過去編のやつ元旦、お正月。
水戸の神社は晴天で、赤と黄と白のかわいらしい出店が軒を連ねる。
「ツキちゃん、お兄さんが3人いますね?」
「は?」
占い師に頓珍漢なことを言われ、一家は素っ頓狂な声をあげる。
水戸藩士、舎人(とねり)家は4人暮らし。昨年肺炎で祖父と祖母が相次いで亡くなり、広い武家を小さな家族で維持している。
だがその分、小さな家族のきずなはより強固で、武家らしからぬ、平等かつ自由な家庭だった。
「あの、うちには男の子は一人しかおりませんが」
「おや、そうですか?じゃあ一人ですね」
「はあ・・・。で、では結婚は?娘ですので」
心配する母親のよそ、ツキは風車を吹いてくるくる回る絵に夢中だ。
「ご主人は素晴らしいですよ。年上で沢山の方を率いる男性ですね」
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