Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    セキセ

    小説諸々アカウントにしました‼️自創作の設定などは、また別の場所でまとめておきたいと思います!

    ifカプの官能小説や創作の二次創作もあります。18禁絵もあります。ごめんな!

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💙 ❤
    POIPOI 13

    セキセ

    ☆quiet follow

    鱗を剥がしてる血だらけの賢一を赤瀬が介抱する小説です。兄の賢吾も出てくる。
    私が全て書いてるものなので、情景描写は少ないです。

    ⚠️一部、気分を害する表現があるかもしれません。
    ハグしたりなんだりしてますが、公式設定に基づいた小説なのでCPではございません。

    「いた………ぃ……」
    賢一は本屋の裏倉庫で一人、蹲っていた。そして、一人で、あの時に消えていた自傷に似た何かをしていた。急遽本屋を休んで、彼は一人、ずっと………

    ……鱗を剥がしていた。彼のコンプレックスである、鱗。

    一枚一枚、肌が露出してるところを手のひらで撫でる、明らかに違う肌触りの物が当たる。これが鱗だ。今度は指でそれを摘む。

    ビッ…!と勢いよく剥がす。もちろん血は出る。全く気持ちよくない。むしろ痛い。

    痛い。

    痛い、痛い。痛い…

    痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い………


    「痛い」と痛覚を感じるたびに、その気持ちを逆撫でするように、タラリと血が頰を伝う。


    (あぁ、なんでこんなこと……)

    本当は時間差で鱗は消える。しかし、ある人物のせいで鱗が出てしまうと兄のことを忘れる為に彼は、鱗を剥がしてしまう。

    兄だ。賢一の兄、須瓦 賢吾。表ヅラは良い彼だが、強い嫉妬と妬み、そして羨望による歪んだ愛を、弟によく向けていた。
    そのせいで賢一はいつも、中学生の時に鱗剥がしていた。

    「気色の悪い鱗だな〜」「お前って臆病だよな。ほら、その鱗がそれを証明してるぞ」「お前って馬鹿だよな。そんなの見てさ〜誰が気分良いわけ?笑」「鱗しか出せない腰抜けが」


    「お前の居場所は、どこにも無い。お前の存在が、俺含めて、みんなにとって目障りだ」
    「俺以外はそんなこと言わないだけだからな。勘違いすんなよ、腰抜けの臆病者」


    「はぁ………」
    罵声や暴言は、彼にとってあたりまえで慣れていた。いつも「殺してやる」「お前なんてくたばれよ、死ね」と言われていた彼だが、鱗だけは感情に左右されて出てしまう体質だったから……そこに漬け込み、兄はいつも賢一の存在を一段と否定していた時はいつも心臓をナイフで刺されたような痛みと、不快感に襲われていた。


    幼少期からいつも見下されてたな……小学生の時から、夏冬関係なく長袖を着るようになった彼は、周囲の目に晒されながらも絶対にその肌を見せないようにしていた。




    ーーーしかしその兄が、俺を探し出して本屋に来た。


    その途端、視界が歪んだ。

    (なんでここに来た?)(やめろ、俺の…大事な本に触るな)(あ、あぁ……あぁ…あ………嫌だ…嫌だ……そんな目で……)


    「俺を…覗くな…」
    気付いたら口に出ていた。
    それを聞いた兄は大笑いしながら、また冷めた目で賢一を見た。



    まるで蛙を今から食う蛇のような、尖った視線だった。



    「お前にそんなこと言われる筋合いはない」と彼は言い、肩を震わせていた賢一の腕を取った。その途端恐怖で腕の下や顔に、“ソレ”が出た。


    「お前、よくそんな体質で接客業なんてするよな〜」「肝座ってんなwww」「あーあ……」



    「……ガキの頃にこの腕へし折っとけば良かった。」





    「そしたら」




    「俺が、認められたのに。俺が…羨望の的だったのに……」






    「………全てお前のせいだ。」





    賢一を覗く賢吾の目は、まるで、虚ろだった。
    虚ろでもしっかりと、賢一を恨み、賢一を心の底から憎んでる、そんな目だった。


    それだけ言い残した後は腕をパッと離し、しばらく倒れ込んだ彼を見下ろした。その目で。
    すぐにいつもの嘲笑の目に戻した彼は、クスクス笑った後、スッと無言で本屋を出た。




