監🦊(監)の別れ話 モストロ・ラウンジに購買部、休みの日には麓の街の古書店でアルバイトをして貯めたお金のほとんどを、フェローさんに着てもらうための被服費にあてた。この非常識な異世界に飛ばされて早数ヶ月、まとまったお金を遣ったのはその時が初めてだった。
そんなわたしの正面にテーブルを挟んで座るフェローさんは、ふくよかで心地良い秋の風よりずっと憂いのない表情で冷たいアップルティーを嗜んでいる。ストローを咥える時、犬歯がちらっと覗く瞬間が本当に可愛いのに。
「フェローさん、突然別れるなんていったいどういうことですか……?」
「いやあ、悪いがあなたといると息が詰まるんでね。こんな服も俺の趣味じゃない」
「でも、受け取った時はありがとうって言ってたじゃないですか」
1713