おもい おもわれ 南の方はどうやら梅雨入りしたようだ。
神社仏閣が有名な鎌倉の町にも、数日後には雨の器と呼ばれる紫陽花たちが喜ぶ季節がやってくる。
陵南高校からほど近いバスケットコート。ここは、陵南の体育館に次いで多く越野が仙道と共に過ごした場所だった。ひとり、持参したボールを付きスリーポイントラインからシュートを放った。ボールがゴールネットに吸い込まれると、子供特有の甲高い声があがった。
「すげーっ」
「フォームめっちゃきれい!」
びっくりして低い位置から上がる声に顔を向けると、いつの間にか小学生のバスケ小僧たちに囲まれていた。
「おにいさん高校生?」
「めちゃうまい」
「もっかいやって!」
子どもは苦手では無いが得意でもない、が、こうも手放しで褒められるとくすぐったい。仕方ないなあ、なんてポーズを取りながら越野は未来のバスケットマンたちにお手本のようなミドルシュートを披露した。
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