奇跡の花束「たっだいま〜!カラム、カラム!!」
テンションの高いアランは玄関を潜るなりカラムの名を連呼する。
「今行く」
呼ばれた本人は面倒くさそうにそう声を掛けると、身体から面倒だと雰囲気をあえて出しながら玄関へと歩を進めた。
そして玄関で待つ数日ぶりに見た恋人の姿に目を丸くし、歩行が乱れた。
「カラム!ただいま!!」
「ああ、おかえり……」
カラムの目はアランの顔……ではなく、その手が持つ物に釘付けにされている。アランが持つ青い薔薇の花束に。
「へへっ、これプレゼントだ!綺麗だろ?」
「……ああ」
プレゼントの単語にキラキラとカラムの目が輝いて嬉しそうに目が細まって行く様を見てアランの心が温まる。
「綺麗だな」
「お前に似合う!!」
そう言いながら渡せば恥ずかしそうにハニカミながらも嬉しそうに礼と共に受け取り、抱きしめるカラムの可愛さに、アソコが疼き、押し倒したくなる。
今やったら烈火の如く怒るだろうから我慢する。
カラムは花束に鼻を近づけクンクンと香りを楽しんでいる。
「いい香りだ」
「本物の薔薇だからな」
そう言えばクスクスとカラムは笑った。
「ああ確かに、〝本物〟の薔薇だな」
そう言いながらもクスクス笑い続ける姿にアランも後頭部を搔くのだった。
「バレてる?」
「当たり前だ」
当然と言わんばかりのカラム。
「〝本物の青い薔薇〟はこんなにも青くない。青紫色だ」
「そうなのか!?」
花に全く詳しくないアランは素っ頓狂な声を出した。青い薔薇が珍しいのと、開発されたという話を聞きかじっただけだった。
「今日は何かの記念日だったか?」
突然の花のプレゼントにカラムは思い当たる事がなく、首を傾げる。世間で騒がれるイベントなら互いに会えるのであれば、ちょっとしたプレゼントの贈り合いをすることもあるが2人だけの記念日を祝うということは基本的にしたことはない。カラムが少しだけ料理を頑張る程度でアランに言う事もないし、アランも分かっているのかいないのか、そういう日は何時も以上に褒めてくれる。
そんな感じだ。
「いや、花屋の店先に置かれててさ。カラムに似合うなって思ったら店に入って注文も済ませてた」
「……ありがとう」
どう反応すればいいか戸惑いながらの礼に今度はアランが笑った。
「いやいや、カラムの今の姿見れただけで俺は満足だって!」
そう伝えればカラムの頬が赤くなる。
カラムにこんな姿をさせられるのも見られるのも俺だけだと思えばアランはぽわぽわした高揚感に包まれる。
カラムと出会うまで〝嫉妬〟〝独占力〟を持ったことはなかったのに。他者のそういう感情を見る度に不思議に思っていたのに。まさか自分もその感情を知ることになるとは思ってもいなかった。
この気持ちが前世に由来するのかどうかは分からないものの、今の自分はカラムの事が一番大事で、一緒に幸せになりたい奴だ。
靴を脱いでカラムを優しく抱きしめ耳元で呟く。
「お前がここにいる、それだけでいいんだ」
チュッとカラムの首筋にキスを贈る。
俺はあの日、コイツを守れなかった。目の前で首を落とされるのを見ているしか出来なかった。だからこそ、今度こそ、守ってみせる
カラムなら真っ赤な薔薇の方が似合うだろうけど、どうしても青薔薇を贈りたかった。
店頭に置かれたブーケに書かれていた花言葉『夢かなう』『奇跡』『神の祝福』『可能性』、それを見た時俺達2人の事かと思ってしまった。
出会えた事も、俺だけが前世を思い出せたことも、そして愛し合えた事も。
全てがそのブーケに詰まっている気がしたんだ。
「風呂沸いているが、入るか?」
胸の中でカラムが聞いてきた。汗臭かったのだろう、自覚はある。
「ん?背中流してくれるって??」
「……背中だけでいいのか?」
まさかの言葉に思わずカラムを見れば顔を真っ赤にしていた。
「いや、全部がいい」
試しに言えばカラムは更に耳まで赤く染め
「………分かった」
と了承した。
(花のミラクルパワーすげぇーーー)
それからアランは長期間家を開けた後に必ず花束を買って帰るようになった。
◆後書き
アラカラkmhk軸の現代パロです。
前と同じく自衛隊×弁護士ですが、ほぼ職業関係ないです。
本当ならカラ←プラの栗きんとんのその後のアラ+カラをあげるつもりが
アラが「カラの方が薔薇が似合う!!」とか言うので思わず頭が沸いて書いてしまいました。
(いえ、アラ隊長も十分お似合いですよ!!)
アラが帰ってきた事が嬉しい気持ちを押し殺して面倒くさそうに振る舞うカラも、2人の記念日に料理を頑張るカラも、嬉しさから誘ってしまうカラも、アラは全部理解して引っくるめて愛してそうだなっと。
花を選ぶ楽しさも、手入れする楽しさも、2人で楽しんでいたら昇天しますね、私が。
グラッテで青から赤へ変化する薔薇作って写真を撮ろうと思ってたけど、薔薇造り自体が難しく大変なのでそういう技術を獲得したら写真あげます。
ここまで読んで頂きありがとう御座いました。