いたずら「ねえ、お兄ちゃん。今度はこっちのお店に行かない?」
僕の隣から、甲高い声が聞こえてきた。女の子の出すような、ねっとりと甘い猫撫で声である。言葉が終わらないうちに、ぐいぐいと腕を引っ張られた。
声のした方へ視線を向けると、そこにはルチアーノの姿がある。僕の腕に腕を絡ませて、ご機嫌な笑顔を浮かべていた。にやにやとした笑みはいつもと変わらないが、その格好は普段とは違っている。今日のルチアーノは、水色のワンピースに身を包んでいるのだ。
「待ってよ。本当に、ここに入るの?」
尋ねると、ルチアーノはにやりと笑う。力強く腕を引っ張ると、僕をお店の入り口へと引きずった。
「本当よ。私、新しい髪飾りがほしいもの」
女の子の声を保ったまま、ルチアーノは僕の顔を見る。キラキラと輝く緑の瞳が、真っ直ぐに僕を貫いた。ほんのりとメイクを施した彼の姿は、まるでおませな女の子だ。真正面から見つめられると、倒錯的な姿にドキドキしてしまう。
3699