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    李坂怜菜

    @jlHt3jBv2ElSdJ5

    つなとら、楽トウの文章を書いたり書かなかったりします。文章の転載は使用料を頂きます、ありがとうございます!(無断転載は請求に伺います🫶)
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    李坂怜菜

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    つなとら未満。無自覚の両片想い…くらいの関係です。🐯視点。

    🐉が他の人たちと仲良くしてるのを見て、ちょっと羨ましいなと思ってしまう🐯の話。

    ※各人の“対ファン向けの姿”の解像度が甘いです。申し訳ありません…!

    招待状何気なくテレビを付けるとTRIGGERが映っていた。元々見ようとしていた番組とは違っていたが、何となくそのまま見続けてしまう。
    番組内では司会の百さんからちょうど料理の話を振られていて、真っ先に八乙女楽が身を乗り出して話し始めたところだった。
    「龍は本当に料理が上手いんです。この前もすごく凝ったチャーハン作ってくれて」
    「たくさん作り過ぎちゃったかなって心配だったけど、二人がいっぱい食べてくれたから助かったよ!」
    「ボクが食べたのは普通の量でしたよ。楽ほどの大食いにはなれません」
    「なに照れてんだよ天」
    「いやだな、照れてないですよ」
    「二人とも、美味しいって喜んでくれるから作り甲斐があるんです」
    龍之介の嬉しそうな言葉に、司会の百さんもにこやかに返す。
    「いいなー!モモちゃんも今度食べに行っちゃおうかな!」
    「ぜひ来て下さい!リクエストがあれば作りますよ」
    「やったー!嫉妬しちゃうかもだからダーリンも連れてっていい?」
    「もちろんです!」
    和やかに番組は進んでいく。こういった、ある種“庶民的”とも言うべき雰囲気が、今のTRIGGERには随分と馴染んだように思う。
    常に完璧で隙のない、煌めくダイヤモンド。そんな彼らの本来の魅力も滲むようになったら、それはもう敵無しだ。
    チャンネルを変えず見続けてしまう。自然と笑みが浮かび、それからほんの少しだけ心の奥が痛んだ。
    それは、本当に愚かな感情だった。一言で表現してしまえば「嫉妬」だろうか。それよりもっと汚い、醜いもののようにも思えた。
    龍之介に当たり前のように料理を振る舞われる彼らが羨ましい。気軽に「食べに行く」と言える前向きさが、「ぜひ来て下さい」と龍之介に言ってもらえる関係が、そして何より、「美味しかった」と語れることが、とてもとても羨ましい。



