕は、この手のドキュメンタリー番組が流れていると、ついつい手を止めて見てしまうのだ。理由はもちろん、ルチアーノの存在である。彼と暮らすようになってからというもの、ロボットと人間の関わりが他人事とは思えなくなったのだ。もっと知りたいと思って、見かける度に見てしまう。
     金属質なロボットの解説が終わると、解説は人型アンドロイドに移っていった。画面の中に映し出されたのは、最新技術を用いた人型ロボットだ。外国のものらしく、その個体は大人びた女性の姿をしている。リアリティのある顔のペイントが、妙に不気味に思えた。
     数々のロボットを映し出しながら、ナレーションは解説を続けていく。古くから人型アンドロイドというのは、人類の憧れだったそうだ。まだ機械的なロボットしかなかった時代から、人々は空想の中で理想のアンドロイドを思い描いていたのだという。有名な映画や小説がいくつか上げられていたが、僕にはあまりピンと来なかった。
     真剣に画面に見入っていると、廊下から足音が聞こえてきた。お風呂に入っていたルチアーノが、リビングへと戻ってきたのだ。彼は僕の隣に歩み寄ると、テレビの画面に視線を向ける。そこに映っていた映像を見て、呆れたような声で言った。
    「また、こんなものを見てるのか。君も飽きないな」
    「ロボットのテレビがついてると、ついつい見ちゃうんだよ。ルチアーノのことを知りたくて」
     僕が答えると、彼は急に黙りこんだ。僕の隣に腰を下ろすと、小さな声で言う。
    「変なこと言うなよ。変態」
     予想外の反応に、僕は口を開けてしまった。思わず視線を向けると、ルチアーノは頬を赤く染めながら俯いている。今の僕の発言は、そんなに恥ずかしいことだったのだろうか。彼の感性が分からなくて、小さく首を捻る。
     そうこうしているうちに、テレビでは昔の映画の紹介が始まっていた。とある小説家が書いた作品に、ロボット工学三原則というものが出てくるのである。それは後の作品に影響を与え、ロボットを描く上での指標になったのだという。そこで定義された内容は、次のようなものだった。

    ①ロボットは人間を傷つけてはならない。また、危険を看過して人間に危害を及ぼしてはならない。
    ②ロボットは第1条に反しない限りで、人間の命令に従わなくてはならない。
    ③ロボットは前掲1条及び2条に反しない限りで、自己を守らねばならない。

     テレビに映し出された文字を見て、僕は口角を上げてしまう。隣に座るロボットの少年は、明らかにこの三原則が適応されていないのだ。簡単に人間に危害を加えるし、人間の言葉になんて従わない。唯一従うのは、彼らが神と呼ぶ存在だけだった。
    「ねえ、ルチアーノ」
    「なんだよ」
     声をかけると、ルチアーノは不機嫌そうな声を返してくる。さっきの僕の言葉を、まだ引きずっているらしい。僕にはよく分からないから、気にせずに話を続けた。
    「ルチアーノって、ロボット三原則は搭載されてないの?」
    「はあ?」
     僕の言葉に、ルチアーノが顔を上げた。大きく口を開けると、呆れたような顔で僕を見る。外見相応にあどけない横顔に、僕は言葉の続きを投げかける。
    「ルチアーノって、身体が機械でできてるんだよね? だったら、ロボット三原則が必要なんじゃないの?」
     次に見せた表情は、ただの間抜け顔ではなかった。会話の相手をからかうような、好戦的な笑みを浮かべている。余裕の態度で僕を見上げると、いつもの甲高い声を返してきた。
    「君は、いったい何を言ってるんだよ。僕は機械の身体を持ってるけど、ロボットなんかじゃないんだぜ。神に造られた、機械生命体の代行者だ。人間に従うんじゃなくて、人間を従えるための存在なんだぜ」
     そう語る彼は、自信満々な表情を浮かべている。当然のことのように言われても、僕にはピンと来なかった。ロボットも機械生命体も、僕からしたら同じように見えるのだ。でも、それは人間の感性だから、彼らにとっては違うものなのだろう。
