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    そらめもエンド不成立後の、アリス×アキIF話。
    恋愛っぽい描写は次話以降。軽いジャブ的な位置付けのお話。

    ##そらめも

    失踪したアキを5年後くらいに外国で偶然見つけるところから始まるアリアキ① ホグワーツの戦いにて例のあの人ヴォルデモートが打ち倒され、世界は平和を取り戻した。
     誰も彼もが日常に帰れると、そう信じて疑うことのなかったあの夏の日──俺の親友アキ・ポッターは、入院先の聖マンゴから突如姿をくらました。



     初めて訪れたオーストラリアは、生まれ育ったイギリスに比べて随分と陽射しが強い。魔法学校と魔法省の視察に来ただけだというのに、ただ過ごしているだけで辟易してしまうほどだ。

     あまりの暑さに耐え切れず、冷房の効いているであろうカフェに駆け込む。予想通り、カフェの店内はキンキンに冷えていた。
     バイトらしい店員が、奥のテーブル席に案内する。アイスコーヒーを注文し、サングラスを外すとネクタイを一気に緩めた。首周りをくつろげたら大分心地が楽になる。
     ハァァと大きなため息をつくと共に、ふと手持ち無沙汰を覚える。テーブルの木目を見つめながら、俺は頬杖をついた。ぼんやりと、意識を過去に揺蕩わせる。

     俺がホグワーツを卒業して五年が経つ。それは同時に、俺が親父の元で《中立不可侵》フィスナーの業務手伝いをし始めて五年の年月が過ぎたことを意味している。
     ……この五年間、本当にいろいろあった。それでも、どこか停滞しているような心地を覚えるのは何故だろう。
     ずっと同じ場所で足踏みをしているような、奇妙な焦燥感と無力感が、卒業した後の俺をずっと包んで離さない。なんだか、ずっと、ずっと、こう……相変わらず、俺の心はまだずっと、ホグワーツに取り残されているような気がする。

     ホグワーツでの学生時代を想うたび、必ずと言っていいほどに、アキ・ポッターのことが想起される。
     だって、いつでも一緒だった。授業中も、食事の時も、アキはずっと隣にいた。くだらないことでゲラゲラ笑い合い、時にはガチな喧嘩もしつつ、七年間を過ごしたのだ。

     いつだって、瞳を閉じればありありと思い出す。
     ……なんでもない夏の日の、あの、底が抜けたような絶望を。

     置き手紙すら無かった。荷物も、財布も、何もかもがそっくりそのままで──ただアキの姿だけが、病室の中から忽然と消え失せていた。
     もちろん、すべての手立てを尽くしてアキを探した。俺だけではない、ハリーも、アクアも、スネイプやルーピン、俺の親父も──それでもアキは見つからず、気付けばもう五年の月日が経っていた。

    「…………」

     生きていればいいと、今となってはただただそう願うばかりだ。
     生きてくれさえすればいい。どこかで心穏やかに過ごしていてくれれば、もうそれだけでいいのだと。

     死んでいてもおかしくないと、誰もがそう思っていた。ただ、誰も言わないだけで。
     樹海で。海の底で。空の中で。誰も知らない数あるどこかで、そっと身を投げていてもおかしくない。そう思わせるだけの危うさを、あの頃のアキはずっと纏っていた。

     ──アキを繋ぎ止めるために、俺に出来ることはまだ沢山あった気がする。
     何もかもが後悔ばかりだ。
     あの秘密主義の胸倉を掴み、全部吐くまでどこにも行かせないと脅していれば。アキが誰しもに引いていた一線を、あえて踏み越えていれば。俺に、アキに並び立つほどの力があれば。
     叶わぬ『もしも』をいつも思い、その度に胃の底がひりつく感覚を覚える。己の無力さに目眩がする。
    『親友』だなんて。
     よくも、臆面もなく思っていたものだ。
     
