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    hachi_eight888

    @hachi_eight888
    基本的に色塗りに行く前に力尽きたものばかりなので白いです。あと雑。

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    hachi_eight888

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    ふぉろわさんがツイートした「何かの事件に巻き込まれて刑事とか探偵に『お二人の関係は?』って聞かれるじょーさや」が好きだったので書きたいとこだけ書いた。書きたいとこだけ書いたので実際の捜査がどんな様子かなんか知らないよ!!!

    おかしな二人 事件があったと通報があったのは、駅前からほど近いホテルの最上階にあるレストランだった。
     支配人に案内され、所轄の刑事たちが事件現場に向かうと、既に客たちが落ち着かない様子で警察の到着を待っていた。

    「――このように我々警察にあれこれ聞かれるというのも、あまりいい気持ちはしないと思います。ただ、なにせ決まりなものでして……」

     捜査のたび口にするお決まりの言い訳を今回も言いながら、刑事はこれから自分が話を聞く相手たちをそっと見回す。
     彼が話を聞く相手は、レストランで食事をしていた客たちの中でも事件があったテーブルのそばにいた食事客四組。六十代半ばの男女と二十代前半ぐらいの男女がそれぞれ一組ずつ。あとは三十代半ばの女性二人。そして五~六十代の男性と、その連れと思しき若い女性。
     手始めに六十代半ば頃の男女二人組に話を聞くと、まずは男性の方から名乗られた。それに続けて女性の方も「妻です」と軽く会釈をする。どうやら夫婦らしい。二人の関係を尋ねる手間が省けたなと、妻の薬指に光るリングを見ながら刑事は考える。
    「お二人は今日はここにご宿泊で?」
    「いえ、私たちはただ食事をしに来ただけです。家からそう遠くないですし」
    と夫がいうと、妻の方も
    「先日、結婚記念日だったので折角だからここでお祝いをしようと……」と続ける。
    「なるほど」
     二人の名前を手帳に書きつけながら刑事は頷いた。駅前にいくつかあるホテルの中でもこのホテルはいわゆる「ハイクラスホテル」に分類される方のホテルだ。年に一度の記念日を祝うのには相応しい場所だろう――今回このような事件に巻き込まれてしまったのは残念というしかないが。
     その他、事件発生時に何か不審なものは見なかったか等、決まりごとのような質問を二、三した後、刑事は夫婦を解放した。
     次に話を聞いたのは三十代半ばの女性二人組だった。先ほどの夫婦とは違い、彼女たちはこのホテルに宿泊もしているらしい。食事をしに来たにしては、手持ちのバッグがあまりに小ぶりすぎる印象があったが、おそらく主な荷物は部屋に置いてきているのだなと刑事は合点する。こちらの二人にも、夫婦と似たような質問をした後「後ほどお伺いするかもしれないので」と宿泊している部屋番号も教えてもらう。
     そして、先ほどからそわそわと落ち着かない五~六十代の男性と若い女性。それぞれから名前を聞いた後「お二人はどういったご関係で?」と尋ねると、男性から食い気味に「知人ですよ」と返された。表情を崩さないよう意識しながら刑事は「わかりました」と頷く。女性が男性の腕にべったりと絡みついているその様は、とても「知人」には見えませんが、と心の中で呟きながら。
    「お二人は、こちらのホテルにご宿泊で?」
    「……そうですが」
    「では、念のために部屋番号もお教えいただけますか? もしこの後、聞きたいことがあったときのために……他の宿泊客にも部屋番号を聞いているので、ご協力お願いします」
     この質問に、男性は明らかに苦い顔をしながら渋々答える。
     「……1505号室です」
     知人といいつつ、部屋はひとつなんですねという言葉を刑事は飲み込んだ。

     さて、聞き込み対象、最後の一組である。先ほどの年の差カップル、もとい「知人」とは違い、こちらは二人とも二十代前半といったところか。今まで話を聞いてきたペアの中で平均年齢が一番若いのは間違いなくこの二人だろう。「真面目」を絵に描いたような青年と、長い髪が印象的な美人である。最初に話を聞いた夫婦とは違い、結婚指輪の類はしていないようなので、夫婦というよりは恋人だろうか。
    「長々とお時間をとらせてしまって申し訳ありません。まずはお名前からお聞きしてもいいですか?」
    「田中譲二です」
    「三好紗耶です」
     やはり、夫婦ではなかったのだなと納得しながら刑事は更に続ける。
    「お二人はどういったご関係で……」
    「えっ」
    「えっ」
     困惑する男女。何か言えないような関係なのだろうか。もしかして不倫カップルなのだろうか。いや、不倫カップルならまだ良い。よからぬ取引を企てている男女だとしたら? 第二の事件の可能性を感じ取り、微かな緊張感が刑事の背中を駆け抜ける。
    「たとえば、ご兄妹とか、ご友じn……」
    「いえ、違います」
    「ご友人」の単語を皆まで言わせぬ勢いで女性が答える。
    「失礼しました。では恋人でいらっしゃる……?」
    「そんな滅相もない」今度は男性が答える。
     滅相もないってなんなんだ。刑事は思わず心の中でツッコミを入れた。確かに目の前の女性は美人といって差し支えない容姿である。こんな美人と恋人同士だなんて滅相もないという意味だろうか。男性の様子を見る限り、軽いノリで言ったというよりは本気で恐縮しているようである。
    「ではお仕事仲間?」
     もしもよからぬ取引の相手ということであれば「仕事仲間です」とでも誤魔化すのが妥当であろうか。返答するときの彼らの態度を観察すべく、それとなく視線を向けると、二人はこてんと首を傾げた。
    「仕事仲間というわけでは……」と女性。「ないですね……」続ける男性。
     何故自分はこんなところで「クイズ! 二人の関係はなんでしょう!」をしているのだろう。刑事の頭が軽く痛み出す。先ほどの不倫カップル(推定)と違い「あまり関係性を公にしたくない、疚しい関係」という風でもなさそうだ。そのくせ、こちらがどんな関係性を提示しても「違う」というばかりで、向こうから「私たちは○○です」という具体的な回答が出てくる様子もない。
     親類縁者でもなければ友人でも夫婦でも恋人(不倫関係含む)でも仕事関係の仲間でもない。けれど駅前にあるホテルの最上階でディナーを取る関係性とはなんなんだ。いっそ話題を転換して、次の質問に入った方が得策なのか。

     手にしたペンでぽりぽり頭を掻く刑事を見ながら、男性は隣にいる彼女へそっと耳打ちをした。
    (三好さん、目の前の刑事、困ってるみたいですけど……)
    (そうですね……普通に「友人です」と答えるべきでしたね。何故か咄嗟に否定してしまいました)
    (いっそここは正直に「三好さんは俺の師です」とでもお答えした方が……?)
    (やめてください。余計な謎を増やさないでください。お説教ですよ)
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