ファウヒス【ファウがヒスを撫でてるだけ】 渋るヒースクリフを相手に有無を言わせないといった圧をかけては、ファウストは相手の後頭部をしっかりと抱きしめると同時に己の豊満的な谷間に顔を埋めさせた。
縦線セーターの布生地で鼻を塞がれたのか、「ふごっ…」と息が詰まりかけたような間抜けな声が下から聞こえたのにファウストは静かに口角を持ち上げる。
男なら一度は夢見るであろう美女の胸の谷間に顔を埋める行為を初めて体験させた時もそうだったが、息苦しいだけだから止めろと拒否するばかりで、顔を真っ赤にするといった純情そうな反応は一度も見たことがない。実は慣れているのか、単にそこまで興味がないのか。
不特定の異性を前にしても動じないところは高評価で見ているが、今みたいな状況こそ可愛らしい反応を少しは見せていいんじゃないかといった気持ちはないと言えば嘘になる。
丁寧な手入れを好まない彼の髪に艶はなく、後頭部を撫でるたびにゴワゴワしたのが手のひらに伝わる。
そんな肌触りを気にしていないどころがファウストは何度も後頭部を撫でたり、耳や首筋などへあちこち細い指を滑らせたりと密かに楽しんでいるらしい。
「ヒースクリフさん。相変わらず、ここを撫でられるとすぐ鳥肌が立ちますね」
「ん、なこと…ねぇ…んっ…」
「それにしては、声が上擦ってるように聞こえました」
ファウストが指摘した通り、ヒースクリフの首筋に残る古傷を指で繰り返しなぞられると簡単に鳥肌が立ってしまうようだ。
傷がある部分は周囲の皮膚より薄く、過敏に反応を拾いやすいと言われている。
つまり、傷だらけなヒースクリフは下手するとそこらの人間よりも敏感な説があるともいえる。
囚人の中で腕力に優れているはずのヒースクリフがこの細い腕から逃れていないどころが、たった二つの手だけで翻弄されている。
ファウストの白い頬に赤みを帯びていく。