    「こちら、アイスコーヒーです」

     その声に、取り止めのない思考がぱちんと弾ける。
     店員が差し出すグラスを、礼を言いつつ受け取った。ストローでアイスコーヒーを吸いながら時計を見、手帳を開いてペンを握る。
     今日の予定は一通り終わった。明日はもう飛行機で帰るだけの日だ。せっかくであれば、午前中だけでも軽く観光くらいはしたい。この暑さは、そぞろ歩きに適しているとは言い難いのだけが難点だが。

     今日の会合について整理がてら手帳に書き留めていたところ、ふと耳に声が届いた。隣の席の二人組が、何やら話し込んでいる。

    「……確かに、利回りが30%なんて、またとない儲け話ですよね」
    「そうでしょう? それもひとえに会社の業績が右肩上がりなこと、そして何より事業に出資していただく皆様のご協力があってこそなのです。昨年は配当金として、皆様に出資額のおよそ三割をお配りしました……」

     どうやら投資の話をしているようだ。少し気になり耳を傾ける。
     高額な利回りに、出資側もどうやら心が揺れている。それでもあまりに旨い儲け話への警戒心はあるようで、本当に配当が支払われているかの実情を問いただしている。
     しかし、答える側も具体的な資料を提示して、淀みなく矛盾なく回答をするものなので、出資側もどうやら気持ちが傾いてきたようだ。

     加えて、語る側の声がまた、良い。穏やかで誠実さの感じられる、品のある知的な声。頭の回転が抜群に良いのか、語りが明確で論理立っている分、聞いていると思わず飲み込まれてしまう。
     傍で聞いている俺ですらそう感じるのだから、その声を真正面から受けている男などたまったものではないだろう。そんなことを思いながらアイスコーヒーを飲み込み、横目でその二人組を見た。

     出資側と思われる男は、なんとも凡庸な男だ。歳は三十前後のようだが、儲け話に目がぎらついているため溌剌として見える。身なりは整えているものの、マネキンをそっくりそのまま真似したかのような風体だった。
     一方、答える側の人物は────

    (……ん?)

     その時、ふと何かを覚えて俺は目を瞬かせた。
     細身で小柄な青年だった。学生だと言われても違和感はないし、もしかすると声が多少低めの女性かもしれない。ショートボブにされた艶のある黒髪に、黒縁の眼鏡。黒のキャップを目深にかぶっている。清潔感のある身なりだが、靴裏はだいぶすり減っていた。
     その横顔に見覚えがある気がして、俺は軽く眉を寄せるとその人物をじっと見た。
     足の組み方、話し方、どこかわざとらしい身振りに手振り。
     ……そう、この既視感は……。


    「……アキ……?」


     囁くような呼び声に、しかしその人物は弾かれたように顔を向けた。眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた彼は、小さな声で「アリス……っ!?」と呟く。
     ──その態度で確信した。

     一瞬逃げる素振りを見せたアキの服をむんずと掴む。そのまま左腕を掴んだ瞬間、アキは痛みに小さく呻いた。ハッと気付いて右腕に持ち替える。
     出資側の男は唖然とした顔のまま俺とアキを見上げていた。その男のテーブルに紙幣を叩きつけ、俺は言う。

    「余計な世話かもしれねぇが、アンタ、騙されてんぞ」

     ボンジ・スキーム。典型的な投資詐欺の手口だ。
     ちらりとアキを見下ろすも、アキはサッと顔を伏せてしまった。ため息をつきつつ支払いを済ませ、店員に謝罪をして店を出る。

    「……で? お前、マジで何やってんだよ」

     流石に詐欺に関わっているとなると軽蔑する。長年の友人ではあったものの、その縁すら切りたくなるほどだ。そこまで落ちる奴だとは思っていなかったのだが。
     俺の白い目を受け、アキは慌てて弁明し始めた。

