よその…ここは、大型商業施設『万屋』――
「えーーんえーーん…」
人通りもまばらな通路。
立ち尽くして泣いている男児とばったり出くわした審神者は、保護者らしき人物がいないかとあたりを見渡した。
そもそも人がいない。
時間は平日の午前中。フードコート近辺は閑散としていた。
「どうしたの?パパママとはぐれちゃったのかな?」
怖がられないかな、などと不安に思いつつも彼女はしゃがんで声をかける。
男児はぐずぐずとしゃくりあげながら首を横に振った。
「違うの?…え~と、じゃあ、落とし物したとか?」
この問いにもまた首を振る。
「……きんじ…」
男児の口からぐすぐすとつぶやくようにこぼれた単語。どうしたものかと考えあぐねているところに出たそれが聞き取れずに、審神者は「ん?」と首をかしげた。
2121