    「虎於くんお疲れ様!」
    現場が一緒になった際、龍之介がにこやかに声をかけてくれたにも関わらず、俺の脳裏に最初に浮かんだのは先日の“嫉妬”の感情だった。
    情けない。何を妬んでいるんだ。そんなことを望むなんて許されないのだから、さっさと諦めなければならないのに。
    「お疲れ様、龍之介」
    「仕事一緒になるの久しぶりだね。今日はよろしく」
    「ああ、よろしく」
    笑ってみせるが、どうも頬の筋肉が上手く動かない。
    龍之介がそれに気付いたかどうか、俺には判断がつかなかった。
    「そうだ龍之介、この前の番組見たよ。百さんが司会の」
    「ああ、あれか!見てくれて嬉しいよ」
    「トークがスムーズで聴き入ってた。さすがだな」
    「虎於くんに褒めてもらえるとモチベーション上がるなぁ」
    ニコニコと俺に笑いかける龍之介は、心の底から俺の言葉を喜んでいるようだった。彼の心を自分が動かしたのだと思うと、不思議と気分が高揚する。
    「あの後、Re:valeの二人にも料理を振る舞ったのか?」
    「一度約束しようと日程の擦り合わせをしたんだけどね、空いてる時間が合わなくてまだ検討中って感じなんだ」
    「そうか……まあ、お互い忙しいだろうし」
    「よかったら今度虎於くんも食べにおいでよ」
    思わず身体が固まる。咄嗟に上手い返事が思いつかず、それでも何かを言わなければと口をパクパクさせたが、結局何も出てこなかった。
    「虎於くん、どうしたの?」
    「…………いや」
    「無理にとは言わないよ。来たい時に声かけてくれたら」
    「そんな、こと」
    「え?」
    「そんなこと、出来るわけないだろ」
    ようやく出た言葉がこれだ。意気地のない、格好悪い反論。これなら黙っていたほうがずっとマシだった。
    龍之介は戸惑うような表情をして、悩むように首を捻りながらスマホへと目線を落とした。ああ、最悪だ。龍之介との会話がこんな形で途絶えるのは初めてだった。泣きたいような気持ちになって、俯いて沈黙に耐えるしかない。
    ほんの少しの間の後、ふいに俺のスマホが鳴った。ラビチャを受信した合図だ。龍之介がこちらへ視線を向けてきたことに気付き、おずおずとスマホを確認する。龍之介から何かが届いている。
    「え」
    「見てみて」
    龍之介を見ると、随分と楽しそうな顔で笑っていた。いよいよ訳がわからなくて、ひとまず俺は龍之介からのラビチャを開く。
    そこには、とあるプレゼントが贈られていた。ハンバーグ、ラーメン、寿司、親子丼、ケーキ……様々な料理やデザートのイラストが送れる、ラビチャで使用するスタンプだった。
    「何か食べたいものが思い浮かんだら、そのスタンプを俺に送って」
    「それって」
    「そしたら俺が作ってあげる」
    視界が揺らぐ。涙が溢れないように、必死に瞬きを我慢する。
    「メッセージより送りやすいかなと思ってさ」
    「なんだよ、それ」
    「いつでも来てくれていいよってこと。招待状だと思ってくれたら嬉しいな」
    招待状。
    持っていたら迎え入れてもらえる。そんな大事な権利と約束の証。スタンプが招待状だなんて聞いたことがないが、それでも、確かにその効力を持つものだ。
    ラビチャを閉じようとスマホの画面に触れたら、指が震えて変なところを押してしまった。もらったスタンプの一つが送られてしまう。龍之介のスマホが鳴って、俺の誤送にすぐ既読が付いた。龍之介が笑う。
    「オムライスか、いいね。今晩空いてる?」
    「いや、これはその、ま、間違えて」
    「忙しい?」
    「…………空いてる」
    龍之介がまた笑う。俺は今そんなにおかしな顔をしているだろうか。きっとものすごく情けなく、そしてだらしない表情なんだろう。どうしようもなく嬉しくて、くすぐったいような感情をどう表現したらいいか分からない。
    せめてもの照れ隠しに「他のメンバーも連れてっていいか」と聞いた。龍之介は「もちろん」と頷いてくれる。
    「あ、でも」
    龍之介がふと思い出したように声を上げて、それから声をひそめて、少し意地悪く続けた。
    「今日の晩御飯、楽と天は一緒じゃないよ」
    「え」
    「俺だけなんだけど、どうする?大人数が良ければ他の日にしようか?」
    さすがに分かる。試されている。しかも、多分、俺にとって都合の良い解釈が許された質問だ。
    今日がいい。他に誰も呼ばない。
    そんな俺の返答は、ちゃんと聞こえたか分からないくらいの小声になってしまった。でも龍之介が頷いてくれたので、多分聞こえたんだろう。
    手土産は何がいいだろうとか、九条と八乙女は何時に帰ってくるんだろうとか、着替えが必要だったらどうしようとか。とにかくあらゆる事柄について、卑しくも俺の脳は一生懸命に考え始めていた。

    結局心配するようなことは何一つ起きなくて、美味しいご飯を食べて「美味しかった」と伝えることができた、それだけの日だったのだけど。
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