偽物の恋 スポットライトを浴びながら精一杯に踊って歌う。
ステージに立つ高揚感も俺にとっては生き甲斐だと言っていい。
ちらりと隣を見遣れば、俺と同じデザインだが、左右反転した色違いの衣装を纏う相方、海音(カイン)。
ちなみにこれは本名だ。
奴は俺の視線に気が付いたのか、蕩けるような笑みを浮かべて俺に手を差し出す。
そして、俺はこれは演技だと自分に言い聞かせながらその手を取った。
同時にぐいっと引っ張られ、俺がカインに抱き締められると観客席からは黄色い悲鳴が上がる。
汗とカインが好んでいる香水の匂いに不覚にもドキリとしてしまいながら死ぬ気で笑顔を作って見せた。
これはあくまでもビジネスだ。
必死に自分に言い聞かせながら最後の歌詞を歌い切る。
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