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    tuwu_gi

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    tuwu_gi

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    最後のシーン SS
    途中まで書いてたけどもう力尽きたので途中まで公開

    高等部3年以外の生徒は何の話だと次第にザワつき始める。…いつか、3年生のみんなには話さんとなってずっと先延ばしにしてきたツケがここで回ってきたのかと自嘲してしまう。

    僕が説明しようと口を開けると、一ノ瀬先生がそれを制し首を横に振った。

    「さ、一旦うぬらは寮へ戻ると良い。詳しい話はおって伝える。怪我人は寮で治療するように」

    下級生達を全員寮へと戻しに行ってくれた、最初は3年生だけで話せという気遣いだろうか。

    そして少しの沈黙の後、口を開いたのは稲羽やった。

    「何故、私達に隠したのですか」

    責めるような口調ではなく、事実を解き明かそうとしているのだろう。…まぁこの子の性格やし、許せない事も多々あるやろなぁ…

    「稲羽の言う通りだ、記憶を変えた事などはどうでもいい。…何故、言わなかったんだ」

    次に口を開いたのは紡やった。少し怒ったような表情の紡に申し訳ないという気持ちが募る。

    「……學園長からの指示やったんよ。皆の記憶を変えて、隠して…この事が公になれば學園の評判はおろか、助けに行こうとする子達が出るから二次被害に繋がる…言うてな。」

    そう僕が答えると何人かの表情が曇る。何故學園長がこのような指示を出したのか、助けられるのなら助けに行った方がいいのではないか、何人かは小声で話し始めた。

    「今回起きた襲撃事件に関わっていた…ドーマンの斑文を持つ者達と関係があるの?」

    周りが騒ぐ中そう声を発したのは瑠海だ。その問い掛けに僕は頷く。

    「そうや、連れ去られた子や唆されて着いて行った子らは皆敵さんの本拠地に居る…と見てるらしくてな。…生死は、正直僕にはわからん。」

    「…どういう事です?」

    「…助ける為と指示されたけど、僕自身では皆の安否はわからん。僕が結界を貼り始めた12の時からずっと隠してきたことやから……どれだけの子らが生き残ってるか…僕にも、わからん。…僕かて、助ける為やと了承したけれど…結局、見殺しにしてることには変わりない…助けられたかもしれへんものを、助けなかったことは事実や」

    この5年間、僕はずっとこの事実を隠してきた。最初は、助けたかっただけだ。それで居なくなった人達を助けられるなら…そう、思ったから。

    だがそれは次第に重荷となって僕にのしかかった。何人もの生徒を見殺しにして、助けられるかも保証もないのに、嘘をついて、騙して、隠した。

    そう僕が俯いていると戻ってきた一ノ瀬先生と白咲先生が僕の前へと出る。

    「まぁ待て、うぬ1人の責任では無い。儂も皐月もその件については知っておった。…知っておって尚、浅葱に背負わせてしまった。うぬという子供に任せてしまった儂ら大人の責任じゃ」

    「アンタだけが悪いなんて話は無いよ。…むしろ、悪いのはこっちさ。教師という立場にありながら教え子も助けられないんだからね」

    一ノ瀬先生は深々と皆へと頭を下げる。白咲先生もそれに続けていた。…先生達は悪くない、あの時僕を庇ってくれたんはこの人らなのに…

    「ま、待て待て先生方!確かに隠されていた事はあまり気分は良くない、だが…そもそも指示を出したのは學園長なのだろう?ならば頭を下げるべきは先生方でも、勿論一条でも無い筈だ」

    頭を下げる教師達に大門が慌てて2人の頭を上げさせる。

    指示を出したのは學園長、それもそうだが僕以外の生徒はそもそも學園長に会ったことがない。

    今までの行事全て代理を立てていたからか、もう何年もこの學園に通っているというのに一度も皆の前へ姿を表さなかった。ワタシは忙しいから、等と言って僕への要件もいつも手短に済ますような人だ。

    「…話を戻しますが、隠した理由はそれが全てですか?」

    「俺達を頼らなかった理由も聞きたいね、仲良くなったと思っていたのにそんなに俺達には信用がかかったのかな」

    稲羽とシモン先輩がそれぞれ問い掛けてきた。僕は俯きながら答える。

    「…背負うんやったら、僕一人でええやろ…って思ってな。助けたくても助けに行けない、何度も歯痒い思いをしなきゃいけない…大事な友達ですら、探しにも行けない…そんな思いを、させたくなかった…それを僕が助けてなんて口が裂けても言えへんやろ。」

    「…そうですか。…一条さん」

    僕が答えると稲羽は僕のすぐ近くまで来て、僕の顔を上げさせる。殴られたり、怒られたりするんやろか…病み上がりやから加減はして欲しいんやけど…

    「一人で背負わせて、ごめんなさい。」

    そう思っていたのに、稲羽からは思いがけない言葉がかけられる。…なんで、謝るんや。悪いのは僕で、全部僕が…

    ぽかん、と呆けていると紅緑が傍まで近寄ってきて僕の額を思い切り指で弾いた。

    「ぃ、っ…な、何すんねん!」

    「それはこっちのセリフだってのバーーーカ!アンタはいつもそうやって1人で何とかすればいいっつって俺らの事頼んねぇけどそういうの本当やめて欲しいんだけど!」

    「…ぇ、」

    紅緑から怒られたのは初めてで、思わず驚いてしまう。紅緑は半ば僕の胸倉を掴むようにして自分の方へと顔を向けさせる。

    「しんどいならしんどいって言えよ!1人じゃ抱えらんねぇなら俺らにだって分けりゃ良かっただろ!俺らは!!アンタに守られなくたっていいんだよ!!」

    「…紅、緑…」

    「…俺は、ずっとアンタの事心配してたよ。中学ん時からずっと。でもアンタはその頃から全部1人で何とかしようとしてた、辛いとか苦しいとか、全部教えてくれなかった。…俺は、アンタが倒れた時傍にいれなかった。…嫌なんだよ、いい加減…」

