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    knoh

    癒着が好きです
    @knohen78

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    knoh

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    指輪の話から引っこ抜いた部分

    ちゃり、とチェーンが揺れる音。ドブが引き続き指輪を弄っている。そして指先はそのまま大門の鎖骨をなぞっていく。
    「なに。すんの。」
    「だって今いい雰囲気だろ。」
    「…ン、」
    顎に手を添えられる。身を乗り出してきたドブから再びキスが降ってくる。口を開けと舌で唇を舐め上げられたので大人しく応じた。歯列をなぞってくる動きに身体がツンと震える。気付かれたのか薄く笑われたので、大門も負けじと舌を絡め返した。

    こうして唇を重ねている間、時間の感覚はいつも馬鹿になる。数十秒か数分か、ただ互いを貪り合う。相手から時折漏れる声にならない声にあてられてより口づけの深さが増していく。息継ぎも忘れてしまいそうだ。まるで自分から溺れにいっているようだと思う。

    どちらともなく離れるころにはすっかり高まった熱が全身を巡る。呼吸を整えながら正面の男を伺う。その表情にいつも優越感が湧き上がる。相手を欲していることがあまりにも明白な顔。この近さでは隠せるものも、余裕もない。

    「風呂は?やっぱ明日入る?」
    「…準備させて。」
    わかっている癖にいちいち聞いてくる腕を払い立ち上がる。テーブルの上に手付かずのまま置かれた酒とつまみが目に入った。戻るまでに片付けるよう横の男に促し、そのまま浴室へと向かう。せっかく買ってきたが今夜口をつけることはもうないだろうと思った。大門が風呂から上がればふたりしてシーツの海に沈むのだ。



    勢いのままぼす、っとベッドに押し倒される。ドブの言っていた雰囲気とやらにまんまとのせられていて、酒も程良くまわった身体はすっかり無抵抗だった。そのままのし掛かってくる重さにベッドがもう一段階沈み込んだのを背中で感じる。上着と皮膚の間をまさぐってきた掌の感触に自ら服を脱ごうと少し上体を浮かせた。察したのかドブも身を引いてこちらが脱ぎ終わるのを待っている。皺になるのも気にせず纏っていた衣類をベッド脇に投げ捨てた。途端に覆い被さってきたので盛りすぎだろと笑うとお前もな、と膝で軽く刺激されて反射的な声が出る。ほくそ笑んだドブの顔がそのまま近付いてきてまたキスでもされるかと構えていると項の方で何やら指が動く気配がした。あ。と思ったのも束の間。するりと大門の首から鎖が抜き取られていく。
    「なあ、大門。今だけで良いからつけてよ。」
    チェーンをサイドテーブルに置いたドブの手には輪っかがひとつ。本日話題の中心のそれだ。さっきの男前はどうした、気長に待つんじゃなかったのかと返そうとしたがやはり正直なところつけてほしいのだと複雑な気分になる。
    「俺しかいないんだしいいだろ。」
    「さっきの会話なんだったんだよ。しかもヤる時だけつけるってなんか…。」
    「興奮しない?」
    「ほんとさっき少しでもときめいた俺の気持ち返してくれ。」
    「はは、惚れ直しただろ。まあそれはそれ、これはこれで。」
    指出せ、とジェスチャーのみで促される。仰向け状態のまま気怠げに上げた腕が右だったので違うだろと押し戻された。観念して逆の腕をドブの目の前に掲げると逃げるなよと言わんばかりにぎゅっと掌を掴まれた。好きにしろよと視線を投げるとこの状況を楽しんでいる様子の男は少しだけ掌を掴む指の力を抜いた。そして輪っかを大門の薬指に通していく。ムードがどうこう言っていたので勿体振って変に溜めるのかと思いきやそんなこともなく、すんなりとした動きだった。他人に指輪をはめるなんてもっと大事のようなものだろうにまるで流れ作業のようだ。まさか経験あるのかと妙に勘ぐりそうになって、我に返り止めた。根っこの方までぴったり収まった銀色越しに満足げなドブが映る。
    「あ~。やっぱりいいな。こういうの。」
    すっかり破顔して大門の指に唇を落とす男。

    その表情を見て案外早く腹をくくれるかもしれないな、なんて。
    我ながら単純すぎる思考に呆れた。
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    knoh

    DONEドのドライブに付き合わされる兄の話。(ド兄)
    ドライブの果て適当に腹ごしらえをした後、いつもは運転を押し付けてくる男が、時折自ら運転席に乗り込むことがあった。すたすたと車に向かい、2人分の会計を済ませた連れが横に座るのを待っている。そうなるとこちらは黙って従うのみだ。わざわざ当直明けの身体を酷使する趣味はないと、譲られるままに助手席に腰を下ろす。

    男が無条件にハンドルを握る、それを合図に始まる男2人、真夜中のドライブ。運転してやっから。運転してくれんなら。そんな無言の口実を互いに纏った、予告も無しに訪れるその時間が、全くもって不思議だが、嫌いではなかった。むしろ主導権を横の男に委ね、窓越しの風景が流れていく様をぼんやりと見つめているだけのひとときに、いつしか心地良ささえ感じるようになっていた。忙しない日常から切り離されたように錯覚しているだけなのだろうと思う。よりによってその第一の要因である男の隣でそうなってしまっているのだから変な話だった。そんな様子を察しているのかは知らないが、公道を一定のスピードで走らせている間、普段饒舌な男にしては話しかけてくる頻度が抑えめになる。もしかしたら眠気に負け気味な自分が気付いていないだけかもしれないが、今のところ「聞けよ」だの「お前だけ寝るなよ」だの文句も挙がらないことから、やはりそういった素振りはそもそも無いようだった。
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