花火、電車、初めて。《後編》《逆転律霊》 新隆がシャワーを浴びに浴槽に入ったのを確認した律は、新隆が脱いだ甚平と下着を洗濯機に放り込んでスイッチを入れる。タオル、新品の下着、Tシャツを脱衣籠の上に置いて、キッチンへ向かった。
律はケトルで湯を沸かしながら、今日会ってからの新隆の様子を思い返してみる。
電車に乗るまでは、いつもの新隆だったように思う。今思えば、電話を取ったときの声が震えていたような気もする。それに、改札から出て来た新隆がすぐに自分の腕に巻き付いて来たのは、車内で何かをされたことからの恐れからだったのではないか、と。その時の小さな変化を見逃した自分に、律はぎり、と唇を噛む。
どこまで何をされたかは定かではないけれど、自分と会ったときに新隆は平気なふりをしていたのだろう。本当は泣き出してもおかしくないくらい、不安だったはずなのに。
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