そういうことです バアン! と派手な音を立てて、バーの扉が開く。さては北の連中か、と身構えた拍子に、ネロは今しがた口に入れたばかりのものを飲み込んでしまった。
「んぐっ……」
——あ、勿体ねえ……。
鼻に抜ける、濃厚かつ芳醇な、甘い香り。しかし、バーの中にほとんど転がり込む勢いで入ってきた意外な人物に、余韻を味わおうという気分は吹き飛んでしまった。
「ネロ!! ……っ! ああ、遅かったか……!」
「ファウスト……!? どうした、そんなに慌てて」
ファウストはよほど急いで駆けてきたのか、乱れた髪の毛と衣服を直しもせず、なにかとてもまずいことでも起きたように、忙しなく視線を走らせた。
「まあまあファウスト。そう慌てずとも、どうです、あなたもひとつ」
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