(水麿)耳も心も奪ってしまって 清麿には最近お気に入りのテレビ番組がある。今夜はその放送日だ。
ドラマではないのだが、途中にそのような描写も挟みつつ歴史を解読していく趣旨の番組で、ナレーターの声が低く響くのが心地よく気に入っている。内容も日本史を主に扱うので本丸の仲間たちの顔がよぎることも多く、それもあり毎回楽しみに見ていた。
始まる時間の五分前にテレビをつけると、日誌を書いていた同室の水心子がわずかに肩を跳ねさせた。
「……清麿、今日もあの番組?」
「うん。ああごめん、うるさかったかな」
日誌に向き合っているのにテレビの音なんて毒だろう。そう慌てて清麿はヘッドホンに手を伸ばした。しかし水心子は焦ったように声を上げて、そういうわけじゃないんだと口にしてまた黙ってしまう。
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