    「……ごめん」

    「つかそもそも俺以外の奴にアンタがそんな顔させられてんのも腹立つんだよ!!」

    紅緑の怒声に驚いて肩が跳ねる。…が、今の状況で怒るところはそこなのか…と呆れた顔をしてしまった。

    「そ、そうなん…?」

    「そうだよ!色んな奴らに良いようにされて、挙句の果てに全部背負われて守られてたとか…ほんと、ムカつく…」

    「紅緑…」

    「今度隠したらマジで許さねぇから。…俺が居ないところで、アンタになんかあったら…嫌なんだよ…」

    紅緑が僕の肩に顔を埋める。…紅緑の気持ちには薄々気付いてた、けど…気付かない振りをしていた。認めてしまったら、もう僕は1人じゃ立てなくなるような気がして。

    「紅緑に全部言われてもうたけど、俺だって浅葱の事凄い心配しとったんよ。…ちゃんと、頼って欲しかった」

    「ひなた…」

    紅緑は僕を心配してくれる、稲羽には1人で背負わせてごめんなさいと謝られた。シモン先輩にはどうして頼らなかったと言われた、ひなたには頼って欲しかったと言われた。…誰も、僕を責める人はいなかった。

    もしかしたら僕は責めて欲しかったのかもしれない、悪者になれれば楽だと思ったから。…もう、一人で何とかしようなんて、思わなくてもいいのかもしれない。

    「…ぁ、の…紅緑、皆───────…」

    「感動のお話中失礼するよ〜、おやここにいるのはキミ達高等部三年生だけか。」

    僕が皆に言おうとした瞬間、後ろの方から声が聞こえる。全員が声がした方を見ればそこに立っていたのは今まで表舞台に出てこなかった學園長その人だった。

    「………随分と遅い登場じゃの、今まで何をしておった?」

    「いやいや、そう怖い顔をしないでくださいよセンセ?まぁでも、登場が遅くなってしまったことには謝罪をしないといけないね。キミ達が無事そうで何よりだ。」

    目を隠しているので口元しか見えないが、それが本心なのかもわからない相変わらず胡散臭い男だった。

    「…何しに来はったんです」

    「そりゃぁ大事な生徒達に何かあったんだから心配して駆けつけたんじゃないか。とは言っても少々来るのが遅れてしまったがね、ワタシも忙しいのさ」

    今回の襲撃事件、この人はどこまで知っているのか…そもそもここ1ヶ月以上僕はこの人の姿を見ていない。暗躍でもしていたのか…?

    そんな中つかつかと足音を立てて學園長に近付く者がいた。

    「初めまして。貴方が、學園長ですか?」

    「うん?あぁ、そうだとも」

    近付いたのは稲羽だった。何をする気だと僕が見ていたらまるで問診かのように1つずつ質問をしていく。

    「そうですか。では、貴方は今回の件どこまで知っていたのですか?」

    「うーん、終わったことだし言ってもいいかな。ま、大体は」

    「では、どれだけの負担が一条さんにかかるかはわかっていましたか?」

    「彼が望んだことなんだからワタシが知る由もないよ。そもそも、ワタシは命令したつもりはない。彼がやると言ったからお願いした迄だよ」

    「…それが、当時まだ12歳の子供だとしてもですか」

    「年齢の話なんて関係あるのかい?たまたま話を聞いた彼が、たまたまやると言った迄のこと。ワタシを悪者にしないで欲しいなぁ。ねぇ、そうだろう?一条君」

    …確かに、あの時命令はされていない。さっきは指示と言ったがやると決めて、言ったのは僕だ。それで皆を守れるならと…そう言ったのは、僕だ。だから呪いを受けたのも結界によって消耗するのも全て自己責任…そう言いたいのだろうか。

    「そうですか」

    そう言うと同時に思い切り拳を振りかざし學園長に殴りかかる稲羽。だがその拳は届くことなくスレスレで止まっている。…いや、止められていた。

    「……おやまぁ、随分と激しいお嬢さんだね。何か気に障ることでもあったかな」

    「それもわかりませんか」

    表情一つ変えずに涼しい顔で學園長は言う。だが稲羽は拳が軋もうとも止めようとはしなかった。

    「いっ、稲羽…僕平気やから…」

    「平気という言葉を辞書で引いた方がいいですよ」

    「僕は大丈夫やから…!」

    「貴方の大丈夫は信用ならない」

    「そんな…!」

    「それはそう」

    「紅緑!?」

    このままでは稲羽の拳の方が危ないと最早縋るようにして止めに入る。本当に渋々と言った様子で離れたがまた殴りかかったので半ば腰にしがみつくようにして止めた。
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