    「わっ、ち、違うんだって! これは本当に、あの人に頼まれてやってただけ!」
    「頼まれて騙してたっつーこと……?」
    「騙してないよ! 詐欺対策で、具体的にこういう詐欺が横行してますよっていう実例を見せてたの! これからネタバラしするつもりだったのに!」

     ……どうだかな。口では何とでも言える。
     アキが俺の腕を振り払おうともがくので、掴む力を更に強めた。肘の関節を極めてやると、アキはとうとう諦めたようだ。ガックリと肩を落としている。

    「それより……お前、どうして一体こんなところにいるんだよ。皆、めちゃくちゃお前のことを探してたんだからな」
    「……そう。そうだろうね」

     アキは淡々と「離してくれ」と呟いた。それでも離さずにいると「頼むよ、アリス」と俺を見上げて苦笑する。

    「人目につく。目立ちたくないんだ。ねぇ、逃げないから……お願い」
    「…………」

     その目に、その声に、心がぐらつく。
     恐る恐る、アキの腕から手を離した。いつ『姿くらまし』されても飛びかかれるように警戒しつつ半歩離れる。
     アキは掴まれて寄ったシワを伸ばすと「こっち」と言い捨てスタスタと歩き出した。

    「オイ、どこに行くんだよ?」
    「ぼくの自宅。魔法界のことは一般人に聞かれたくないし。仕方ないけど。……あぁ、そうだ」
    「?」

     一度足を止め振り返ったアキは、キャップを脱ぐと背伸びをし、ぽすんと俺に被せかけた。目を細めて微笑みを浮かべる。

    「陽射し避け。暑いでしょ、このへん」
    「……おう。さんきゅ」

    「どういたしまして」とアキは肩を竦めた。
     そのまま足を進めるアキの背に、あの見慣れた後ろ髪の尻尾は見当たらない。そんなことに幾許かの寂しさを感じつつ、俺はキャップを目深に被り直した。



     アキに連れられ辿り着いたのは、どこか寂れた景色の中に佇むアパートだった。周囲に人気はなく静かなものだ。

    「ここか……?」
    「そう。ぼくの、今の所の住処」

     南京錠で施錠されている扉を開け、アキは「入りなよ」と俺を手招きする。少々慄きながらも室内に入った。
     ワンルームの室内には最低限の家具しか置かれていない。それでも何冊もの本がそこら中に置かれているのを見つけ、相変わらず本は好きなのかと少しホッとした気分になる。

    「アリスは、一体何しにオーストラリアまで来たの? 観光? それとも仕事?」

     紅茶用の湯を沸かしながら、アキは俺にそう問いかけてきた。

    「仕事。このへん魔法学校があるから、その視察をな」
    「マジか。知らなかったな、それ……知ってたら別の場所に住んだのに」

     アキは小さな声でそう呟く。微かに項垂れたアキの耳には、見たことのないピアスが嵌っていた。漆黒の石がついたスタッドピアスだ。

    「お前、目ぇ悪かったっけ」
    「めっちゃ良いよ。これは伊達。……見慣れないよね、外しておくよ」

     微笑んで、アキは眼鏡を外す。見覚えのある顔が露わになり、俺は思わず言葉を失った。込み上げてくる感情で胸がいっぱいになる。
     ……本当に、アキなのか。

     そこで湯が沸く音がした。火を止め、アキは戸棚からカップとソーサーを取り出す。その動作に不自然さを覚えた俺は、立ち上がると歩み寄った。

    「貸せ。俺がやるから」
    「そんな、客人にはさせられないよ」
    「その左腕、動かねぇんだろ」

     端的な指摘に、アキは口元に薄い微笑を浮かべたまま沈黙する。
     ……カフェにいた時から、アキの動きには不自然なところがあった。
     五年前、行き過ぎた魔力でズタズタになったあの利き腕。そのまま失踪したアキに、腕を治す術はないだろう。

     二人前の紅茶を淹れる。アキはカップを手にしたまま、ぽすんとベッドに腰掛けた。俺もカップとソーサーを手に、ソファへと座り直す。
     そのまま、無言の時が流れた。

