長編 2章 目が覚めると、遠くから機械の稼働音が聞こえてきた。カチカチと鳴る時計の針が、静寂に満ちた室内に響き渡る。頭の痛みに耐えきれずに瞳を開くと、そこは自分の部屋だった。
また、この前と同じだ。割れるような頭痛に苛まれて、自分が過去に戻ったことを確信する。前回の世界でも、あの要塞でルチアーノに手を繋がれた後に、僕はこの時に戻っているのだ。僕の予想が正しければ、今日は大会の一ヶ月前なのだろう。もう少ししたら、ルチアーノが僕を起こしに来るはずだ。
重い身体を引きずって、なんとか布団から這い出した。ベッドの縁に腰をかけて、大きく深呼吸をする。頭は割れるように痛くて、息をするのさえやっとだった。
「どうしたんだよ。そんなところに座り込んで。体調でも悪いのか」
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