抗う者達③ 徹心の言う通り、このタイミングで倒れたのは不幸中の幸いと言えよう。
八木山は自分が思っている以上に焦っているのだと自覚した。このままさらに標高を上げていたら、強制下山の憂き目に遭っていた可能性が大きい。
だから、序盤で気付けたのは幸いなのだ。
「薬効いてきた?」
八木山が双眼鏡で見える範囲を捜索していると、穂高が声をかけてきた。手には温かいコーヒーが入ったカップを持っており、それを差し出される。
「あぁ、頭痛はだいぶ治まってきたよ。ありがとう」
カップを受け取り、少量をすする。熱と蜂蜜の甘さが冷えた体に染み渡り、八木山はほっと息をついた。
「ちゃんと呼吸してる? 捜索に夢中になって浅くなってない?」
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