    「……あれから、どうしてたんだ?」
    「……とりあえず、イギリスを出て……誰もぼくを、『幣原秋』を知らない場所に行きたかった。だから、イギリスから離れた場所に……できるだけ、魔法界から離れた場所を探して……ここに行き着いた」
    「…………」
    「黙っていなくなっちゃって、ごめん。心配、掛けたよね。……本当に、ごめん」

     ごめんね、とアキはぽつりと呟く。
     ……いろいろと、言いたいこともあったはずなのに。
     それでも、項垂れるアキを見ていると、何も言えなくなってしまった。

    「……それじゃあ……もう、魔法は使ってないのか?」

     俺の問いかけに、アキはそっと口元を緩めて漆黒のピアスに触れた。

    「ずっと使ってない。魔力を抑える魔法道具を作ったからね。これで一般人に紛れている。動物にも触れるんだよ? まぁこれまでずっと吠えられたり怯えられたりしていた分、積極的に触れ合いたいとは思わないけれど」
    「……不便はないか?」
    「もう慣れたよ。左腕が動かなくても、案外なんとかやっていけてる」
    「……そう、なのか」

     そして、再びの沈黙。会話の空白に耐えきれず、誤魔化すように紅茶を煽った。
     アキと一緒にいて、沈黙が苦になったことなどこれまで一度もない。五年間の重みを、心底実感してしまう。
     ……しかし、いくつかわかったことがある。

    「イギリスに帰ってくる気は、ないのか」

     そっとアキに問いかけた。
     アキは紅茶のカップを下ろすと、視線を虚空に漂わせる。

    「どのツラ下げて、帰れるって言うんだ」

     そう吐き捨てアキは立ち上がった。出て行くのではと思わずドキリと心臓が跳ねるも、アキはシンクにカップを置いただけで、玄関に向かう様子はない。
     シンクの前に立ち尽くしたまま、アキは右手で顔を覆った。奥歯の隙間から声が溢れる。

    「みんなは、元気かな」
    「……あぁ。みんな、元気に過ごしてるよ。……ハリーは闇祓いになって、その名を轟かせている。そう、ハリーはジニーと結婚したんだ。そろそろ子供が生まれるらしい。ロンとハーマイオニーも、先日婚約して挨拶に来た。ウィルや、レーンも……」

     思いつくままに、皆の近況を並べていく。小さく頷いたアキは、意を決したように「……アクアは?」と、恐る恐る口にした。

    「……アクアは……しばらく、本気でお前を探して三年ほど旅をしていた。でも、見つけられなくて……まぁ、いろいろあって、昨年ドラコと婚約した」

     俺の言葉に、アキの背中がふるりと揺れる。「……そう」と呟いたアキは、大きなため息を吐くとその場にずるずるとしゃがみ込んだ。膝を抱えて顔を埋める。

    「そう……それは、良かった……ドラコであれば、きっと……アクアを幸せにしてくれる……」

     アキの語尾が掠れた。微かに洟を啜る音が聞こえてきて、俺は静かに目を逸らす。
     やがて戻ってきたアキは、先ほどよりも力が抜けた笑みを浮かべていた。どこかホッとしたような顔で「アリスは、そういう話はないの?」と強請ってくる。

    「残念ながら、俺に浮いた話はないよ。結婚とかも今のところは考えていない」
    「でも《中立不可侵》は継ぐんでしょ? 後継者問題とか、ゆくゆくは発生するんじゃないの?」
    「ゆくゆくは、な。親父もまだまだ元気で現役だし、子供がいたからってソイツが継いでくれるとは限らないし」
    「それもそうか」

