寄り道※よく食べる個体、甘いもの好き
「お店か……加州清光ならはしゃぐかもしれないけど……。」
「そうなの? 安定は?」
「僕? 僕ははしゃがないよ。」
買い出しに付き合ってくれた大和守安定がふとそんな事を教えてくれた。けど私の買い出しに行く時の加州清光は特にはしゃぐ訳でもなく、本丸に居る時と特に変わらずいつも通りだなぁ……としか思わない。
「清光ってはしゃぐんだね。」
「えっ、主と出掛けるんだからはしゃいでるでしょ? 出掛ける前なんてめちゃくちゃ機嫌いいよ……って、気付いてない?」
「ぜんぜん。いつも通りだよ。」
「そうなんだ……。」と安定が気のない返事を返しその話に興味をなくしたのかそれ以降話題には上らなかった。しばらくぽつりぽつりと他愛のない話をしつつ万屋街を歩いているとぐっと袖を掴まれて思わず立ち止まる。袖を掴んでいたのは安定で視線の先には甘味処が見える。
「ねぇ主、甘味処行きたい!」
甘味処を見つけた安定はまるで幼子のように目を輝かせている。……私の本丸の安定はよく食べてよく寝ている。甘いものは特に好きな様で普段はあまり主張しない安定だが甘味の話になると途端に食い付くのだ。
「それじゃあ、少し休憩しようか。」
「やった! 行こう!」
「あっ、ちょっと待ってよ!!」
ぐいぐいと袖を引いていく安定について行くように私も足を早める……自分ははしゃがないとか言ってたのにこの変わりようだ。まぁ甘味は別腹というし仕方ないか……。
早速店に入り席に着くと安定はメニューを見て嬉々とし、私はとりあえずお茶だけ頼んで一息つくことにした。安定の前には和菓子洋菓子関係なく色とりどりの甘味が並べられている。
「……ほんとによく食べるよね。」
「美味しいそうだったからつい……、主の分もあるから安心してよ。」
「別に私の分があるかどうかの心配したわけじゃないんだけど。」
……しかしこれは多すぎではないだろうか。普段なら絶対に頼みそうにない量である。
「あっ、この苺大福、前に清光と来た時に食べたやつだ。」
運ばれてきた苺大福を見てポロっとそんな事を言うと目の前に座っている安定の動きがピタリと止まった。
「……へぇー、そうなんだ……」
「うん。その時は清光甘いものあんまり好きじゃないけど食べたいって言うから二人で半分こにしたんだよ。」
「……ふぅん……あのさ、主。」
「何?」
「僕とも半分こしよっか?」
「えっ……? いいの?」
まさかの提案に驚いた声を上げると安定は微笑みながらうなずいた。……なんだか今日の安定は甘えん坊だな……。
「あいつだけじゃなくてちゃんと僕との思い出も作って欲しいな。」
「……そうだね。ありがとう。」
照れ臭くて頬をかきながら返すと安定は満足げに笑いまたぱくりと口に運んで幸せそうにしている。その笑顔を見ると私まで幸せな気持ちになる。
こんな日々がずっと続けばいいのに、と願いを込めて私も安定と分けた苺大福を口の中に放り込んだ。