     首を傾げていると、ルチアーノは不満そうに唇を尖らせた。じっとりとした視線を向けながら、こちらも湿った声で語る。
    「なんだよその顔。君のしてることは、人間とチンパンジーを同等に扱うようなことなんだぞ。分かってるのか」
    「そんなに違うの? それは、確かに嫌かも……」
     そう言われたら、何となく分かるような気がした。生命体と言うくらいだから、機械よりも生命に近いのだろう。とりあえず納得しておく。
     そんな会話をしているうちに、テレビは現代のアンドロイドについて解説を始めていた。SF小説の時代から一世紀の時を経て、現実が空想に追い付きはじめていたのだ。各企業は競うようにアンドロイドを開発し、流暢に会話をする人型アンドロイドの試作機が、イベントなどで展示されているのだ。中には人間そっくりに作られているものもあって、人々を驚かせている。とはいえ、テレビで紹介されるアンドロイドたちには、ルチアーノほどの精巧さはなかった。
    「確かに、ロボットと機械生命体は違うのかもね。テレビで紹介されてるロボットは、ルチアーノみたいに人間そっくりじゃないから」
     僕が呟くと、彼は自慢げに足を組む。ソファが大きく揺れて、僕の身体が斜めになった。慌てて体勢を立て直しながら、隣から響く声を聞く。
    「当たり前だろ。僕は、神に造られた代行者なんだ。人間の作った傀儡とは違うんだぜ」
     最後の解説は、ロボットたちのその後だった。生命がやがて息絶えるように、ロボットにも終わりの時は来る。耐用年数の超過や、新機種への更新を迎えたロボットは、役目を終えて破棄されてしまうのだ。それは部品に分解されて再利用されたり、完全に破壊されて処分されたりする。それが、機械として生を受けたものの寿命なのである。
     画面の中では、二足歩行するロボットが解体されていた。機械的ではあるが、それなりに人に近い構造を持つ、旧型の案内ロボットだった。それは一度廃棄所に積まれた後に、工場に持ち込まれて解体される。身体がバラバラになっていく様子は、どことなく死体の廃棄みたいだった。
     名状しがたい恐怖を感じながら画面を見ていると、不意に腕に何かが触れた。視線を向けると、ルチアーノが額を押し当てている。明らかにテレビから顔を逸らしていた。
    「ルチアーノ?」
     心配になって声をかけるが、返事は返ってこない。背中に触れてみると、その身体は僅かに震えていた。腕を回して身体を包み込むと、彼の耳元で囁いてみる。
    「怖いの?」
    「……別に、怖くなんかないよ」
     言葉とは裏腹に、その声は震えていた。機械生命体なんて言っても、身体の仕組みはロボットと同じなのだ。人間が動物の死を恐れるのと同じで、彼も機械の解体を恐れるのだろう。
    「ごめんね。怖かったよね」
     ルチアーノの身体を引き寄せると、腕の中で包み込んだ。彼の小さな顔が、僕の胸元に埋もれる。空いている手のひらで背中を撫でると、子供の体温が伝わってきた。腕の中からは、くぐもった子供の声が聞こえてくる。
    「だから、怖くないって言ってるだろ」
     彼は強がっているが、怖くないわけがないだろう。誰だって、死を意識することは怖いのだ。いくらルチアーノが神の代行者だと言っても、心がある限りは恐怖から逃れられない。
     ルチアーノの背中を撫でながら、僕は考えていた。彼にとって、普段の任務は負担になっていないのだろうか。いくら種族が違うと言っても、望まない死に触れ続けていれば正気は失われる。彼の人間への態度そのものが、狂気の具現化なのではないだろうか。
     また、恐ろしいことを考えてしまった。損なことを考えるために、ロボットの勉強をしてるわけじゃないのに。思考を頭から追い出すために、僕は大きく首を振った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏💞💞🙏🙏🍆🙏😭😭💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator