始まりのAF大きな古い大木の前にふたりならんで立つ。
「ここだね」
「うん、ここだと思う」
サァァァと優しい風が互いの髪を揺らし通り過ぎていった。
この場所にしよう、ずっと前から2人で決めていた。
手の中には拾われた時からずっと持っていた小さなポストのAF。
「……できるかな…?」
不安げな妹の背にそっと手を添える。
「大丈夫だよアイリス。俺もいる。一緒なら何だってできるよ。さぁ、ほらあの『声』を思い出して」
「…うん」
遠い記憶に朧げにしか覚えていないその姿だが、その優しい『声』だけはしっかりと覚えている。
ずっと聴いていた『声』の主は、自分達にいろんなことを教えてくれた。
物語の様に、子守唄の様に、ありとあらゆる事を自分たちに伝えてくれた。
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