     アキは納得したように頷いていた。そんなアキを横目で見「そういうお前は、どうなんだよ」と尋ねる。

    「どうって? 何もないよ」
    「……本当に?」
    「何さ。君、ぼくのことをなんだと思ってんの?」

     そう言ってアキは笑うと、俺の手から空になったカップとソーサーを回収してシンクに向かう。その背中をじっと眺めた。
     ……やはり、まだアキはアクアのことが好きなのだ。
     元々一途な奴だった。たとえ離れても、それでもずっと想い続けていたのだろう。
     考え込みそうになった思考を、アキの声がふわりと攫う。

    「アリスは、ここへは仕事で来たって言ってたよね。いつまでいるの?」
    「あ、あぁ……仕事自体はもう終わった。明日、飛行機でイギリスに戻るつもりでいる」
    「そう。なら、見送りに行かせてよ。せっかく再会できたんだからさ」

     アキは穏やかに笑っている。
     あぁ、と当たり前のように頷きかけ──そこで、ふと違和感に気付く。

     ──どのツラ下げて、と、さっきアキは吐き捨てた。
     俺がアキの腕を掴んだ時、アキは本気で抵抗した。

     もし、このまま俺がイギリスに帰ったとして。
     俺は当然、周囲にアキと出会ったことを話すだろう。そうしたらきっと、ハリーやアクアもアキに会いたいと願うだろう。
     行動力のあるあの二人のことだ。オーストラリアという目的地があるならば、すぐさま向かうであろうことは想像に難くない。

    「……俺を見送った後、また、姿をくらますつもりか」

     アキはしばらく黙っていた。
     やがて淡々と、微笑みさえも浮かべながら口を開く。

    「そりゃ、そうだよ。『黙っていてね』なんて口約束、するだけ無駄じゃないか」

     アキの瞳に過ぎるのは、心の底からの諦念と空虚。
     今のアキは、誰のことも信用していない。
     俺に対しても一切心を開いていないから、そうやって、感情の籠らない微笑を湛えていられるのだ。

     ……今、ここで俺がイギリスに帰ってしまったら。
     もう二度と、アキと会うことはできない。それは予感ではなく確信だった。
     ────そうなったら、俺は絶対に後悔する。

    (今が、今だけが、好機なんだ)

     素早く視線を動かす。
     最低限の家具の中、それでも目的の《アレ》はあった。

    「アキ、少し、電話を借りてもいいか?」

     アキはきょとんと目を瞠った。「別に、いいけど?」と首を傾げつつ許可を出す。
     ありがとうと礼を言い、懐から手帳を取り出した。受話器を耳に当て、目的の番号をコールする。
     電話を掛けた先は、オーストラリアでの仕事のために俺がここしばらく滞在していたホテルだった。電話を取った支配人に、本日分の宿泊をキャンセルしたいこと、部屋に置いてある私物は全て処分して良いことを告げ、問答無用で電話を切る。俺の電話を聞いていたアキは、ありありと怪訝な表情を浮かべていた。

    「え……アリス、何してんの?」
    「何してるも何も、ホテルのキャンセルだよ。飛行機は……まぁ空港に行かなけりゃいい話だしな」
    「は?」
    「言っておくが、この上着は五千ポンドだ。革靴は千ポンド、時計は十万ガリオン。ベルトは……忘れたな。いつ買ったんだっけか……」
    「えっ、え?」
    「この辺、人通りも少ないし治安悪そうだよな。この格好で外で寝てたら、きっと追い剥ぎに遭っちまうんだろうなぁ?」
    「外で寝……っ!? 待って、何考えてんのアリス!?」

     ────これは、賭けだ。
     このアキから離れれば、何もかもが終わってしまう。友情も、絆も、何もかもがここで切れてしまう。

    (勝手に終わらせてなどやるものか)

    「なぁ。俺のことを友人だと思ってんなら、この家に泊めてくれよ」

     一人でなんて行かせない。この手は絶対に離さない。
     地獄の底まで付き合ってみせる。
     ──絶対に。

    (────この偶然を、運命にしてやる)

     困惑に瞳を揺らすアキの胸倉を掴む。
     漆黒の瞳を覗き込み、俺は笑った。
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