    (………)



    (……最悪だ。また情けない姿をあいつに…………)




    「こんな状態じゃあ、今日は続かないな…」と彼は独り言を言い、彼は何とか立ち上がり、急いで店を閉めた。カーテンを閉め、「閉店」にした。



    そして裏倉庫。現在に至る。端に置かれた椅子に座って、彼は自分が剥いだ鱗を眺めた。
    要らない紙の上に置かれた血だらけの鱗が照明に照らされて、キラッと光った。



    まるで、彼を煽ってるかのようだった。




    「そんなに光らないでくれよ…」と、賢一はまた独り言をこぼし、落ち込んだ。





    「あぁ……」




    彼はまた溜息をついた。突然、声が聞こえる。




    「…さん?」「大家さんーー?」






    聞き慣れた声が、どこからか、聞こえた。これは…………



    まずい……!今日は本屋を閉める日じゃない!どうしよう…?!と思ったのも束の間。




    「あ、ここにいた…」と、赤瀬は裏口から裏倉庫に入ってきてしまった。
    状況を見て、ものの一瞬で、いつもの笑顔は消えていた。




    「ぇ……大家さん………それ…………え……」と、赤瀬は冷や汗をかくような、そんな調子で声を出した。



    「…………ごめん……君には見せるつもりなかったんだ…………ごめん……………」と賢一は顔を下げ、情けない自分の顔を必死に隠した。赤瀬は少しずつ近寄っていた。



    「俺が悪かったから………あまり……………見な……」
    賢一はなんとか声を捻り出した。声は震えていた。怖い。痛さよりも今度は怖さを感じていた。赤瀬にはそんな姿を見せたくなかった。



    「大ゃ………いえ、賢一さん。顔、上げてください。血が…垂れてますよ。せっかくのエプロンが、血でシミだらけになっちゃいます。」



    赤瀬は鱗に触れず、彼の血を気にした。「エプロン、外しましょう。ね?」と、彼は座ってる賢一に目線を合わせるように、しゃがみ込んだ。



    「!」
    驚いた賢一はすっと、赤瀬を見た。赤瀬の心から心配する、さっきとは違う、潤んだ目が賢一を見ていた。


    「わーーーー!?血が!血が!?えっとこういう時はあと、えと………どうしよう!」


    赤瀬は賢一の顔を見てすぐ、慌てふためいた。あまりにも、顔から血が垂れていた為であろう。「絆創膏…?!いや頰に絆創膏って良いのか??!」と彼はずっと独り言を言いながら、前に教えてもらった場所から救急箱を取り出した。


    「絆創膏じゃないですね!止血すれば良いですから…笑」
    彼は先ほどまで慌てふためいた自分を思い出し、苦笑した。どこか恥ずかしそうだった。



    赤瀬はすぐに救急箱から、ピンセットとガーゼと消毒液を出した。ピンセットで取った、綿のようなガーゼに消毒液を少しつける。

    「少し、滲みるかもしれませんが………」と彼は言い、賢一の頰に消毒液が染みたガーゼを当てた。

    「…!」と賢一は、傷口よりも消毒液の冷たさに驚いた。鱗の形だけが少し浮き出ている。
    「すみません。痛いですか…?」と赤瀬は優しい声調で賢一に言った。

    すっかり、賢一は赤瀬のされるがままに怪我の手当をされていた。「…ぃや、冷たくてびっくりしただけだよ」と賢一は気持ちの整理がつかず、ドキドキしていた。


    「あ、手の甲にもありますね。待っててくださいね」と赤瀬はまた、新しいガーゼをピンセットで取り、消毒液をつけ、手の甲に当てた。



    「なんで……」と賢一は、声を出した。小さい声だったが、しっかりと赤瀬の耳には届いていた。赤瀬は「ふふ」と笑い、消毒液の入った瓶の蓋をしっかりと閉めた。


    「そりゃあ、大事な人が怪我をしていたら…心配しますし、手当だってしますよ。だって……大事な人ですもの」と赤瀬はどこか照れくさそうに言った。
    そして座ったままの賢一の抱きしめた。賢一の首に両腕を回し、肩に顔を置くように赤瀬は抱きしめた。


