幸せなキスをして終了するやつ君のことが、本当は大嫌いなんだよ
目の前の大切な家族が発した言葉を聞いて王次郎が脳裏に浮かんだのは当然、という単語だった。
拠点で二人揃って朝食を食していた時間だった。王次郎はもそもそとパンを咀嚼していた。今日は食パンにジャムを塗って。苺の甘酸っぱさが口の中で彩られ楽しい。正面に座るカズキは新聞や端末を開き何も食べずにコーヒーを腹に流し込む。少しは食べろと言ってみるが良い返事を貰えた覚えがない。そんな、日常だった筈なのに。
「あのね、王次郎」
今日はいい天気だねと世間話でも始まりそうな声色で王次郎を突き刺す容赦ない言葉。
「あぁ、そうだな……」
あんなことをしてしまった当然の報いだろう。言葉にはしなくともこの家族には伝わる。彼は王次郎のことならなんでも理解してくれるし、王次郎自身もカズキのことをトラッシュメンバーよりも、あのミナトよりも理解しているだろうという自負があった。自惚れ、だったのだろうかと表情を暗くした。目の前にいるはずなのに彼の表情が見えない。
1627