フェイスはどうしてこんなことでと馬鹿馬鹿しく思いながらも、実に深刻に悩んでいた。その内容は。
ブラッドと唇にキスをしたい、だった。
頬や額には幼いころを想起させるように、しょっちゅうしている。業務に厳しい彼だからこそ、業務時間外をわざわざ作って、家族なのだから挨拶程度として軽いキスを貰っていた。むしろ大人の男に対してするには過剰な挨拶ではないかとすら思う。それで、なぜ、唇にはしてこないのだろうか。家族だからだろうか。
いや、劣情のある好きを抱いていると、フェイスはブラッドに胸の内を告白して、ブラッドもそれを受けたはずだった。そのはずだとフェイスは認識していたが。
「ブラッドって俺のことどう思ってるのかな」
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