    「せ、赤瀬クン……血が…服に…………」
    震えた声で賢一は言った。



    「僕の服なんて代えはあります。」



    「でも、賢一さんの代わりはいませんよ。」
    赤瀬はどこか悲しそうな、上擦った声で言った。
    しばらく静かな空気が流れる。賢一はどうすれば良いか分からず、抱きしめられたままだった。



    しばらくしてから、赤瀬は顔を離し、賢一の肩に置きながら話し出した。
    「僕は確かに、弱い男でした。」と、今度は涙ぐんだ声で言った。


    「いえ、今も弱いです。僕は自分のことを、一度でも愛せれたことがなかったです。僕という人間はなんでこんなにも…弱くて、評価されてしまうんだろうと思っていました。」
    と赤瀬は話した。


    「でもそんな僕を賢一さんは、愛してくれました。僕の存在を、ちゃんと僕として見てくれて………嬉しかったんです。」赤瀬は涙声になってえう自分の声を掻き消すように、頭を振った。深呼吸しつつ、しっかりと賢一を見た。

    その目は温もりと感謝が混ざったような、綺麗な赤色をしていた。鮮明な赤。



    「あなたと出会えて良かった、と今でも思ってます。僕は、賢一さんとは違う環境で生きてるので、全ては理解できません。でも、賢一さんには感謝してるんです。そんな、感謝してる人が、僕の分からないところで悩んで傷ついて………もちろん悲しいですよ。」と彼は何とか気持ちを紡いだ。そして机上に置かれた鱗に顔を向けながら、赤瀬は言った。


    「辛かったですよね。でも僕は、ありのままの賢一さんが大好きですよ。賢一さんの正体を知って、僕はもちろん驚きました。それと同時に興味も湧いたし、もっと大家さんのこと知りたい!たくさん支えたい!!と思いました。」と赤瀬は微笑んだ。

    相変わらず声は上擦っていた。



    「赤瀬クン………」
    賢一は、真面目な顔で赤瀬を見た。赤瀬はそれに応えるように、ニコッと笑った。



    「痛かったですか?」

    「あぁ………うん…痛かったね………」


    「この鱗、どうした方がいいですか?」


    「ぇ………うーん……使い道ないし、捨ててるからなぁ……」


    「僕が貰っていいですか?」


    「え?!なんで??!」


    「あはは、冗談ですよ。でもこんなにも綺麗な鱗、捨てるなんてもったいないなって思っちゃいました。」


    「……びっくりしたじゃないか…もぅ………」と少し、賢一は口元を緩めた。



    「あ、そうそう!その顔!やっぱりその顔が一番ですよ。」と赤瀬は満面の笑みで賢一に言った。「この鱗、まるで賢一さんの、心みたいですね。とっても綺麗だから」と再び、鱗を見ながら、赤瀬は話した。



    「…………ありがとう、赤瀬クン。俺も、君に出会えて良かったよ。本当にごめんね。びっくりさせてしまって……」賢一は少し恥ずかしくなった顔をなんとか隠しながら、話した。



    「良いんですよ、謝らなくても。僕は賢一さんの一番の味方です。そんなに気に追わないでください」と赤瀬は、賢一の背中を撫でた。


    「もう一回、抱きしめましょうか?」と赤瀬は屈託のない笑顔で聞いた。



    「君の温もりは安心するから……」と賢一は立ちながら話す。
    最後まで言い終わる前に、また赤瀬は賢一を抱きしめた。「抱き返して良いですよ」と赤瀬は籠った声で言い、賢一は一瞬迷いつつも抱き返した。




    暗く、静かな倉庫の中、彼らは時間を忘れていた。
    ただ、目の前にいる“大事な人”が、彼らにとって時間よりも大切だと、その静けさが物語っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator